SPE1‐7
休みを取った翌日。彼らは『星の洞窟』にむけて出発した。
一日目。『星の洞窟』までは徒歩で移動だ。
のんびり話をしながら移動した。
ユキカブリが地図を手に入れた
経緯や、ルビーの夢の話、家族の話、ギルドで特に辛かった修行や、沢山のルビーの失敗談、などなど。
これはルビーにとって、初めての探検。とにかく楽しく時を過ごした。
その日のうちに入り口までは辿り着いたが、長いこと歩き続け流石に疲れていたので、ダンジョンには入らなかった。
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二日目。ルビーは『星の洞窟』で苦戦していた。
彼のレベルは低い。だが出てくるポケモンたちのレベルはルビーと同じかそれより少し高いくらいであり、戦いに慣れていないルビーが負けそうになることは多かった。それでも何とか攻撃をしのいでいたが、ダンジョンにオレンの実が一つも落ちていなければ、とっくの間に倒れてしまっていただろう。
そして何より辛かったのが、特性『ゆきふらし』である。その発生源は勿論、ユキカブリだ。
「すみません、ボクのせいで辛い思いをさせてしまって」
ユキカブリは何度も、申し訳なさそうにこの言葉を言っていた。
ルビーもその度に、こう返した。
「大丈夫でゲスよ、オレンの実で回復すればなんともないでゲス」
そう言って、オレンの実を
齧ったのである。
その日は中継地点まで来ることができたので、そこで寝ることにした。
☆☆☆☆
三日目。二人は奥地へと進んだ。
さらに相手のレベルが強くなり、攻略が難しくなる。だがルビーも、初日よりはレベルアップしている。少しずつ戦いにも慣れ、苦戦することも減ってきていた。
しかしやはり、『ゆきふらし』が厄介であった。
二日目のような会話はぴたりとなくなった。ユキカブリも自分が相手をする敵への対処に必死なのだろう、とルビーは考えた。
その日のうちに最深部まで行くことは不可能だと判断したルビーは、一度中継地点に戻り、そこで三日目の夜を過ごしたのだった。
☆☆☆☆
四日目。
「はぁ、はぁ……」
息を切らしながらも、最後の敵を倒すルビー。ここ二日間で、随分成長した。
とうとう、最深部へと到達したのだ。
「……あれ?」
だがそこは行き止まりで、ジラーチなど居なかった。
「ここ、行き止まりでゲス」
「そうですね」
ユキカブリがルビーの前に歩み出る。
「ここが『星の洞窟』の……一番奥なんでゲスかね……」
きょろきょろとあたりを見回すルビー。ジラーチどころかポケモンの気配すらない場所だ。
「ジラーチはどこに居るんでゲスか?」
それでもルビーはまだ、ジラーチの存在を信じていた。
「ククッ!」
突如、何者かの笑い声がその空間に響き渡る。
「クククククッ!」
いや、ルビーはこの声を、知っていた。一週間近く前に一度聞いただけだが、覚えていた。だが確信はない。
「だ、誰かいるでゲスっ!?」
「グハハハハッ!」
「だ……誰でゲスかぁ〜〜〜っ!?」
声は自分の背後から聞こえているような、そんな気がした。
「ククククッ! 本当にマヌケな奴だぜ! ここまでノコノコやってくるとはよ!」
そして彼らは現れた――案の定、後ろに。ルビーは振り返る。
六日前、ユキカブリを追っていた二人組。グライガーとタツベイだ。
「お、お前たちはっ!?」
「ククククッ! 久しぶりだな!」
「トレジャータウンであって以来だな! グハハハッ!」
「ど……どうしてお前たちがここにっ!?」
地図は自分たちしか持っていない。だからこの二人がここに、『星の洞窟』にくることはできない。ルビーはそう信じていた。
しかしそれを砕く声。
「フン! ジラーチなんて、ハナからいねえんだよ」
よく知った声が、後ろから聞こえてくる。それは四日間、ともに戦った仲間の声だった。