第21話 戦いの後には
イジワルズとの激突の末に、勝利の二文字を掴み取ったレオパルド。ただ海斗がまたも大ダメージを負ってー
「いててて……もう少し優しくしてくれ」
ここは救助隊基地の中。先程の激戦をくぐり抜けた三人は、一時の休息に身を委ねていた。
海斗はベットに座り、甲賀は海斗に包帯を巻いている。甲賀本人も切り傷のせいで体に包帯を巻いてある。ティーエは毒と"まきつく"で消耗した体力を回復させる為、今は横になっている。
「今回も海斗さんは重傷ですね」
「うるせーやい」
戦いはレオパルドの勝利に終わり、イジワルズの連中はザコ御用達の「覚えてろよ〜〜!」と言ってどこかに消えてしまった。
その後、トランセルを探そうとした所、自分から出て来たのだ。そして呆気なく以来完了。基地でお礼などを言われたが適当に受け流し、治療に専念した。
「うう〜、疲れた〜」
横で力無く唸っているのは色々あって体力を消耗したティーエだ。正直、怪我の範囲で言えば一番少ないが、それでも大分疲労はあるのだろう。
「ははっ、あんなん、チョロいチョロい!俺の周りにはアレよりも強い奴なんざァ、そりゃあゴマンと……」
「兄さんの物差しで図らないでよ。たたでさえ規模が大きいんだから」
「ちょっと待て、誰だあんたら」
ティーエの隣には謎のサンダースとブースターが居た。
甲賀は少しなら知っていたが、海斗はまったく知らないため、今回二人について聞いたのだった。
「えっと、こっちがお兄ちゃんのロイ」
「おう、よろしく」
「こっちがお兄ちゃんのレイト」
「よろしく」
ここでロイが少し困惑したような表情を見せた。
「なんだ、俺達の事言ってなかったのかよ」
「タハハ、ごめん、ずっと言いそびれてて……」
「相っ変わらずだな。言う場所逃すと黙ってんのは」
極めて呆れた様子なロイ。
「少しは自分の事話したら?そっちの二人、名前以外殆ど知らないでしょ?」
「ヘタれってことはしってますよ」
「僕はビビりだと思います」
「認識の仕方が酷い!」
「ハハハハハハハ!ビビりにヘタれか!こりゃ言い得て妙だな!」
「兄ちゃんまで!?笑わないでよ〜!」
「泣くぞ?ほら泣くぞ?ほーら泣くぞ?」
「ムッカ〜!!」
「やべ怒った。逃〜げろ〜」
言うが早いかロイの姿はもう見えなくなっていた。
「待て〜!このバカ兄〜!」
ティーエもまた、電光石火で追いかけて行ってしまった。
「あ〜あ、行っちゃった。ごめんよ、いつもってわけじゃないけど、大体ああなるんだよね」
レイトは諦めたような顔で二人の背中を見送った。
「俺は別にいいと思いますよ。ティーエのあんな嬉しそうな顔、俺は見た事ないし」
二人して外でじゃれあっている姿は、何とも、微笑ましいものがある。
「そう言ってもらえると助かるよ。これからもティーエのこと、よろしくね」
レイトは海斗に向かって頭を下げた。
「頭は下げないでくれ。俺はあいつに何かをした覚えはない」
レイトは小さく笑った後未だじゃれあう二人をどこか遠い目で見つめた
「ティーエは、僕の、いや、僕ら兄弟の希望なんだ。あの娘には真っ直ぐ生きてほしい」
レイトの目には悲しみと喜びが混ざったような、複雑な感情が海斗には見えた。
「一つ聞いていいですか?」
「何だい?」
甲賀がレイトを呼んだ。甲賀の顔はどことなく曇っているようだ。
「どうして、ティーエさんがあなた方の希望何ですか?」
「その事は今話すべきじゃないね。時が来たら伝えるよ」
話をはぐらかしたレイトはそのままじゃれあってる二人に近づき、げんこつをした。彼はブースターなので攻撃力が高い。殴られた二人は頭を抑えて震えている。
「そろそろ止めてよね」
凄く冷たい声でそう言った後、ティーエを抱きかかえた。
「僕がティーエの面倒を見るから」
こっちに歩いて来ようするレイトをロイが止める。
「おい待て、久し振りにティーエに会ったんだ。もう少し俺との絡みがあってもいいだろ」
「僕だってティーエに会うのは久しぶりなんだ。最初に会った時は兄としての尊厳を守る為に我慢したけど、もう知らない。僕はティーエが好きなんだ」
「俺だってティーエのことが大好きなんだよ!この気持ちは誰にも負けねぇ!」
「僕だって負けるものか!この思いは兄弟の中でも一番強いと思うよ!」
「ンだと〜!じゃ、お前、ティーエの弾除けになって死ねるか!?」
「弾除けどころか、ミサイル除けにだってなってやる!兄さんはどうなのさ!」
「当ったり前だ!ティーエの為に死ねるならこの首切り飛ばされたっていいぜ!」
「僕はティーエが生きていてくれるなら原型を留めない肉塊になったっていいね!」
「俺だって__」
「僕だって__」
ティーエそっちのけで喧嘩する二人の間からティーエがよろよろしながら歩いて来た。
「大丈夫か?」
「うん、なんとかね……」
ティーエがいない事にすら気づかない二人を、海斗は甲賀と共に生暖かい目で見守った。
その喧嘩を見て、思わず洩れた言葉は甲賀と重なる事となった。
溜め息のち、
「バカ兄弟」