三話
「ミジュマル、お願いね」
『ミージュ!』
ミジュマルは胸を張った。やる気満々のようだ。
「……もう、こうなったら仕方ないか。やろう、ツタージャ」
『タジャ〜……』
一方こちらはあまり乗り気ではない様子。
「それじゃあ、君のことはなんて呼べばいい?」
『タジャ?』
「ニックネームだよ。種族名で呼ぶよりいいなと思ってさ」
姉さんもそうしてたしね、と付け加える。
「じゃあ、これからいくつか挙げるね」
ツタージャはコクリと頷いた。
「いくよ。ツタ」
首を横にふった。
「ジャ」
横。
「リーフ」
横。
「グラス」
横。
「それなら――ヴァイン」
縦。
「OK。じゃあ、これからはそう呼ぶよ。よろしくね、ヴァイン!」
『タジャ!』
ツタージャもといヴァインは、自ら床に飛び降りた。
「ミコト、準備はいい?」
「いつでも」
「それじゃっ……始め!」
* * *
「先手必勝、って言うよね! ミジュマル、たいあたり=I」
『ジュマ!』
まるで特攻隊のように、ミジュマルはヴァインに向かって一直線。勿論、その勢いを利用しない手はない。
「右に避けてミジュマルがバランスを崩したところをたいあたり=I」
『タジャ!』
ミコトの指示どおり、右に飛ぶ。
『ミジュ!?』
当たることを確信していたミジュマルは動揺し、バランスを崩す。そこにすかさずたいあたり≠決め込んだ。
「きゃっ!
痛ーい! もう許さないんだから!」
『ミジュミージュ!』
「あれ、怒らせちゃったかな……?」
『タジャ……』
燃えるベル側、苦笑するミコト側。
「もう、本気出しちゃうもん! ミジュマル、たいあたり=[っ!」
『ミジューっ!』
特攻隊再びといった感じである。
先ほどと同じようにすればよいのだが、同じ手が通用するとは思っていないミコトは、また違う指示を出した。
「ヴァイン。今度はにらみつける≠ナ怯んだところにたいあたり≠セよ」
『タージャっ』
そしてヴァインはまた指示通りにミジュマルをにらみつけ=A怯んだところにたいあたり≠した。
『ミジュー!?』
「ミジュマルーっ!?」
思いきり壁に追突するミジュマル。そして、
『ミ、ミジュ〜……』
ミジュマルは伸びていた。
戦闘不能だ。
元々にらみつける≠ヘ、相手の防御を下げる技だ。防御を下げられた上に無防備で、そして壁にぶつかったともなれば、伸びるのも当然のことだろう。
「ま、負けちゃった……。でも、どっちのポケモンもすごく頑張ったよね!」
こうして、ベルとの対決は、見事勝利を納めたのだった。