第1章 ポケモンになっちゃった
第4話 ギルド入門
初めてのダンジョン探索を終え、無事に脱出を果たした彼等。でも、これは終わりではなく始まりで?ー



海岸に四本の光が立ち昇り、すぐに消えていった。それを見て、誰も驚くものはいない。それはよく見慣れた光だからだ。
「………ここは、入り口?」
多くの場合はダンジョン前に光が立つことは少ない。よく見慣れた光ではあるが、そこに現れるのは少しばかり珍しい。
「そうだよ。チェルがあなぬけの玉を使ってくれたんだ。ありがとう、チェル」
「あらかじめクオンから渡されてたんだよ。礼ならクオンに言いな」
当のクオンは、知らん顔で向こうを向いている。表情は見えず、何を考えているのかわからない。
「あなたの突飛な行動にはいつも手を焼かされているの。急なダンジョン突入だって予測済みなの」
そう言ってはいるが、どことなく嬉しそうだ。
「ちょっとー。それは少しひどくない?照れ隠しもほどほどにね」
フラムの何気ない一言で、クオンの頬が少し赤くなった。
「照れ隠しなんてしていないの。当然のことをやったまでなの。…人をおちょくるのもいい加減にするの」
しかし、それを指摘した、指摘してしまったフラムはもれなくサイコキネシスの刑に処された。少し浮かされた状態から、嫌な音が響くと、砂浜にドサッと、倒れた。
「ちょっ、大丈夫ですか!?大丈夫ですよね!?」
「心配いらないの。何回やっても全然こたえないの」
倒れたフラムに焦って近づくが、特に傷付いたようなところはない。クオンは呆れるようにため息をつくだけだった。
白目をむいて気絶していたのに、すぐに意識を取り戻して立ち上がると、なにもなかったかのように話を始めた。回復の早さに少し不気味に思っても仕方ないだろう。
「そういえばさ、レンファこの後どうするの?行くあてとかある?」
「あ…」
思えば、そんなものはなかった。自分の記憶には帰る場所などはなく、消えているのか、はたまた本当に無いのか。真偽は定かではないが、今の自分に行き場がないことは確かだ。
「いえ…特に、無いですね。…ハハ、どうしましょう」
「じゃ、じゃあ!だったら、わたしと探検隊をやってくれないかな!」





「探検隊をやってくれないかな!」
言った。言ってしまった。
ずっと考えていたことだ。
探検隊になる。それがわたしの夢。探検隊になって、未開の地やいろんなダンジョンを駆け巡って、誰もが憧れるくらい有名で強い探検隊になる。そう心に決めたのは、一体いつ頃だったかな。だけど、それは叶うことはなかった。
わたしが臆病過ぎるせいで、何もできなかったから。例え体を鍛えても、心が鍛えられることはなかった。わたしはいつもあの場所に行っては、怖くなって逃げ出すのを繰り返していた。
「無理に…とは言わないよ。ただ、ほんの少しでも気があるなら、…考えてみてほしいなって思って」
今だって怖い。首を横に振られるのが怖くて、うつむいたまま話しかけてる。だけど、今逃げちゃいけない。今逃げてしまったら、きっと、わたしはずっとこのままだ。見たくないものは見ないまま、知りたくないものは知らないまま。
わたしは臆病だけど、勇気の出しどころくらい知っている。
「ボクは今住むところすら無い状況です。それでなんで探検隊結成とやらの話になるんです?」
「あ、えーっと…探検隊になるためには探検隊ギルドっていう場所で修行して、そのギルドのギルドマスターに認めてもらうことで初めてフリーの探検隊になれるんだけど………その修行中の間ギルドに住み込みで修行するの。だから、そこに住めばいいんじゃないかなって」
表情をなくしたレンファはがっしりとフラムの肩を掴んだ。
「やりましょう、探検隊」
真剣な瞳で発した言葉は、なんとも言えないほどかっこ悪いものになってしまった。



ダンジョンに入った時間が遅かったため、辺りは既に暗く、ギルドの入り口脇にある松明の火が照らすだけになっている。月の光はあまり強くないようだ。
「ここが…探検隊ギルドですか?」
「そうだよ。さ、中に入ろう」
それは建物というには非常に異様な形をしていた。建物全体がプクリンというポケモンの形をしており、そして入り口には、その腹に格子がはめ込まれている。それが夕闇の中で松明に照らされているのだから、不気味でしかない。
「スゥ〜…ハァー…うん、大丈夫。きっと大丈夫。…よし!」
フラムは深呼吸を何度か繰り返すと、足元にあるもう一つの格子戸の上に乗った。
「ポケモン発見!ポケモン発見!」
「誰の足型だ!?」
「うきゅう!?ぐうう………!!」
あの時のように潰されるような嫌な感覚。だけど、もう逃げない。絶対に。わたしは、探検隊になるんだ。
「足型は………足型はアチャモ!」
「よし、わかった。次!まだいるだろう?早く乗るんだ!」
止めていた息を解放して、全力で小さな肺の中に空気を取り込む。ほんの一瞬、たった数秒の出来事だけど、その間だけ何時間も経過したような濃厚な一瞬。疲労感に襲われるも何度か耐えて、格子の上から退ける。
「次はあたしの番だね」
チェルシーが格子の上に進むと、またさっきと同じ言葉が聞こえてきた。もしかしたら定型文なのかもしれない。
そうやってチェルシー、クオンと順調に終えて、最後にレンファがここに乗ることになった。
「ポケモン発見!」
「足型は?」
「足型…足型は………うーん…」
突然唸り声が聞こえたかと思うと、ぷっつりと声が途切れてしまった。格子を見下ろし、疑問に思うレンファ。
「どうした?早く足型を見るんだ」
「えーっと…た、多分リオル!」
しびれを切らしたのか、もう一方の声が答えを求めると、少し不安げな声で正解を導き出した。
「多分!?おいおい、足型を見てポケモンを判断するのがおまえの仕事だろ!多分てなんだよ多分て」
「だって…この辺じゃあまり見ない形なんだもん」
少し言い合いが続くと、今度はプクリンの方の格子戸が動いた。大きな音を立て、豪快に開く。
「まあ、怪しい者じゃなさそうだな。入ってよーし!」
プクリンの建物のなかに入ると、そこにはすぐに下に続くはしごがあった。いや、下に続くはしごしかない、という方が適切だろう。入れというのはこのはしごを降りろということだろうか。他に行く場所もないので、四人はそのはしごを降りることにした。



はしごを降りると、そこには広いスペースが待っていた。活気のあるポケモンたちに、壁に貼られた沢山の紙。多くのポケモンはその紙を見ていて、どこに行こうなどと話し合っている。
「ここがギルドの中ですか。良いところですね、活気があって」
「そっか…わたし、やっとギルドに入れたんだ…えへへ…笑顔が止まんないよ…」
様々な反応を示す彼らは、背後に立っているポケモンに気付いていなかった。どうやらそっちも彼らを探していたようで、彼らを視界に収めると近づいてきた。
「君たちかい?さっきこのギルドに入ってきたポケモンは。セールスとかならお断りだよ。さあ帰った帰った」
しかし、そのポケモンはいきなりその羽根で払うように追い出そうとしてきた。
話も聞かずにいきなりこんなことをされては腹が立たないわけがない。
「ちょっとアンタ!客人にその態度はないんじゃないの?」
「え、あ、ハイ…」
そいつはチェルのあまりの剣幕に気圧されて萎縮してしまう。極彩色の翼やその嘴から、鳥ポケモンである事は間違いないがそれ以上の事はわからなかった。
「チェル、ストップストップ。怒りたくなるのもわかるけど、まず話を聞いてもらお。ね?」
怒り心頭なチェルシーをなんとかなだめると、フラムは改めてそのポケモンと話をし始めた。
「あの、私たち探検隊になりたくてギルドに来たんですが、どうしたら探検隊になれますか?」
探検隊、という言葉を聞いた瞬間そのポケモンの目の色が変わった。
「も、もしかしてギルド加入希望者かい?君たち」
「あ、ハイ。そうです。それで___
「そうかそうか!なら早く言ってくれればよかったんだ!さあ、こっちに来てくれ。チームの登録を行うよ」
さっきまでの不機嫌そうな顔から一転、スマイルを見せながら嬉々としてギルド内を案内しようとする彼。フラムはそれを良しとしているみたいだが、後の三人からしてみれば引いてもおかしくないほどの手のひらの返しようである。
「あの、すみません。あれは一体どういうポケモンなんでしょう?」
レンファがこっそりとクオンに話しかけた。呆れた顔のクオンは、表情を元に戻すと腕を組みながら答えた。
「あれは鳥ポケモンのペラップ。あなたはそれさえわかれば十分なの。…悪いけど、いま少し不機嫌なの。私、ああいうタイプ嫌いなの」
少しぶっきらぼうに答えられてしまったが、確かにそれがわかればあとは別にどうでもよかった。種族がわからないのが問題なので、それがわかればあとは気にするものはない。
そうこうしているうちに、あの広間からさらに下に降りでまた別の場所に来た。今は少しだけ豪華な扉の前にいる。
「ここが親方様の部屋だ。チームの登録はこの中で行う。くれぐれも!失礼のないように。じゃあ、入るよ」
何か変なところで釘を刺された気がするが、苦笑いで返すしかなかった。ここの親方とはそんなに怖い人なのだろうか?一抹の疑問が頭の中をよぎる。
「親方様、トロンです。入りますよ」
扉をノックし、ゆっくりと扉をくぐった。そこには机越しに背中を向けているピンク色のポケモンがいた。あのポケモンが親方様とやらなのだろうか?とても怖くは見えない。
「親方様、新たなギルド加入希望者です。………親方様?」
トロンが話しかけても反応がない。後ろを向いたまま、こちらを振り向く気配がない。それでも、トロンは毅然とした態度で親方様の反応を待ち続けた。それから少しの沈黙の後、やっと親方はこちらを向いた。
「やあ!初めましてだね!僕がこのギルドの親方、フリーマン・レスティだよ。ほら、トロン。君も自己紹介して」
あまりにも突飛すぎる反応。早口についていけず少し戸惑う。
「あー、わ、私がトロンだ。まあ覚えておいてくれ」
と、簡単な説明をして終えた。
「それじゃあチーム登録しなくちゃね。この紙にチーム名とメンバー、それとチームリーダーを記入してね」
「チーム名、ですか。どうしますか?」
レンファは渡されたペンをクルクルと回しながら振り返った。チェルはそれを聞かれて少し考え始める。クオンは以下にも興味なしという顔をしている。
「じゃあさー、『ポケタンズ』ってどうかな!?」
「却下」
「ダサいわね…」
「それはちょっと」
「全員一致で否定!?」
嬉々としてチーム名を提案したフラムだが、あっというまに全否定されてしまった。それからも全員が納得できるようなものは出ず、トロンが少し苛立ち始めた時だった。
「では…レコード、はどうでしょうか」
「レコード?どうして?」
何度目かもわからないチーム名の議論がまた始まった。
「探検隊というのは、言葉通り未開の地や危険な場所を探索し、その場所がどういう所なのか知るために結成されたのでしょう?なら、その探検で得た物、知った物を後世のために記録する。そういう義務があるはずです。ボクたちが残した記録は、時を超えてその時を生きる誰かの糧になる。誰かを動かす何かになる。今はまだわかりませんが、そういった何かになりたいと考えたので、ボクはこの名前にしました」
何か特別らしいところもなく、ありきたりな名前。しかし、その裏にはしっかりとした特別な理由がこめられている。
どこにでもありそうな平凡だけど、自分たちだけの特別。
異論は、出なかった。
「なるほど…いいね!探検隊レコード!わたしすごい気に入ったよ!」
「レコード…悪くないね。今までの駄作と比べれば、はるかにね」
「………もともと、興味ないの」
クオンの反応は素っ気なかったが、それでもさっきまでと比べればずっとマシな表示をしている。
「そっかそっか。じゃあチーム名は『レコード』でいいね!登録登録………たぁーーーーーーーーーーーー!!!」
レスティが息を大きく吸い込むと、鼓膜が破れそうなほど大きな声で叫んだ。トロンはそれを予測していたのか、耳を塞いでいたが、四人はそれをもろに聞いてしまった。
「ふぅ…それじゃ、今日からよろしくね!」
レスティはニコニコと笑っているが、こっちは笑えたものではない。鈍器で殴られたみたいに頭がガンガンする。
「お、お前たち、大丈夫か?とにかく、ついてきてくれ。部屋に案内しよう」
トロンが苦笑いのままこっちに来いと言うが、なかなか辛い話だ。四人はふらふらとトロンの後についていった。



■筆者メッセージ
一言目に言いたいことがあります。

ごめんなさい

今更ながら気付きました。間が1話抜けていることに!
ええ、もう最低です。大バカです。話が繋がってないと思った方しかいないと思います。公開できる状態ではあったのでどうかお許しを………。
北海道在住者 ( 2016/06/08(水) 16:01 )