五話
「ヴァインたいあたり≠。ぃぃいいいい!」
『タ〜ジャ〜……』
やけになっているミコトに対し、やれやれと呆れたように返事するヴァイン。
「もうちょっとやる気出して欲しいんだけど……」
「不可能だよ。そろそろWiiとかテレビとか壊れそうで心配で」
「信用がないなぁ……」
チェレンは、まあ当たり前か、さっきがさっきだから、などと呟く。
「とにかくポカブ、こっちもたいあたり≠ナ迎え撃つんだ!」
『カブ!』
さっきのミジュマルほどではないが、それでもそれなりの速さでポカブは突っ込んできた。
それをみてミコトは、ようやくバトルに集中し出す。
「うーん、そこまで速くないし……本当にたいあたり≠ナ大丈夫そうだよ」
『タジャ』
首を縦に振り、ヴァインも迎え撃つために突っ込んでゆく。
パワーは互角、いや、若干ヴァインが押しているようにも見える。
「やっとトレーナーになれた……ここから始まるんだ! ポカブ、一旦引いて!」
このままでは不利になるばかりだと考えたチェレンは、後退の指示を出した。ポカブの後退を許してしまうヴァイン。
が、
「それを待ってました! 追って!」
『タージャ!』
すぐさま追いついた。
最初にポカブが突っ込んできたときミコトは、ポカブの素早さに気づいた。ヴァインの方が倍くらい速く、その分勢いがつきやすい、と。確かにツタージャは素早さが高い種族で、ポカブでは到底届かないだろう。
そして、勢いがつきやすいとなると、少々
攻撃力がなくてもそれを補うことができる。ミコトはそう考えたのだった。
「にらみつける=I」
急接近し、ポカブとヴァインの顔は目と鼻の先だ。そんな状態で睨まれたら、誰だって敵わない(睨みつけた時の威圧感がない場合は別として)。ポカブはひるんだ。
「そこで懐にたいあたり=I」
『ター……ジャ!』
『カブっ!?』
ゼロ距離からのにらみつける=Aそしてその直後のたいあたり=B回避できるわけがない。
ポカブはヴァインのたいあたり≠モロに受けてしまった。
ミジュマルと同じように、壁まで飛ばされてぶつかるポカブ。
しかし、かろうじて戦えるようだ。
「ポカブ、行ける?」
『ポ……カァっ!』
フラフラながらも立ち上がった。
「……これが、ポケモン勝負なんだ」
チェレンは、今まで感じたことのない喜びを噛み締めるような表情をみせた。
「やっぱり、
防御力は高いのか」
予想通り、といったように顔を綻ばせるミコト。
「けど、そこまで体力が削れてたら、一撃受けただけでも
戦闘不能になりそうだね」
『タジャ』
「それは否定できない……」
『カブ……』
苦虫をかんだような顔になるチェレンとポカブ。
「……だから、さ」
『タジャ』
ミコトとヴァインは顔を合わせた。
「『?』」
首をかしげる1人と1匹。
「――ここで、やめにしない?」
「え?」
チェレンは拍子抜けした声を上げた。
「……どうして?」
「だって、これ以上ポカブが傷つくのを見たくないから。さっきは止められなかったけど、今は止められるでしょ」
そういってミコトはチェレンに笑いかける。
『タージャ』
ヴァインも休戦をポカブに言っているようだ。
「…………」
『…………』
チェレンもポカブも黙ってしまう。
「どうする?」
* * *
時にして、1分。
ミコトには、それが1時間のようにも思えた。
ようやくチェレンが口を開く。
「……ミコトの提案は最もだよ。けど――」
「けど?」
一息おいて、チェレンはいった。
「――僕らはまだ、諦めてないっ! ポカブ、渾身の力でたいあたり≠セ!」
『カブー!』
「ええっ!?」
『タジャっ!?』
受け入れてくれると思っていたミコトとヴァイン。しかし、答えは全く逆のものだった。
油断していたヴァインは反応が遅れてしまい、急所は外せたものの直撃をくらってしまう。
テレビにぶつかった。
「ヴァイン! 大丈夫!?」
『タ、タジャ……』
なんとかというようにツタージャは立ち上がる。
「そう来るならもう手加減はしない! 止めのたいあたり≠セ!」
『タジャー!』
「こっちもたいあたり=I 最後の最後まで粘るんだ!」
『ポカー!』
たいあたり%ッ士がぶつかった。そして、あっという間に片方が吹き飛ばされて
戦闘不能となる。
たっていたのは勿論、
「やった! ボクたちの勝ちだよ、ヴァイン!」
『タジャっ!』
ヴァインだった。体力ギリギリだったポカブに真っ向勝負は難しかったようだ。
こうして、ミコト vs チェレンは、ミコトが勝利を収めた。