1‐9
ギルドの中に入ると、すぐに地下へと続くはしごがあった。
「お、はしごだ」
「まぁ表から見てもそないに広くなさそうやったからなあ」
二人ははしごを降りてゆく。
するとそこには、数々の探検隊がいた。
「わぁ〜!」
感激してカイは思わず声を出す。
「ここがプクリンのギルドかぁ!」
そして、キョロキョロと見回す。
「ポケモンたちがたくさんいるけど、みんな探検隊なのかなぁ」
「せやろな。ギルドやし」
そんな緩んだ会話をしていると、
「おい!」
二人は誰かに呼ばれた。
振り向くとそこには、音符マークの体の鳥、おんぷポケモンのペラップがいた。
「さっき入ってきたのはお前たちだな?」
訝しげに尋ねてくるペラップ。
「は、はい!」
突然緊張し出すカイ。
「ワタシはペラップ♪ ここらでは一番の情報痛であり……プクリン親方のいちの子分だ♪」
(そないなこと普通自分で言うかいな)
(あ、アハハ……)
自分の話に夢中で、二人の話し声は聞こえてないらしい。内容が内容なので、聞こえていなくてよかったと言えるが。
「勧誘やアンケートならお断りだよ。さあ帰った帰った」
ペラップは勝手に決め付けて帰る道を作る。
それに腹が立ったのか、ヒトカゲはペラップにこう言い放った。
「
ポケモンの話は
最後まで聞けて、おふくろに習わんかってん?」
「ちょ、ちょっとヒトカゲ」
「オレらは探検隊になりたい思て、ここに探検隊の修行をするためきたんや。それを何やねん自分? 勝手に切り捨てんなや」
「えっ! た、探検隊!?」
ペラップは驚いて二人に背を向ける。
「今時珍しい子だよ、このギルドに弟子入りしたいとは……。あんな厳しい修行はもうとても耐えられないと言って脱走するポケモンもあとを絶たないのに……」「何ブツブツ
言うとるの?」
ヒトカゲは今、『めっちゃイライラしてますオーラ』を出しているに違いない。誰にでもわかってしまう。
「なぁペラップ。どうしたの?」
「ハッ!?」
カイにそう言われてペラップは正気を取り戻し、顔をもう一度こちらに向けた。
「いやいやいやいや!」
そして突然うろたえ出す。
「な、なんでもないよ! うん、なんでもない! そっかー♪ 探検隊になりたいなら早く言ってくれなきゃー♪ フッフッフッフ♪」
「勝手に決めつけたんは自分やないか」
突然態度が変わったペラップに鋭く突っ込むヒトカゲ。だがペラップは全く気にしていない様子。
「じゃ、さっそくチームを登録するからついてきてね♪」
そう言って勝手に歩き出す。
二人顔を見合わせていると、ついてきていない二人に気づいたペラップが振り向き、ものすごい笑顔でこういった。
「何してんの? こっちだよ♪ さあ早く♪」
一人ではしごを降りていくペラップ。
仕方がないので、二人はペラップについていった。
「ここはギルドの地下二階。主に弟子たちが働く場所だ」
降りてからペラップが説明する。
「チームの登録はこっちだよ。さあ」
そう言って向かって左側に少し歩くと、窓があった。
「わぁ! ここ、地下二階なのに外が見えるぞ!」
二度目の感激を味わうカイ。だがそれに、
「いちいちはしゃぐんじゃない!」
ペラップが一括入れる。
「このギルドは崖の上に立っている。だから外も見えるんだよ」
「へぇ〜っ」
そう言われてもはしゃぎたい気持ちは全く収まらないようだ。
ヒトカゲは軽く苦笑する。
「――さあ、ここがプクリン親方のお部屋だ。くれぐれも……く・れ・ぐ・れ・も! 粗相がないようにな」
「「は、はあ」」
釘を刺すように忠告するペラップ。
そして彼は扉をノックする。
「親方様。ペラップです♪ 入ります」
☆☆☆☆
「親方様。こちらが、今度新しく弟子入りを希望している者たちです」
入るとそこは、少し大きいくらいの部屋だった。そこにただひとり背を向けてたっているのは、ふうせんポケモンのプクリンだ。なお、その部屋にはそれなりに大きい宝箱が置いてあることをここに記しておく。
プクリンの返事はない。
「親方様……親方さ」
「やぁっ!」
突然振り向くなり三人を驚かせた。
「ボク、プクリン! ここのギルドの親方だよ?」
疑問系であることはこの際放っておくことにする。
「探検隊になりたいんだって? じゃ、一緒に頑張ろうね!」
どんどん話を進めていくプクリン。
「とりあえず、探検隊のチーム名を登録しなくちゃ。君たちそれぞれの名前と、君たちのチームの名前を教えてくれる?」
そして、最後まで行き着くと、彼は話をやめた。そこで呆然としていたカイの意識が戻る。
「あ、え? チームの名前? そういえば全く考えてない……」
「そないなの要ったん?」
「あれ、知らなかった?」
コクリと頷くヒトカゲ。
「じゃあ考えてきてないの?」
「うん、まったく……今考えてもいい?」
「もちろんいいよ♪」
そして彼、プクリンの心は広いものである。
「……なぁヒトカゲ、何かいい名前、あるかな?」
「オレに丸投げかい」
「勿論オイラも考えてるよ! でもまあヒトカゲにも聞かなきゃなあって思って」
――本当のことを言えば、オイラなんも考えてないんだけど……。
「……考えてへんな?」
「…………はい」
考えが読まれたことに驚きつつも肩を竦めるカイ。
「やったら、せやな……『ソラ』なんて、どない? 大空みたいに広いトコを探検したいと思いまへん?」
数秒考えたあと、ヒトカゲは提案した。
「うん、確かに……」
「じゃ、それできまりだね♪」
心は広いが、あまり長くは待てないらしい。
「ちょ、ちょっとまって」
「なんで? 両方とも納得の名前ならそれでいいじゃん」
「ま、まぁそうだけど……」
「なら決まり♪ 『ソラ』で登録するよ」
時が進むのは早いものである。
「……とその前に。君たちの名前を教えて」
プクリンはハッとした様子で訪ねた。
「あ、オイラはカイです!」
「オレは名前ないんや。あるのかも判れへん」
ヒトカゲの言葉に、プクリンもペラップも目を丸くする。
そして、
「わかった。じゃあ『ヒトカゲ』で登録しておくよ?」
「それがええな。頼むわ」
サラっと流す。
「登録♪ 登録♪」
弾みながらいうプクリン。
(おい、お前たち、耳を塞げ!)
突然、隣にいたペラップから何か言われる。
「へ、何? 小さくて聞こえないからもう一度――」
「みんな登録……
たぁ――――――――っ!!」
「うわぁあっ!?」
カイは驚いて尻餅をついてしまった。
「おめでとう! これでキミたちも今日から探検隊だよ!」
そんなカイをよそに、プクリンは話を進めていく。
「記念にこれをあげるよ」
そう言って彼は、二人の目の前にポケモン探検隊キットを置いた。
「え、これ何や?」
そんなことを知るわけがないヒトカゲは、普通にプクリンに尋ねる。
「ポケモン探検隊キットっていって、探検隊に必要なものなんだよ。中を開けてみて」
「ちょ、ちょっとその前にオイラを起こしてくれると助かるよ」
カイは尻餅を付いた勢いで転がってしまったらしい。足をバタバタさせている。
仕方なさそうに起こすと、ヒトカゲは探検隊キットを開けた。
中には何かのバッジが二つ、地図のようなものが一枚、そして、肩に下げるタイプのバッグが一つ入っていた。
「わぁ〜! 色々入ってる!!」
それをみて更に感激するカイ。感激してばかりである。
「まず、探検隊バッジ。探検隊の証だよ」
プクリンはまず、バッジから説明をはじめる。
「二個入っとるっちゅうことは、一人一個かいな?」
「うん。そうだよ。次に不思議な地図。とても便利な地図だよ」
地図のようなものを取り出して、地図の説明もするプクリン。
「最後にトレジャーバッグ。ダンジョンで拾った道具をとって置けるんだよ」
そう言ってプクリンは地図をバッグの中にしまう。
「また、君たちのこれからの活躍によって、バッグの中身もどんどん大きくなっていうという、とっても不思議なバッグなんだよ♪」
「へぇ〜っ。なんだか面白いね」
カイは、探検隊になったのだから早く探検がしたい、と言わんばかりの表情だった。
「それと、はい。これ」
プクリンが差し出したのは、二つのリボンだった。
「これは、ボクからのプレゼント。二人のイメージをボクなりに考えて選んだんだ。きっとキミたちの冒険に役立つと思うよ♪」
そう言って、カイには水色の方を、ヒトカゲには赤い方をそれぞれ渡す。
「あ、ありがとう!」
「おおきに」
それぞれお礼を言う。
「オイラたち、これから頑張ります!」
「うん。でも、まだ見習いだから、頑張って修行してね!」
「はい!」
そう返事をして、カイはヒトカゲの方を向く。
「ヒトカゲ! 頑張ろうな!」
ヒトカゲは頷き、にっと笑った。