1‐10
「ここがお前たちの部屋だ」
チーム登録後。カイとヒトカゲは、ペラップに自分たちの部屋の案内をしてもらった。プクリンの部屋よりひとまわり程度小さい部屋で、窓があった。窓のそばに、窓の位置よりも高さが低い三段の棚がある。荷物置きだろう。
そして、
「うわぁ、二段ベッド!」
二段の棚が向かいに二つあって、一段一段に草が敷いてある二段ベッドがあった。
「今空いている部屋がここしかなくてな。また新たに弟子が入ったときはここで一緒に寝ることになるが、いいか?」
どうやら部屋が足りないらしい。
「オイラはいいよ」
「オレも構わへんで」
二人は快く頷く。
「それは助かる」
ペラップは笑顔で頷いてから、これからの生活について話し始めた。
「これからお前たちは住み込みで働いてもらう。明日から忙しいぞ♪」
「オイラたち、頑張るぜ!」
ガッツポーズをするカイ。
「……まあそれはともかく、準備が終わったら食堂にこい。終わる頃には多分みんなも帰ってきているだろうからな」
そういってペラップは部屋から出ていってしまった。
「準備って言ってもなにをしたらいいんだろうね」
「十中八九荷物整理やろ。さっきもらったモンとか」
「ああ、なるほど」
☆☆☆☆
「う〜ん……」
所変わってプクリンの部屋。そこには、ただひとり座って考え事をしているプクリンがいた。
コンコン
ノックの音が部屋に響く。
「親方様。ペラップです」
「いいよ」
カチャリという音がして扉が開き、ペラップが入ってきた。
「今回渡したリボンの件で、少々お話が」
「ああ、あれね。いっつも言ってるからもう慣れてきちゃったよ」
「そうですか」
ペラップは苦笑する。
「それで、どういったお考えで?」
「いつも通りだよ。ボクが見た、彼らの色」
そう言ってプクリンは一息つき、説明を始める。
「ゼニガメは明るいけど、ものすごく臆病だと思うんだ」
図星だ。
「だから水色。でも、ヒトカゲは……よくわからない」
「わからない、と言いますと?」
「彼がこの部屋に入ってきた瞬間、雰囲気がとても穏やかになった。もちろん、ボクの気分もねだから、黄緑のリボンを渡そうとしたんだ。けど……」
プクリンの顔が曇る。
「けど?」
「時間が経つにつれて、黄緑ではない気がしたんだ。……
オーラの色がね、最初は黄緑だったんだけど、次第に赤が見え隠れしててさ。出て行く直前なんか、赤と黄緑が半々くらいだったんだよ? おかしいと思わない?」
「確かに、変ですね。オーラは一人一色……でしたっけ?」
ペラップの言葉に、頷くプクリン。
「少なくとも、ボク二色のポケモンなんて見たことがない。結構いろんな人に会ってきたつもりなんだけどね――」
一息おいてこう呟く。
「――彼は、不思議な
新米だよ」
☆☆☆☆
「――えー、コホン」
数時間後。ギルド地下二階、弟子達の部屋と対称にある場所――食堂に、ポケモン達が集まっていた。その中で、ペラップは話し始めようとしていた。
「皆空腹だと思うが、食事の前に紹介する者がいる」
「なんだよー!?」「こっちは空腹で倒れそうなんですわよ!?」「ヘイヘイ!!」
彼、ペラップの想像通り、盛大なブーイングが起きる。
頭を抱えつつ、
「静かに!」
と一蹴した。全員黙る。
「今日、このギルドに新たな仲間が増えた。お前達の後輩だ」
「もうでゲスか!?」
「そうだ。今から自己紹介をしてもらう。……二人とも、入ってきな」
そこに、二人が――カイとヒトカゲが、入ってきた。
「え、ええええええええっと、ゼニガメのカイでしゅっ!」
リンゴのような顔で自己紹介をしようとして噛んでしまうカイ。更に顔を赤くして、うつむく。
「緊張しすぎや」
思わず苦笑するしかないヒトカゲ。
「オレはヒトカゲ。名前は特にないわ。よろしゅうな」
「というわけで、今日から二人もここで修行をすることになった。全員仲良くするように!」
そう告げたあと、お前たちの席は向こうだといってペラップは二人を誘導する。
カイは逃げるように、ヒトカゲは悠々と席についた。
「……待たせたな。それでは、」
『いっただっきまーす!』 ガツガツムシャムシャ
この場面には、そんな効果音が最適だろう。すごい勢いで弟子たちの皿の上がなくなり、そしておかわりの山もなくなっていく。
自分の夕食も食べられてしまうかもしれないと、カイは自分の皿を急いでかきこむ。
「――ごほっ、ごほっ!!」
噎せた。
「慌てすぎや」
隣からそんな声が聞こえてきたのでそちらの方を向くと、そこには、
凄い勢いで山から食べ物を取るヒトカゲがいた。
「ちょ、ヒトカゲ!?」
「遠慮せんでええんやったら食える分だけ食うたほうがええやろ」
話しながら胃袋へと流し込むように食べられるという、とても器用なやつである。
「
ふぉふぃ(ゴクン)新入り! お前食いすぎだろ! 何もしてないくせに!」
「(ゴクン)探検せな腹が減らんっちゅうわけやないで!」
「
ふぉんふぁいふぉふぃんふぃふぃふぁ(ゴクン)凄いですね……」
山がなくなるまで、晩餐は続いた。