一話
Springs「ミコト」
黒髪でいかにも律儀そうな少年が、どこかふわふわしたような少年――ミコトに話しかける。
「アララギ博士に聞いたんだけど、ポケモンをもらえるんだって?」
「ん、まあね。チェレンもでしょ」
「勿論。君一人だけだなんて不公平だ」
そう言ってミコトの部屋にある青の Present box の方見る。
「……………………」
「……………………」
沈黙の時間が流れる。
「……ベル、遅いね」
ミコトがそう呟いた瞬間、
「あのぅ……」
下の階から誰かが上がってきた。2人一斉に階段の方を向く。
「ごめんね。また、遅くなっちゃって……」
金髪で緑の帽子をかぶった、ミコトよりもふわふわした少女が、そこには立っていた。
「ねぇ、ベル」
「はい」
律儀少年の説教タイム開始である。
「君がマイペースなのは10年も前から知ってるけど」
「はい」
「今日はアララギ博士からポケモンがもらえるんだよ?」
「はい。すいません」
「ちゃんと反省してよね」
今日は軽く済んだものである。
「ミコト、チェレン。ごめんなさい」
ベルは帽子を深くかぶり直し、2人に頭を下げる。
そして頭をあげ、ミコトの隣に立つと、
「で、ポケモンどこなの? 早く顔が見たいな」
Present box を見ると目を輝かせた。
「……あ。でも、選ぶのはミコトからだよね」
はっとしていうベル。
「勿論」
今更か、とでも言うように返事をするチェレン。
「え、いいの?」
「何言ってるの。ミコトの家に届いたんだもん」
「あ、そっか」
「全くもう、2人とも……」
チェレンはやれやれと頭に手を当てた。
そして、彼は再びミコトの隣に立つ。
「その Present box の中。ポケモンが僕たちを待ってる」
「うん」
「だねっ」
三人は顔を合わせた。
「さあ、ミコト。一歩踏み出して」
「ね、早く Present box を調べてよ」
チェレンもベルもミコトを急かす。
「な、何でそんなに急かすの?」
少し焦りながら一歩前に出るミコトに、彼らはこう答えた。
「え? だって――」
「うん。だって――」
「「早くポケモンと会いたいんだ(もん)!」」
「二人とも、ボクよりも楽しみにしてるでしょ?」
苦笑することしかできないミコト。けれど、2人の気持ちはよくわかる。自分も同じ気持ちだから。
ミコトは Present box に手をかけた。
「一体、どんなポケモンが私たちを待ってるのかな……?」
これでもかというほどに輝いているベルの瞳をよそに、ミコトは Present box をあけた。