Prologo
とある時間の狭間にて。
「こっこまで来てみろぉ!」
一人と一匹がその場を走っていた。理由は、追われているからである。
「っ……こんのクソガキがぁっ! 『影撃ち』!」
相手からの攻撃を、
彼は軽々と避けた。
「オレに適うと思うなよ!」
「ンのクソガキっ……調子に乗るなぁっ! 【
Dose Un Moto Di Onda Di Cattivo】っ!!」
相手は
彼の挑発にのり、何かを唱えた。その瞬間、彼らの頭上に真っ黒な何かが現れた。
「んなっ!?」
彼の顔にはっきりと驚きと焦りの表情が浮かぶ。そして、
「
キル!」
彼は、キルを庇った。
「ぐあぁっ!」
「ユウっ!?」
一瞬だった。
ユウの悲痛な叫び。
キルが
彼の名を呼ぶ声。
敵が嘲笑う声。
次の瞬間、彼らは時の狭間から出た。
着地したのは、運悪くも崖っぷち。
今にも落ちそうなユウの手を、キルの手が掴む。
「絶対に離すなよっ!」
その細い腕は、50kg近くある体重を支えようと必死だった。
「あほっ……何を……言っと……るんや、キル……手ぇを……離せっ……!!」
「お前こそ何を言ってる!? ここで離したりなんかしたら」
「この……まんまや……お前まで……お前まで一緒に落ちっ……ぐぅっ」
「もうしゃべるな! 引き上げるからじっとしてろ!」
その時だった。
ドンッ ピシャアァッ 彼らに雷が落ちてきたのは。
衝撃で手が離れ、ユウが崖の下に落ち、キルは陸のほうに飛ばされ、二人は離れ離れになった。
☆☆☆☆
「うがぁー! わかんねぇっ! ギブ!」
彼は辺りにプリントをぶちまける。そのプリントには、
【@次の()に言葉を入れなさい。
1.ホウエン地方が出来たのは( )年と言われている。
2.第一回ポケモンリーグホウエンはアルセウス歴( )年である。
A次の()に言葉を入れなさい。
1.カントー地方が出来たのは( )年と言われている。
2.第一回ポケモンリーグカントーはアルセウス歴( )年である。
3.初代チャンピオンは( )である。】
この地方の『地方史』と『世界史』の問題が書かれてあった。
ちなみに答えは、
【@1.紀元前500億
2.1992年
A1.紀元前1000億
2.1987年
3.オーキドユキナリ】
である。
「こんなの知ったって俺には全くカンケーねーだろぉーっ!?」
彼は叫び、机に突っ伏した。
すると、
『あんちゃん黙って! せからしか!』
隣の部屋から
彼を注意する声が響いてきた。
「あー、ごめんごめんー」
棒読みで謝る。謝罪の気持ちなど全く無い。
「さて……っと。寝ますか」
そう言って
彼はベッドの中に入る。
が、いつもは感じるそのふかふかな感触が無い。
それもそのはずだった。
不思議なことに、
ベッドの底が抜けていたのだ。
「
うっ……うわぁあああっ!!」
彼の叫び声は、雷の音によって掻き消されてしまったのだった。
物語は、全てここから始まる。