攻撃の能力育成にもっともすぐれている性格は?
【質問3:ポケモンを捕まえる時、ゲットに用いるのはモンスターボールであるがモンスターボール以外に存在するボールの種類と補助効果を五つ記入せよ】
えっと、ボールの種類かー。スーパーボールに、ハイパーボール……。あ、そういえばカナが珍しいの持ってたな〜、たしか、ルアーボール……だったっけ?
うわ覚えながらも知っているボールの種類と効果を鉛筆で書いていく。
私が良くカナと行くフレンドリィショップではいろいろなボールが売られていて、一つ一つがシェルフに並べられている。やっぱり需要の一番高いモンスターボールから始まって、値段と希少価値が高い順に並べられている。
でもさすがに私のお小遣いだと一ヶ月は溜めないと、普通にハイパーボールには手が出せない。それに、ハイパーボールで捕まえようと思うポケモンにも出逢わないしガーディの世話をする為の用具とか買っているからさして困らないんだよね。
っとと、物思いにふけっている場合じゃなかった。
【質問4:あなたが所持している手持ちポケモン一匹の名前と特性を下の欄に記入せよ。そしてそのポケモンの進化系・または進化前の名前と違いを述べよ】
なんだ、こんなの簡単じゃん。えっと、名前はガーディで、特性は威嚇と貰い火。私のガーディは貰い火だったよね……。それと進化系はウィンディで……違いは、う〜ん、かっこよくなるかな?
指示通りに回答欄に鉛筆を走らせ、私は4問の文章問題を終える。
そしてラストスパートの選択問題へと目を通す。。
【1:攻撃力の能力育成にもっともすぐれている特性は何か?】
・臆病
・寂しがり
・腕白
・陽気
【2:ポロックまたはポフィンを二つの木の実で作る場合、美しさがもっとも上がりやすい組み合わせは次の内どれか?】
・カゴの実xザロクの実
・ブリーの実xクラボの実
・シーヤの実xモコシの実
・ヨロギの実xパイルの実
【3:特性で「持たせた道具の効果があらわれない」ものは次の内どれか?】
・忘れん坊
・不器用
・天然
・怠け
【4:バトルにおいて、審判のいない時はどうやって勝敗を決める?】
・個人の判断での瀕死状態確認
・ポケギア・ポケナビ・ポケッチに内蔵されているバトル審査モードをお互いにONした状態で確認
・第三者に審判をお願いする
・ポケモンが倒れ、10秒間立ちあがらなかった時に瀕死と判断
【5:ジムで対戦を希望する時に一番初めにしておかなければならないのは?】
・ジム対戦の予約をポケモンセンターで済ませる
・対戦するジムリーダーのスケジュール把握
・ジムリーダーのプロフィール確認
・ジムリーダーとお友達になる
【6:次の技の内、技マシンに無いものは?】
・穴を掘る
・毒々
・フラッシュ
・火炎車
【7:飛行タイプを持っていて【空を飛ぶ】を覚えないポケモンはいるか?】
・いる
・いない
【8:化石から復元されるポケモンが実在するが、ツメの化石から復元されるポケモンはどれか?】
・カブト
・アノプス
・タテトプス
・プテラ
【9:ケムッソはその性格によってカラサリス・あるいはマユルドに進化するか別れるか否か?】
・別れる
・別れない
【10:確認、あるいは伝記されているポケモンの種類は全てで500体以上いるか否か?】
・いる
・いない
……何これ?
選択問題の一番ひどいところ、それは異常無きまでに難しいということ。
わ、わかんないよ〜……
泣きそうになるぐらいに、手も足も出ない。でも、選択問題だから1/4は正解するはず……。アルセウス様お願い!!
神様に願えば、なんでも叶うんだから!!
そんな自暴自棄になった私の行く末は、知るわけないじゃんそんなの……。ううぅ、私の昨日の努力が〜。
そして無情なチャイムは私に解放という音色ではなく、撃沈という名の鐘音をもたらした。
先生がテスト用紙を回収する中、私はまるで生ける屍と化していたらしい(カナ談)。こうして私の期末試験は幕を閉じた。
そして今から昼休憩のため、他の生徒は各々に席から立ち上がったり談笑を始めたりする。
「だ、大丈夫、ルカちゃん?」
心配げな瞳で私に話しかけてくるカナ。
「う、うん……」
「そんなに、駄目だったの?」
彼女のそんな無垢なる視線が痛い。おろおろとしながら宙で両手を浮つかせているカナはこんな時じゃなきゃ、抱きしめたいくらいにかわいいのに……。
「あ、あははは、あははははは」
カナから視線をそらして、虚空を眺めながら乾いた笑いがこみ上げてくる。
もはや頭のネジが外れたか、いよいよ壊れたらしい。そんな憐れな私の姿を見たカナはこう提案してきた。
「だ、だったらご飯にしよ? ね? お腹いっぱいになったら気分も良くなるよっ」
私を気遣ってくれるカナ。
「うん」
元気な時ならば抱きついてはいるけれど、今は体が非常に重くてだるかった。ううん、体じゃなくて心が。
私はカナに手伝ってもらって立ち上がり、重い足取りで食堂へと向かうのであった。
食堂には期末試験が終わったことに緊張感が解かれた生徒たちでひしめぎあっていた。ここのスクールでは大体すべての教科の試験を朝の内に終わらせてしまう。
基本スクールというのが専門的分野の講義に力を入れている為、その評価方法はいろいろなんだよね。
「ほ、ほらルカちゃん、ご飯ちゃんと食べないとお昼の授業体持たないよ?」
私を心配するとともに焦りを見せ始めたカナは、その手にミックスサンドをかわいらしく握っていた。
「あーん……」
「え?」
私は右頬をテーブルに突っ伏したまま横目にカナを見上げながら口をあける。
「ほ、欲しいの?」
カナが自分の持つサンドイッチと私の口元に視線を二、三往復させて尋ねてくる。
「(こくり)」
何も言葉では発さずに私は顎を上下させる。
「じゃ、は、はい」
カナはなんだか辺りを確認するように首を左右にせわしなく向けた後、私の口元にサンドイッチを運んでくれる。
お母さんがいたら「お行儀悪いわよルカちゃん」って言ってくるだろうけど、そんなこと気にしている程に心に余裕などなかった。
カナのサンドイッチの柔らかいパンの食感とハムときゅうりが生み出すもにゅもにゅ感としゃきしゃき感を堪能して、なぜか私の目頭に涙がこみ上げてきた。
優等生のカナに、こんなにも美味しいサンドイッチを食べさせてもらって、私は! 私は!!
椅子を押し出すようにして立ち上がり、私はその場で直立して腕を振り上げる。
「きゃっ、ル、ルカちゃん?」
私の突然の行動にカナはびっくりしたようで、手に持つ水筒をずるりと落としてしまいそうになる。
「帰る」
「え?」
「もう、帰る!」
「だ、だめぇ〜〜〜!!」
食堂から出ようとする私に、縋るようにカナが私の服を両手でしっかりと掴んで逃がさんとする。
意外と内気な癖に行動力があるのがカナの意外なところだけど、今はそんなことどうでもいいのカナ! 私はみじめな女の子なの、ここにはいられないの!!
「もう、私は嫌なの!」
「あ、諦めちゃダメだよ! 人生、諦めたら終わりだよ!」
と、何の因果で生まれたかわからない意味不のプチ劇場が食堂の昼に行われ、私たちは生徒達の注目の的となるのであった。
テスト、怨むべし。
なんやかんやで結局放課後を迎えて、私は全ての授業から解放された。
でも心だけは絶望という名の檻に監禁されたまま。
カナとは昼からの授業とは別れるため、下校するのは私の方が若干早い。
一人とぼとぼ学校から出て家へと帰る路地を進行していると、後ろから慣れ親しみ過ぎて嫌になる声が投げかけられる。
「おい、帰るぞ〜」
そう、一番一緒に帰りたくない時に現れる私のお兄ちゃんであった。
「…………ちっ」
「おい、なんだよお前。お兄様見て第一声が舌打ちとは良い度胸じゃないか? あ?」
「離せこのバカ兄ー!」
会うなり私の髪をがしっと掴むお兄ちゃん。そのままわしゃわしゃと乱暴に髪の毛を撫でられる。
「はっは〜、お前今日のテスト出来悪かったんだな?」
「なんで知ってるの?!」
「カナから聴いたぜ」
『カナめーーー!!』
ちなみにカナは昼からの授業の一つのカリキュラムだけお兄ちゃんとクラスが一緒なのだ。
「お前また勉強しなかったのか?」
お兄ちゃんが喋る度に真っ白い靄が虚空を漂い、霧散する。
「したもん!」
「どうだか」
お兄ちゃんは呆れた風な口調で肩を上げてにくたらしそうな表情をつくって私を見下ろす。
話せば話すほどに機嫌も気分も悪くなっていく……。うぅ、最悪!!
「なあ、おい」
「何よっ!!」
私がお兄ちゃんの先を速足で歩きだしたら、お兄ちゃんが後ろから呼びかけてくる。
「オクタン焼き奢ってやるよ」
一瞬お兄ちゃんの言っていることが理解できなくて、口をあんぐりとさせて数秒。
「本当っ!?」
「ああ、ってことで行くぞ」
「うんっ!」
家へと続く道の間にある商店街の方へと方向回転して、私はルンルン足取りでスキップしながらお兄ちゃんの手を取り先導した。
テストは死んじゃったけど、オクタン焼き〜♪
私はいつの間にか上機嫌になって、商店街でも人気のあるオクタン焼きの店へと向かう。
「ここまで機嫌変わるなんて、女って理解できないよな……」
お兄ちゃんが後ろで何かつぶやいていたけど今の私は気にしないことにした。
オクタン焼きを道中で御馳走になりながら、私たち二人は家へとたどり着いていた。
「「ただいま〜」」
「あら、おかえりなさ〜い」
私とお兄ちゃんは玄関でマフラーやらジャケット・コートを脱いで掛ける。
「あらあら、二人で帰ってくるなんてどこか行ってたの?」
「うん! お兄ちゃんオクタン焼き買ってくれたー」
「あら、ケンくん偉いじゃない」
「まあな……ルカの奴、テスト死んだみたいだしな」
「うっ……」
「あら……」
お兄ちゃんめー、要らない情報を……。
お母さんは眉をひそめちゃうし……。
「大丈夫、ルカちゃん?」
「え、あ、私? 私は大丈夫だけど、テストは……駄目でした」
「昨日あんなに頑張ってたのにね。まあ、次があるわよ。ほら二人共、ココアできてるからね」
「サンキュー」
「あ、ありがとうお母さん!」
お兄ちゃんは鞄を肩に担いだまま、玄関からリビングの方に行ってしまう。私は優しすぎるお母さんの胸元に抱きついて、感謝の意を表現する。
「ルカちゃんも、ココア早く飲まないとケンくんに飲まれちゃうわよ?」
私を受け止めて、頭を撫でてくれているお母さんの言葉をきいて私はにやけていた表情から一転、
「お兄ちゃん私のココア飲まないでよー!」
という掛け声と共にリビングへとダッシュした。
「二人共ちゃんと手洗いうがいするのよー」
そんないつもの日常が、あった。
「おいでガーディ」
「ガウ!」
ココアで温まった私は自分の部屋に戻ってガーディをボールから出してあげる。鞄も勉強机の横に卸して、デスクランプも点ける。
ガーディは四肢を伸ばして、大きく欠伸を一つした後、私の胸元へと飛び込んでくる。
「それじゃブラッシングしよっか」
「ガウ!」
私はガーディを抱き寄せたまま、私は椅子に座ってガーディの毛繕いを始める。
気持ちよさそうに表情を和ませるガーディの顔を見ながら、私も今日のテストのことも忘れて癒されてしまう。
「明日を頑張ればいいんだよね」
「ガウ?」
ふと零れた独り言に、ガーディは耳をぴくんと動かして反応してくれる。
「明日も頑張るぞ〜、ガーディ〜」
「がうぅぅ〜」
ガーディを抱きしめて私は立ちあがってくるくると周り始める。
「よーし、今日あったことは全部全部忘れよー!」
「ガウ!」
オーディオのスイッチを入れて、私は流れるポルカ・オ・ドルカのリズムに身を委ねる。
「おいルカ、明日なんだけどよ……カナにこれ返し―――」
突然お兄ちゃんが私の部屋のドアを開けて、手にはカナの物であるタオルが握られていた。
でもお兄ちゃんは言葉を全部言い切る前に私とガーディを見て硬直し、
「お前、お気楽もんだよな(ふっ……)」
嫌みたっぷりに(顔芸込み)私をバカにしてから部屋を出て行った。
「う、うるさーい!!」
私は顔を真っ赤にお兄ちゃんに叫び返すも、それは扉に阻まれ……今日お兄ちゃんにオクタン焼きを奢ってもらった恩などただの気まぐれと片付けてしまって、頭を沸騰させるのであった。