第12話 ハガネやま
依頼を成功させ、家族とも再会を果たしたレオパルドの二人。そんな中、新たな依頼が舞い込んで__
〜side 海斗〜
「………………………」
何のことはない。今起きたばっかりなんだ。
イマイチ働かない頭を無理やり叩き起こし、ベットから降りる。みんな思い思いに過ごしていて、ティーエはまたジストさんと話しをしていた。ただ、ふと疑問に思ったことがある。
「なぁ、甲賀はどこだ?」
俺に気づいたらしくティーエが振り向いた。
「あ、おはよー。甲賀なら外だよ?」
ん、まあ、それだけだ。
「にしても助かったわ。ありがとう」
いきなりジストから話し掛けられた。
「え、なにが?」
「ほら、依頼よ。依頼。あなたが受けたんでしょ?」
「そうですけど…」
「だったらお礼を言うのは当たり前よ。ありがとう」
「どうも……」
俺じゃなくてあいつが助けたんだけどな。
「さ〜て、仕事すっか!」
大きく伸びをし、基地を出た俺はとりあえずポストを覗いてみた。
しかし、ポストは空っぽだった。なる程、これはティーエじゃなくてもなんとなくがっかりくる。
「しゃ〜ねぇ、掲示板見に行くか…」
出だしがこんなじゃテンション下がっても仕方ねーよ。
何はともあれ、依頼を受けに一向は掲示板へと歩くのであった。
〜side out〜
今日もまた、1日の始まりを告げる風が流れて行く。草はこすりあい不思議な音をたて、木々もまたお喋りに勤しむ。
そんな中、不似合いな程騒がしい二人と、それを見守る二人がいた。
「だからこっちの方がいいじゃねぇか!」
「こっちの方が良いに決まってるでしょ!」
そしてギャーギャー…と言うようなやり取りが先程からずっと続けられている。正直、不毛だ。
「これっていつもの事なの?」
「たまに、だと思いたいです」
「ふーん、それなりの頻度で?」
「はい」
なんか二人共興奮し過ぎて依頼とは全く関係ない事まで言い合ってる始末。そろそろ決めて欲しいので、止めようとした時だった。
「あのー、ちょっといいですか」
「え?」
聞き覚えの無い声が突然聞こえた。ただ、辺りを見渡しても周りにはジストとバカ二人以外誰もいなかった。
「きのせいかな…」
また歩き出したらまた声が聞こえてきた。ただやっぱり誰もいないのだ。
「いったいなんなんだろう」
「もしや姿が見えてない?…それは失礼しました!」
聞こえたかと思うと、突然足下の土が盛り上がり、甲賀の顎にクリーンヒットした。
「んがっ!?」
がつっ、と嫌な音をたて甲賀は吹っ飛んだ。
〜side 海斗〜
「だからよ…ん?」
ティーエとの言い争いを中断し、変な鈍い音が聞こえた方を見ると、甲賀が目を回して倒れていた。
「甲賀!?」
急いで駆け寄ると、近くにの地面から突き出た三本の茶色い棒が甲賀の近くにあった。
俺は瞬時にそいつがやったと判断し攻撃を仕掛けた。踏み切って高く飛び、パンチでもお見舞いしてやろうと思った。
「甲賀に何してくれてんだ!……あ?」
なんと空中で動けなくなってしまった。
「あ?なんだこりゃ。動けねぇ」
「”サイコキネシス”よ。少しは落ち着きなさい。」
どうやらジストに止められたようだ。
「ふぅ、びっくりした。それじゃ本題に入りますね」
そう言って棒、ダグトリオは話し始めた。
「えーと、実は昨日の地震があった後、私の息子が襲われまして、高い山の頂上に連れ去られてしまったんです。そんな所私じゃ登って行けないので、レオパルドの皆さんにお願いしに来たのです。私の息子を攫った奴はエアームドって言います。強いやつなんで気をつけてください。ではっ!」
一方的に喋った後さっさと土の中に消えてしまった。全員が呆気に取られ、断るどころか何かを言う暇さえ無かった。
「……い、行くか」
そう言うとまた地面が盛り上がり、ダグトリオが出て来た。
「言い忘れましたが、場所はハガネやまって所です。何卒よろしくお願いします。ではっ!」
まさに電光石火。またもや逃げられた。
「………………………」
「………………………」
もう、呆気に取られ過ぎて何かを言う気力も無かった。なので俺達は黙ってハガネやまって所に行く事にした。
海斗はこう思っていた
「(やれやれ、仕方ないか)」
ティーエはこう思っていた。
「(許せないな…)」
甲賀はこう思っていた。
「(どうしてそんな事をしたんだろう)」
ジストはこう思っていた。
「(これは私も行った方がいいのかな?)」
それぞれがいろんな思いを胸にハガネやまに向かって歩き出した。
<ハガネやま>
「到着。さてと」
今、俺達はハガネやまの麓に居る。登ってないから当然だな。登る前に少し休憩して、完全な状態で登るためだ。思い思いの場所に腰を掛け、とりあえず一息ついた。
数分程で休憩を止め、入ってくださいと言わんばかりにデカい入り口からはハガネやまに進入した。
<ハガネやま 1F>
「掌雷!」
「シャドーボール!」
向かって来る敵を掌雷で吹き飛ばし、シャドーボールでトドメを指す。ティーエとの連携プレイで今の所敵無しの状態だ。
「良し、全滅完了」
「やっぱりすごいですね」
わからないけど、甲賀にいきなり褒められた。…のか?
「何が?」
「だって海斗さん、電気ショックとか殆ど使わないで、物理技だけしか使ってないじゃないですか」
「電気ショックより掌雷の方が出が早いんだ。あんまり時間掛けたくねぇし」
簡単な説明をするとまた次の階を目指す。丁度階段があったので、先に進む事に
した。最初こそてこずって、進めなくなったりしたが、大体ピンチになるとジストが助けてくれるので、大した事も無く半分位まで登れた。
…余談だが、ジストはむちゃくちゃ強かった。まー強かった。すげー強かった。
<ハガネやま 6F>
苦戦するかなー、とか思ってたのが嘘みたいだ。びっくりするくらいすんなりここまで来てしまった。
「ジストさんって、ホント強いんだな」
「あら、有難う」
「当たり前だよ。私のお姉ちゃんだもん!」
実を言うと、殆どジストの無双状態だったのだ。おかげで俺達は戦わないですんでるし、本人も疲れた様子など全く無い。羨ましすぎる。
「ジストさんはどこに住んでるんだ?」
「どこって事は無いわ。ずっと旅をしてるもの」
「お姉ちゃん、みんなどこに居るとか、知ってる?」
「うーん、クラブとステンなら知ってるけど、後はさっぱり」
そう言ってジストは首を振った。
と言うかここ不思議のダンジョンなのにこんなにのんびりしてていいんだろうか。
「水鉄砲!」
いきなり甲賀が技を出したかと思うと、通路の先に居たヤジロンを倒した。
「良し、効果は抜群だ!」
「「「おお〜〜」」」
「…照れるなぁ〜」
甲賀は頬を染め、頭をかりかりとかいている。
ただ、そうだらだらする訳にも行かないので、合令をかけた。
「みんな、さっさと行こうぜ」
階段を見つけた俺達は次の階へと登って行った。
その後もトントン拍子で階段を見つけ、大きい戦闘も無く頂上についた。
<ハガネやま 頂上>
「ここか、ディグダが居るのは」
尖った岩に囲まれた頂上にはエアームドの姿は無く、静まり返っていた。
「…?あれじゃないですか?」
甲賀が指した指の先には、半分地面に埋まったディグダと思われる物体があった。
「かもな、ちょっと行ってくる。待っててくれ」
俺は一人でディグダ(多分)に近づいていく。その時だった。
「あなた、一体何者ザマス!」
突然変な言葉が上空から聞こえてきた。
「っ!誰だ!」
上を見上げるとエアームドがすぐ近くまで来ていた。近くに降り立った為、風圧が強かったが、なんとか持ちこたえた。
「あなたは一体誰ザマス!私になんの用ザマス!」
何故かは知らないがエアームドさん、相当お怒りの御様子。
戦う事になったらどうにも、面倒なので、慎重に言葉を選ぶ。
「あんたがディグダを襲ったのは本当か?」
「そうザマス!あいつらが毎日地面を掘り進むから地震が起こるザマス!もう怖くて眠れないザマス!」
「ディグダが進むだけで地震が起こる訳ないじゃないか!」
「現に起きてるザマス!逆らうならあなたも容赦しないザマス!」
言うが早いかエアームドは襲い掛かってきた。
「うわっぶねぇ!いきなり何すんだ!」
「問答無用!」
エアームドは高速で”つつく”を繰り出してくる。それを紙一重でかわし続ける。
「カイト!」
「海斗さん!」
影で見ていた二人が飛び出し、甲賀はつつくを所持している剣で受け流し、ティーエはシャドーボールを撃った。しかし、空を飛ぶことであっさりと避けられてしまう。
「いいザマス!まとめてかかって来るザマス!」
「みんな、行くぞ!」
「わかった!」
「はい!」
今、救助隊レオパルドとエアームドの戦いが始まった。