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「……なぁなぁ」
「ん?」
「…………今から出ようったって、危なくねぇ?」
「そりゃあね」
時間戻って夕下がり。
支度を終えた二人――ハルキとリコは家を出ようとして、ふと気づいた。
――何の支度なのか。それは、一時間程前に遡る。
☆☆☆☆
「私と一緒に、探検隊やってみない?」
「探検隊? 何だそれ」
彼の言葉にエンペルトもリコもずっこける。
無理もない。別の星から来たかもしれないというハルキが、知っている方がおかしいのだ。
「あ、あのね、探検隊っていうのは、未知の場所を探検して、お宝を見つけたりする人たちのことよ」
「へぇ〜っ!」
流石男子、お宝などというものに目がない。
「やるやる! 面白そうっ!」
ハルキはすぐに決めてしまう。
「じゃ、準備しよ。まずはトレジャータウンを目指そ」
立ち上がるリコ。
「探検隊になるにはまず修行をしなきゃならないんだ。そのためにギルドに入門するの。一番近いのはトレジャータウンにあるプクリンのギルドなんだけど、それでもそれなりの距離があるからさ」
「了解っ!」
「ハルキー、そこのオレンのみとってー」
「そこってどこだよ?」
「そこはそこだよー」
「人ん
家の構造なんか知るかっ!」
そんなこんなで一時間後。
「終わったぁー!」
「結構時間かかっちゃったねー」
ようやくした支度がすんだ頃には、もう日が沈みかけていた。
「……なあなあ」
「ん?」
「…………今から出ようったって、危なくねぇ?」
「そりゃね」
と言うわけで、冒頭に戻るわけである。
「だから、明日出発っ」
「……俺は?」
「え? 野宿でもしたら?」
「酷くね!? その反応は酷くねぇ!?」
扱いに涙しそうになるハルキ。
「リコ、冗談はよしなさい。ハルキは今日泊まってもらうわ」
「「え?」」
ハルキとリコの声が重なる。リコは本気で野宿と思っていたようだ。
「いいの?」
「最近、妙に物騒なのよ。そんな中で野宿だなんて、危ないでしょ?」
「あ、ありがとうございます!」
「えー」
「リコ……あんた本気だったの……?」
ハルキは、リコの家に泊まることとなった。
☆☆☆☆
翌朝。
「二人とも起きなさーい。朝よー。この時間から出ないと間に合わないわよー」
「ん……もうそんな時間
ん……?」
「まだ起きたくねぇ……」
「そんなんじゃ探検隊になれないわよ」
ジュー
木の実が焼ける匂いが小屋いっぱいに広がる。
「いい匂い……」
「起きるなら食べていいのよー」
「私起きる……」
「あと一分だけ……」
「
十秒以内に起きたら食べてもいいわよー」
「起きるぅ……」
ようやく起き上がってきた二人。やはり似た者同士である。
「ところでリコ。地図、持ってるの?」
「あ、持ってない。お姉ちゃん使わないのない?」
「あるわよ。あげる」
「ありがとう!」
そしてとことん仲のいい姉妹である。
☆☆☆☆
「それじゃ、行ってくるね!」
「お世話んなんましたー!」
朝食後、二人はトレジャータウンへ向けて出発した。
「ハルキー」
「ん?」
「あんたってさー」
「んー」
「『技』の使い方知ってるのー?」
「知らねー」
一時の沈黙。
「……先に言ってよっ!」
それを破ったのは、リコの『つつく』だった。
「
痛ぇえええっ!」
飛び上がるハルキ。
「これから先『技』が使えないと相当苦労するんだよ!?」
「知るかっての!!」
「仕方ないから『技』の使い方教えてあげる! フシギダネが使える『技』なんてよく判らないけど!」
というわけで、特訓が始まったのであった。