Prologue
「あのさ、永遠に会えなくなるわけじゃねぇんだから……」
「記念だって記念。ほら、撮るぞー」
「はいはい、わかったよ。ミコト、ちゃんと入ってるよな?」
「うん、勿論」
「トウヤ――っておまっ、逃げんじゃね!」
「ぐぅっ! だ、だってオレ血繋がってないし写っていいものかって」
「血がどうした! 家族だろっ」
「いや、でも」
「よし。いいぜー!」
「いつでもいいよ!」
「なんだかなぁ……」
――――
「
それじゃ、行ってきます! あたし、絶対絶対強くなって帰ってきてやるからな!」
姉さんの背を見送った、翌年。
僕も、旅に出る。
ついに明日、旅に出る。このカノコタウンの外に出る。
そう考えただけでワクワクする。
最後に出たのはいつだろう。……つい数ヶ月前、ホウエンにいったっきりだったかな。
緊張して寝られない。遠足前の園児みたいだな。
『
なんで6匹目を連れてなかったの……!』
不意に、少し前の記憶が蘇る。
姉さんが旅に出てから一年。明日でちょうど一年だ。そのあいだに、姉さんはホウエン地方で功績を上げた。数ヶ月前に開催された、ホウエンリーグでの
準優勝だ。前近所に住んでいたミズキさんに僅差で負けていた。あと1匹、姉さんの手持ちにいれば、確実に優勝していたはずなのに。もったいない。
そうこう考えていて今更気付く。ボクが旅に出たら、トウヤが1人になる。姉さんがいなくなって2人だっただけでも結構寂しかったのに、1人だと尚更だろう。その上、まだ8つだ(戸籍上は、だが。どう見ても8つには見えないけれど)。
……いや、甘く見過ぎかな。ボクが弱すぎるだけかもしれない。トウヤは普通どころか、人一倍強いくらいだ。心配しなくても大丈夫だろう。
安心したら眠くなってきた。ふあ…………もう、起きてるのも限界、かな……。おやすみなさい……。