2‐2
「おいっ!! おおおいぃっっっ!!」 ――うわっ、なんだぁっ!?
ハルキとリコが目覚める、少し前のことである。
「起きろおおおおおおーーーーーー!! 朝だぞおおおおおおーーーーーー!!」「ぎゃああああああっ!?」
――あ、頭が痛ーーーーいっ!!
カイとヒトカゲは、衝撃的な朝を迎えた。
☆☆☆☆
「――ったく、なんやねんお前っ!? 人が気持ちよぉ寝とぉ時に!!」
ヒトカゲの怒声が響く。
「これが俺の仕事だ!」
負けじと相手も言い返してくる。
「そんな近所迷惑がか!? アホらしいわ!」
「近所迷惑だぁ!? そんなわけないだろう!」
実際近所迷惑であるが、そこはこの際気にしないでおこう。
「そんなことよりもだな――」
「ま、待って待って!」
ひとり取り残されていたカイが、二人の会話に口を挟む。
「なんや!」「なんだ!」
「あの……ヒトカゲも、えっと――ドゴームさん? も、とりあえず落ち着いてよ。ね?」
カイは自信なさげに言った。
ヒトカゲの相手。それは、大声の振動で地震を起こすという、ドゴームだった。
「言い合いしてても何も始まらないでしょ?」
その台詞を聞いて二人は目を合わせ、そして深呼吸をする。
すぅ はぁ
「……そうだな」
「……せやな」
閑話休題。
「ところで、ドゴームさん。何しにきたの?」
「朝礼が始まるから起こしに――って、早く支度しろよな! 結構時間がやばい!」
そう言って彼は逃げていった。
「なんやねんアイツ」
「ハハハ……」
苦笑いをすることしかできないカイ。
「……ん? 支度?」
「何言うとんねん。ここ、プクリンのギルドやで」
「あ、そっか」
寝てしまったせいですっかり忘れてしまっていたようだ。
「……と、いうことは、や」
彼らの顔に焦りが生じる。
「遅刻だあーーーーーーっ!?」
トレジャーバックを掴み取り、急いで部屋を出て行った。
☆☆☆☆
「遅れてすんまへんっ!」
既に
弟子達は全員集まっていた。
「遅いぞ新入りっ!」
ドゴームが叫ぶ。
「お前いちいちじゃかあしいわ!」
それに文句を言うヒトカゲ。
「なにおう!?」
「おだまり! 二人とも変わらないだろう!」
そしてペラップの一括が入る。
「「うー……」」
二人は何も言えなかった。
「……さて、全員集まったようだな」
ペラップのその言葉を聞き、カイは肩を竦める。
――やっぱりオイラ達が最後だったんだ。
「よろしい♪ ではこれから、朝礼を行う」
しかし、そんなことは気にしていない様子のペラップ。上機嫌にしきり始める。
「親方様ー♪ 全員揃いました♪」
バンッ
親方――プクリンの部屋の扉が勢いよく開く。
奥からプクリンが出てきた。
「それでは、親方様♪ 一言お願いします」
――るさいなぁ。
ヒトカゲは、朝から機嫌がいいペラップの気持ちが解せなかった。
プクリンの口が開かれる。
「…………ぐうぐう……ぐうぐう……ぐーうぐうぐう……」
その言葉とは言えない言葉のあと、弟子達の中でざわめきが生まれる。
「ヒソヒソ……」(プクリン親方って相変わらずすごいよな……)
「ザワザワ……」(ああ、ホント、そうだよな……)
「ヒソヒソ……」(ああやって朝は起きているように見えて……)
「ザワザワ……」(実は目を開けたまま寝てるんだもんな……)
ざわめき声で、カイとヒトカゲは思わずずっこける。
(や、やっぱり寝とんのかい)
(すげぇ……)
「ありがたいお言葉、ありがとうございましたぁ♪」
そして、ペラップのスルースキルが発動する。
このスルースキルもすごいものである。
「さあみんな♪ 親方様の忠告を肝に命じるんだよ♪」
カイとヒトカゲは体制を整え直した。
「最後に♪ 朝の誓いの言葉! 始めっ♪」
突然のことに二人は必死についていこうとする。が、
「せぇ〜のっ!」 結構大変だった。
「ひとーつ! 仕事は絶対サボらない!」「し、仕事は絶対サボらない!」
「サボらなーい」
置いていかれつつも復唱するので精一杯のようだ。
「ふたーつ! 脱走したらお仕置きだ!」「脱走したらお仕置き……だ?」
「おっそろしいわぁ」
「みっつー! みんな笑顔で明るいギルド!」「みんな笑顔で明るいギルドー!」
「矛盾しとんなぁ」
「さぁみんな♪ 仕事にかかるよ♪」
「おぉーーーーっ!!」 全員がガッツポーズをし、そして散らばっていった。
「なんだったんだろ、今の……」
「さあな」
少々の疑問を覚えつつも散らばっていく弟子達を眺める二人。
「さて……オイラ達は、何をしたらいいんだろう?」
そんなことを呟いていると、
「おい」
ペラップに声をかけられた。
「そんなところで突っ立っているんじゃない。オマエたちはこっちだ♪」
また勝手に話を進めて、上へと続くはしごの方へと歩く。
二人は顔を見合わせ、そして
彼へとついていった。