1‐4
「オイラと一緒に、探検隊やってくれないか!?」
「ふぁ? 探検隊ー?」
必死な表情で言われた言葉に、ヒトカゲは間抜けな声を出して返事をする。
「ちょ、適当すぎるでしょ! オイラ結構真剣なんだぞ!」
「適当やないぞ」
『適当』という言葉にすぐ反応し、否定するヒトカゲ。
「カイ。自分がなりたいんは探険『家』であって、決して探検『隊』やないやろ」
「ぅぐ……それは、そうだけど……」
カイは喉を詰まらせたような声を出し、さっきの威勢はどこへやらと声をしぼめていく。
「やったら、何でオレに『一緒に探検隊をやってくれへんか』なんて言い出したん?」
「そ、それは……」
目を逸らし、ポリポリと頬を掻くカイ。それをヒトカゲは疑う目で見ている。
「……一人じゃ、怖い、から……かな」
「はぁっ!? 自分、それ本気で言うてるん!?」
ヒトカゲは度肝を抜かれたような、そんな表情をした。
「探険家になったら『怖い』みたいな理由じゃ逃げられんのやで!? わかっとるんか!?」
「も、勿論それくらいわかってるよ! でも……だからこそ! だからこそ、オイラは変わりたいんだ!
あの探検隊みたいにかっこいい探険家になるためにも、どんなことにも逃げ出さないようになるためにも!」
「変わりたいだけや人は――
人はそう簡単に変われへん! どないなことでも努力が必要や!」
「オイラだって変わる努力はしてるよ!」
「してへん!」
「してる!」
カイがハァハァと息を切らしてその場にぺたんと座り込む。
「……とにかく、ひとりでギルドに入れんようなら、探険家はおろか、探検隊も夢の夢やっちゅうこと、よぉく覚えときや。それじゃあな」
立ち去ろうとするヒトカゲ。
「ま、待ってよ!」
それを呼び止めるカイ。
「なんや? オレは急ぎの用があるんや。探検隊ごっこ遊びには付き合ってられへん」
ごっこ遊びなんかじゃないっ! 狭いその空間に、このひとつの言葉が響き渡った。
「少なくとも、オイラは本気だよ! 探検家、もしくは探検隊になって、謎を解きたい! この謎が解くことができるならオイラは変わろうと思える!」
「変わってへんやないか」
「前はギルドの前に行くのすらだめだったよ」
ヒトカゲは言葉を失う。
「だから――お願いします! 一緒にやってください! 今は変われなくても、やってるうちに変わるって事もあるかもしれないから!」
そんなヒトカゲを無視し、カイは頭を下げた。しかし、
「わあっ!?」
甲羅の重みでひっくり返ってしまい起き上がれなくなってしまう。
ヒトカゲはその様子を見ると、ふっと笑って口の端を吊り上げた。
――コイツとやってみんのも……面白そうや。
「……今の本気なんやな?」
「えっ?」
手足をばたばたさせていたカイはその動作をとめる。
「さっき言うたあほくさい言葉、嘘やないんやな?」
「うん。嘘じゃない。紛れもない、オイラの本心だよ」
「そっか。やったら――」
ヒトカゲがカイにに歩み寄り――、
「これからよろしうな、カイ」
手を、差し出した。
「……よろしく、ヒトカゲ!」
カイはその手を取り、起き上がった。