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ピカッ
ドンッ「
いぎゃあぁあああっ!」
ここはサメハダ岩。その岩にて、一匹のポケモンが叫び声を上げた。水色の体で背中に甲羅を背負うポケモン、ゼニガメだ。
今、近くの崖に大きな雷が落ちた。
「もう雷やだ! なんで雷なんて落ちるの!? やっぱり神様が怒ってるから!? オイラなにもしてない気がするけどとりあえずごめんなさあぁああいっ!」
ゼニガメは水タイプ。つまり雷は苦手だった。
それ以外にも苦手な理由はあるのだが。
ピカッ ………ゴロゴロゴロ…… 今度は遠くだ。しかし、
「ごめんなさあぁああいっ! ごめんなさあぁあああいっ!!」
ゼニガメは土下座をして謝り続けている。
何も知らない
人が見たら不思議に思うだろう。『ゼニガメが海に土下座をして謝っている』光景なのだから。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさ」
ピカッ
「
ぎゃあぁあああっ!」
ゴロゴロゴロ……
彼の名はカイ。臆病者だが元気なゼニガメである。
☆☆☆☆
ピカッ ……………ドンッ
「あそこは確か……サメハダ岩らへんだったよね」
大きな雷が落ちた崖から数十km離れた森の小さな小屋に、一匹のポケモンがいた。全体的に青っぽい体に黄色い嘴と足。つまり、種族はポッチャマだ。見た目が愛らしいと女子のあいだでとても人気のポケモンだが、そんなことはどうでもいい。
ポッチャマはサメハダ岩の方を眺めていた。理由は簡単、幼馴染がそこに住んでいるからである。
「カイ、大丈夫かなぁ……雷とかめっぽう弱いのに……」
ピカッ ………………ゴロゴロゴロ……
「今頃海に向かって土下座して謝ってたりとかしてないかな……」
図星である。
ピカッ ゴロゴロゴロ……
「
きゃっ!?」
今度は小さい雷が近くに――キザキの森のどこかに落ちた。
「お、お姉ちゃん、雷とか当たってないかな……?」
ポッチャマは急に不安になった。
彼女の名はリコ。
人一倍気が強く、
人一倍
姉想いなポッチャマだ。