プロローグ
ゴロゴロ、ピシャーン!!
鼓膜をつん裂くような強力な炸裂音が辺りに響く。目を開けていられないほどの水滴が降り注ぎ、風は木を自由に振り回し、木の葉は辺りを飛び回った。嵐だ。
そんな中、不運にも移動する集団が居た。
「絶対に手を離すなよ!一回飛ばされたら、何処に放り出されるか分かんねえぞ!」
辺りに少し低い、青年の声が響く。それに合わせるように同意の声が幾つか聞こえた。
「雷が来るよっ!当たらないように気を付けて!」
もう一人、女性の声が聞こえるとその者達の近くに激しい閃光と激烈な爆音が轟く。雷が近くに落ちたのだ。
「うわっ!?危なかった………」
青年の声とは別に、声変わりしたてのような何処か幼い印象を持った、高くも無く低くも無い少年の声がした。
「おい!余所見をするな!そんな暇があるなら少しでも強く手を握れ!」
青年が叱咤すると、慌てて強く手を握った。その時だった。
___ドッゴォォオーーーーーン!!!!
なんの予兆も無く今までよりも、おそらく最も強力な雷が近くに落ちた。
「うわああああっ!!」
強力な電撃の奔流に巻き込まれ、少年は手を離してしまった!
しかし、力強い別の手が、何処かに行きそうになった少年の腕を掴んだ。そして、無理矢理に引っ張り戻し、再度手を握らせた。
「ありがとう、ごめん…」
「今は助け合わなきゃ俺たちまで助からない。第一、お前は必要不可欠な奴だ」
落ち着き払った声で、別の青年がハッキリと言った。少年も負けじと力強く首を振った。
瞬間、少年の顔は驚愕と焦燥、恐怖が入り混じったような表情を浮かべると、少年は掴んでもらったその手を払い、あろうことか助けてくれた青年達を遠くに突き飛ばしたのだ。
「おい!何をす___
その先は誰にも聞こえなかった。先ほどと同じ、或いはそれ以上の威力を持った雷がその少年目掛けて落ちたのだ。少年は体を痙攣させると即座に意識を失い、何処かへと落ちて行ってしまった。
「_______!!!!」
意識を失う寸前に聞こえた仲間達の声は、少年の耳には届かなかった。