第17話 あやしいもり
先日、イジワルズという腹の立つ救助隊をぶっ飛ばしたレオパルドの面々。今日も依頼が来るのだがー
「ふわあぁ〜……あふ」
私が目を覚ますと、まだ誰も起きていなかった。今は多分、朝と昼の間だと思う。大体はカイトかコウガが起きてるんだけど、二人共眠っているのは珍しかった。
「じ〜〜〜……………」
私?今カイトの顔をスッゴい見てる。寝起きでぼーっとしてるからかな。飽きない。
なんて思っていたらカイトが起きた。ちょっと怖かったのは目をつぶった状態で体を起こしたことかな。
「おはよう、カイト」
カイトの目が半分開かれ、こっちを向いた。
「………おはよう」
それだけ言うとカイトはまた前を向いた。カイトは目覚めが悪いのかな?
「よいしょ…」
ベットから降りて外に出る。鳥ポケモンの囀りと走り抜ける風が私の体をくぐり抜けていく。思いっきり伸びをして、[今]という時間を存分に楽しもうと思った。
その時だった。
「ティーエー!」
聞き覚えのある声が私を呼んだ。カイトやコウガの声とは違う、もっと大人びた声。それは過去の記憶を一気に思い出す物。
「もしかして__」
振り向いたその先にはブースターとサンダースがこっちに向かって歩いていた。
「よう!こんな時間にお目覚めか?」
「久しぶりだね!ティーエ」
私の兄、レイトとロイだ。
「レイト兄ちゃん!ロイ兄ちゃん!」
歩いている二人に走って行って、飛び付く。衝撃で倒れた二人は、驚きの声を漏らした。
「いててて…元気そうで何よりだ」
「あたたた…強くなったなぁ、ティーエ」
「うん!!」
私はとても幸せな気分になった。
*
「……それで、今に至る。こんなかんじかな」
二人には今まで起きた事、やった事を話した。記憶喪失の元人間という異常な経歴を持つポケモンに会った事。救助隊を結成したこと。そのポケモンがリーダーということ。ハガネやまに救助をしに行った事。他にもいろんな事を話した。
「へぇ〜、お前が救助隊か…」
「あんまりムチャしたら駄目だよ」
「わかってるよ。でも強い仲間が居るから大丈夫」
そう言って私は笑った。二人も笑った。
今の私に言える事。それは、幸せだと言うこと。
「そう言えば、何で二人共ここに?」
ふと思った事を聞いてみた。
「ああ、ジストの奴から聞いてな。いてもたってもいられなかった」
「ジストから連絡が来るのは珍しいからね。いつも「聞かなかったから」で大事な事も教えてくれないからなぁ」
お姉ちゃん変わってないなぁ……。
「ま、そういうこった。俺達もしばらくはポケモン広場に居るから、何かあったら直ぐ呼べよ。最近運動してねぇから鈍っちまってよ。あー、気持ち悪ぃ」
「救助隊は乱暴者じゃないよ兄さん。仕方なく戦う事もあるだろうけど、ティーエは戦いが嫌いじゃないか」
二人は、何か話しながらポケモン広場の方に歩いて行った。
「さて、戻ろうかな」
私は兄ちゃん達を見送って、基地に戻ろうと外に背中を向けた時だった。
「ティーエさん!」
「え?」
何事かと振り向くと、一匹のキャタピーが居た。
「君はあの時の…」
「プルーフ・バグズっていいます。あのトランセル君を助けてください!」
「え?」
話しが急過ぎてわかんないや。とりあえず救助依頼って事でいいのかな?
「近くの森で遊んでたら、いつの間にかトランセル君がいなくなっちゃったんです…」
そんな森は閉鎖するべきだと思う聞いたこの頃。
「ほお〜、そいつは大変だな!ケケッ!」
キャタピーの後ろには昨日見た三人組みが不気味な笑いを携えてやって来た。
「君達………懲りもしないでまた来たの!?いい加減にして!シャドーバークアウト!」
「ケッ、効かねぇよ。シャドークロー!」
怒っていた時に使った、自身が使える中でもかなり高い威力を誇る技がゲンガーのシャドークローによって簡単に切り裂かれてしまう。
「そんな……」
「ちっちっちっ、人の話しは最後までし〜っかり聞くもんだぜ!」
ゲンガーは一息ついて、またいつもの顔に戻った。
「トランセル君は俺達が助けてやるよ」
ゲンガーの不気味に見えた笑みは、人の依頼を横撮りしようとする時に浮かべるなんともいやらしい笑みだった。
「ちょっと、キャタピー君は、私達に依頼してるんだよ!」
これは正論だ。キャタピー君は最初にここに来たみたいだし。
「お前達の実力で助けられるとでも?第一お前の技は今俺に相殺されたばっかりじゃないか」
「うぐ………」
これも正論だ。確かに私は弱いと思うけど………
「悔しいなら、俺達より先にトランセル君を助けてみな。ま、何百年かかっても無理だろうがな!ケケケケケケッ!!」
悔しかった。今ここで嫌な奴すらぶちのめすことが出来ない自分に腹が立つ。
私が黙って震える事しか出来なかった時、私達の基地が一瞬光ったかと思うと、一つしかない入り口から光線の形をした電気が飛び出した。
「ウゲッ!?」
それは正確にイジワルズの三人を撃ち抜いた。
「……………」
「……………」
私もキャタピー君も何が起きたが理解出来ず、固まって基地の入り口を見ていたら、今の現象の原因となる人物が出て来た。
「人が寝てるのにうるっせぇんだよ。つか、死ねっつったのに何で生きてんだてめーら」
滅茶苦茶な暴言を息をするかのごとく吐き出したのは救助隊レオパルドリーダー、海斗だった。
「カイト!」
「カイトさん!」
「おう、何やってんだ?」
ただ、寝起きなので頭がボサボサになっていたが。
*
「ふーん、大体わかった。ん、その依頼引き受けた」
「本当ですか!?」
今、プルーフ君がカイトに事情を説明した所。カイトもこの依頼は受けようと思っていたみたい。いつもより目つきが違ったし。
「よし、とっとと行くか」
「ありがとうございます。それではお願いします」
「任せとけって。受けた依頼が出来ないなんて、救助隊として失格だからな」
本人にその気は無いのだが、地味に格好付けてるように見えるのが残念だ。今のセリフを聞いてプルーフが更に救助隊に憧れしまったのは言うまでもない。
「さて、と」
「行こう、カイト!あんな奴らに負けてらんないよ!」
直ぐにでも出発出来るように素早く荷物をまとめ、その場で小さく飛び跳ねる。それはティーエ自身の意気込みの証でもあった。しかし_
「甲賀を起こすか」
その一言でずっこけてしまったティーエだった。
因みにイジワルズの三人は「覚えてろ!」と言うちんけな悪者御用達の言葉を言ってどこかに走り去って行った。トドメをさせなかったと残念がる海斗を忘れてはいけない。