第20話(3) 決着、イジワルズ 〜side 海斗〜
とうとうイジワルズと戦う事になったレオパルドの面々。それぞれの思いを胸に決着を望む。勝つのはイジワルズか、レオパルドかー
鬱蒼と茂る木々の中、森は異様な程静まり返っていた。普通なら、鳥ポケモン達の囀りが聞こえ、虫ポケモン達もおしゃべりをしている時間帯だ。ただ、今日は様子が違った。鳥も虫も、果ては風に流され音を出す草達も、黙り込んでいる。
すると突然、森の外れの隙間から自然が豊かなこの場所では、不似合いな爆発が起きた。煙の柱が立ちのぼり、不規則な地響きが何度も起こる。その全ての原因はとある救助隊同士の衝突に根付いていた。
*
「らぁ!掌雷!」
「ウゲゲッ!あ〜ぶね」
「剣技、十二月が一つ、如月!」
「アラ、見切りよん」
「え〜い!電光石火!」
「あらよっと!残念、おしかった」
突き出した手のひらは難なく避けられ、多数の斬撃波は軽々と見切られる。ティーエの突撃も、そう簡単には当たらなかった
海斗はゲンガーと。
甲賀はチャーレムと。
ティーエはアーボと戦っていた。
〜side 海斗〜
「そんな遅い攻撃、当たんねぇぜ!ケケッ!」
「くそっ!ちょこまかと…!」
意外と速いゲンガーの動きに翻弄され、一向に技が当たらない。このままじゃジリ貧にしかならない。
「だったら………!」
ここで海斗は攻撃を止めた。それどころか動かなくなり、目をつぶっている。ゲンガーはそれをチャンスだと思い攻撃を仕掛けた。
「シャドークロ__」
「掛かったな!雷パンチ!」
誘いの隙。わざと相手に攻撃させ、それに的確に反撃をするというそう簡単にはうまくいかない技だ。隙を作るから、もしかしたらこっちが攻撃を受けるかもしれないのだ。
雷パンチはゲンガーを宙に殴り飛ばした。
「残念でした!うまくお前が乗ってくれてよかったぜ!」
「ウゲゲ〜!嵌められた〜!」
宙に舞いながら悔しそうな顔をするゲンガーに追撃する。
「電動球!」
海斗の手に黄色い球体が出現し、それを打ち出した。
「ウゲゲゲゲゲゲ〜〜〜!!!!」
空中で電気の塊を食らったゲンガーは海斗の目の前に落ちてきた。そして動かなくなった。
「やっぱ弱え〜でやんの」
ゲンガーを倒して余裕が出来た海斗は、二人はどうなってるかと思い、なんとなく見た。
「なっ…!」
甲賀の方は大丈夫に思えたが、ティーエが捕まっていた。苦しそうな顔をして必死にもがいている。
「ティーエ!今助けてやるからな!!」
ティーエを助ける為に駆け出すが、その足はすぐに止まる。自分のいる所が急に影に覆われた。上を見れば、倒したはずのゲンガーが海斗に向かって飛びかかってきていたのだ。
「余所見とは、いい度胸してんじゃねぇか!ケケッ!」
「今はてめぇなんかに構ってらんねぇんだ!」
普通のパンチでゲンガーを殴り、またも吹っ飛ばした。
「ウゲゲゲゲゲ〜〜!!」
「ティーエ!」
また走り出すが、右頬を殴られたような感覚が海斗を襲う。吹っ飛ばされながらも向こうを見るが、なぜか誰もいなかったのだ。受け身を取り、体制を整えるが、頭の中の疑問は解けない。
すると、突然ティーエの方から悲痛な叫びが聞こえた。何が起きたと思い、顔を向けると、アーボが体についた火を消そうとのた打ちまわっていた。正直なにが起こったかよくはわからなかったが、ティーエが無事ならそれでいい。今は自分に起きたことを考えなければならない。
海斗はゆっくりとゲンガーに向き直り、睨み付けた。
「お前、俺に何をした?」
ゲンガーは不敵な笑みを浮かべた。
「ケケッ、教えるかよ、そんなこと」
思った通りの答えが返ってきた。
「ならいい」
電光石火で距離を詰め、ゲンガーをぶん殴る。
「体に聞く」
殴られ、よろけたゲンガーに今度は蹴りを叩き込んだ。
「ウゲブゥ…」
「まだダウンするには早いぞ」
前のめりになった所を殴り、後ずさった所に肘を入れ、引き込んだ左手で殴り、顔の真ん中に膝蹴りをし、最後に後頭部に手を組み合わせ、振り下ろした。
豪快に地面に叩き付けられたゲンガーはそのまま気を失ってしまった。
結局自分が吹っ飛んだ理由はわからず閉まいだった。
「少し、休む…か…」
実は殴り続けている間、ゲンガーを殴った所と同じ部分に痛みを感じていたのだ。ずっと無視していた痛みは尋常じゃない程溜まっていたらしい。体が動かない。
「……なっさけねー。毎回ボロボロじゃん、俺……」
勝者、海斗。勝利、レオパルド