2‐4
「リリーラの攻撃≠ェくんでー」
「うわぁっ!?」
「あ、今度はアノプスの『体当たり』が――」
「ヒトカゲ!? 見てないでちょっとは加勢を――ぎゃああああ!?」
「交わしてばっかじゃ意味ないで、ちゃんと攻撃せんと」
ここは『湿った岩場』。飛び出してくるポケモン達のレベルもそれなりに低いダンジョンだ。同じくレベルの低い彼ら――探検隊『ソラ』の二人、ゼニガメのカイとヒトカゲにとっては丁度良い相手だ。
そしてそのダンジョンでカイは、ヒトカゲにダンジョン内での
いろはを叩き込まれていた。
「攻撃って言ったって、これはちょっと交わすので手一杯だってば!」
「はあ? 何言うとんの? こんだけでかいな」
「二対十――じゃなくて、一対十は流石に無理いぃいいいいい!!」
――なぜか、バトルばかり。
曰く、『突然襲われることは多いからどんな状況でも相手を倒せる程度の実力はあったほうがいい』とのこと。
「しゃあないなぁ……貧弱者め」
「貧弱っていう言い方は違うと思うけどっとお!!」
間一髪でリリーラの『体当たり』を避けるカイ。カラナクシとリリーラがぶつかる。しかし、倒れるほどの威力ではなかったようだ。すぐに立ち上がった。
が、次の瞬間。
「――――――」
聞こえるか聞こえないかくらいの声が聞こえた。
刹那、カイを囲んでいたポケモン達がバタバタと倒れる。
「え……!?」
カイは驚きを隠せない。それもそうだ。今まで何度ぶつかっても倒れなかったポケモン達が、一斉に倒れたからだ。
「も、もしかして……ヒトカゲ?」
「まさかあ。オレ、技℃gわへんもん、どっちかなら攻撃≠フ方が好っきゃねん」
腕組みして壁にもたれかかっているヒトカゲ。何かをした素振りはない。
「そ、そっか」
「ほな、先進もか。流石に一対十は鬼やったか?」
「うん。鬼だと思う」
☆☆☆☆
数十分後。
「はぁ、はぁ……倒せたぁ……」
カイはその場にペタンと座り込む。丁度バトルを終えたようだ。
「お疲れさん……て言うても、まだまだやけどな」
隣に立って腕組みをしているヒトカゲが言う。
「ええええ……」
彼はまだまだだというが、それでも一対三だ。ダンジョンに入ったこともなかったカイが、数十分そこらで一人でそれだけを倒しきったというだけで十分だろう。
「オイラもう疲れたよ……」
「何言うとんねん。まだB1階やで。B7階まで行かなあかんのやで」
「そうは言われても……」
カイは、ダンジョンに入ってから戦いっぱなしだ。疲れても無理はない。
「しゃあないなぁ……」
そう言ってヒトカゲはトレジャーバッグを探る。
「ほれ、リンゴや」
そして、カイにリンゴを差し出した。
「あ、ありがと」
躊躇いもなくそれを受け取ってかじりつくカイ。
「くうぅぅ〜〜〜っ!」
どことなくジジくさい。
「食料は大事や、そんな沢山はやれへんで」
「ん、
ふぁふぁっ
ふぁ」
カイはきちんと一口三十回噛んで飲み込んでいる。食事はしっかり味わうタイプのようだ。
「あ、あとあんまり時間かけられんよ」
「(ゴクン)じゃあ歩きながらでもいいよ」
「それじゃ戦えんやろ」
「そっか」
「まずそこに気づきいや!」
無理な願いである。