第9話 自由の翼
小さな森の二人組は依頼完了。一方海斗は、謎のグラエナに戦いを挑まれて?ー
<ペリッパー連絡場>
「どうもありがとうございます!これ、お礼です」
ティーエは300ポケとオレンの実を2つ貰った。
「それじゃ、私はこれで。失礼しました」
今回の依頼主、ブーバーは去っていった。…と言うかブーバーなら1人でも取りに行けたと思う。効果抜群技も使えるだろうし。
「ねぇ、コウガ」
「なんですか?」
お互いの声を聞く為に見つめ合う。変な意味は無いからね?
「カイトが戻ってきてないから、しばらく待とうよ」
「そうしますか」
ティーエ達は掲示板から少し離れて、芝生の上に寝転んだ。潮の香りがする海風を胸いっぱいに吸い込むうちに、二人は眠ってしまった。
〜side カイト〜
「待てって言ってるじゃないかぁぁぁぁぁ!!!!」
状況説明してる暇なんてねぇ!さっきアイツが「戦え」って言った後、破壊光線ドッカンドッカン撃ちまくってんだぁぁぁぁぁ!!
「ええい、逃げる…なっ!」
「逃げるに決まってんじゃねぇかバーロォォォ!!」
もうイヤだ!ちくしょう!何でこうなったかと言うとだな…
〜数分前の事〜
「オレと戦え」
「はい?」
え〜っと、どゆこと?俺なんかやっちゃった?
「貴様が先程倒したポチエナがいたろう?」
ヤヴァイ!本能的に何かがヤヴァイと言っている!
「あいつは俺の弟だ」
予感的中だぜ、こんにゃろぉぉぉぉ!
「よって、貴様を倒す!」
「意味わからねぇーー!でもすんませんしたぁーー!」
俺は全速力で逃げ出した!
んで、追いつ追われつ、逃げ回ってるんだな。正直倒さなきゃ何時までも追って来るだろうし。でもよ…
「(さっきから睨み付ける連発してんだよぉぉぉ!)」
やたらと目が光ってんだよ!さっきから!
「ふっ、もう逃げられんぞ」
「何だって!?」
息の切れた体辺りを見渡す。俺が今居る部屋は通路が一本しか無く、言わば行き止まりだった。唯一の出口は奴の後ろにある。
「しまった!」
「もう遅い!破壊光線!」
「のあーーーーー!」
グラエナから放たれた破壊光線をギリギリで躱す。
「チッ、しぶといな…」
「だーっ!もう知るか!反撃するからな!電気ショック!!」
俺の体から放出された電気は山なりに向かっていった。しかしグラエナは動こうとしなかった。避けなかったと言った方が正しいかもしれない。
とにかく、俺の攻撃を身じろぎせずに受けたのだ。
「グウオッ…」
苦い顔をしながら、俺の攻撃を受け続けるグラエナ。数秒後、その体は地に倒れ伏した。
「倒した…のか?」
普通ならありえない。電気ショック一発でグラエナがやられるなんて、聞いた事が無い。
瞬間、グラエナの目が開いた
「やはりやるな。だが、まだ終わらん!」
身を翻し、グラエナから離れる。
「倒れてくれたら嬉しかったけどな」
軽口を叩いても現状にあまり変わりは無い。
「そう簡単にはやられはせん」
睨み合う二人の間に、沈黙が流れる。
「どうした、来ないのか?」
余裕たっぷりの発言に若干イラっとしながらも、気づかれないように着々と作業を続ける。
「お言葉に甘えて…これでどうだ!」
密かに作っておいた電気の通路に思いっ切り電気を流し込んだ。
先ほどよりも強力な一撃がグラエナを襲う!
「がああああああ!」
断末魔とも取れる声がグラエナから発せられた。電気の放出を止めるとグラエナは動かなくなった。
「今度こそ、やったか?」
動かなくなったグラエナに変化が現れた。煙がでたかと思うと、何やらぬいぐるみみたいになった。
「え?」
唐突の出来事に体の緊張感が一気に切れた。それが命取りだった。
「破壊光線!」
「!?」
背後から放たれた破壊光線は真っ直ぐに俺に向かって来た。
「うわあああああぁぁぁぁ!!!!」
「ハッ、カイト!」
私は飛び起きた。嫌な予感が光りの速さで駆け巡る。胸の鼓動は張り裂けそうなほど速くなり、背中は汗で濡れていた。
「カイト………」
私はひたすらに祈った。
「ああ……」
ここは、どこだ…
今俺はどこかで横になっている。水中とか、水面にいるみたいなプカプカと浮かんでる感じだ。目を開けようとするが、動かない。それだけじゃない。何一つ動かす事が出来ない。
どうしようか考えていたら、どこからか声が聞こえてきた。
「汝、力を求めるか?」
声のトーンは低く、なんとなく凄みがある。
「誰だお前は、此処はどこだ」
体動かねぇとか思ってたけど、口が動いた。口だけが動いた。後は全くだ。
「何時も汝の傍に居る。再び問う。汝、力を求めるか?」
どうしてこんな事になっているのか考えてみる、俺は確かグラエナの破壊光線に当たって……
「うおぉ!!俺、死んだ!?」
「大丈夫だ、生きている」
あ…はい、そうですか。なら別にいいか。本題に戻ろう。
「力って何だ?」
「汝は我と契約を交わす事で、我が宿す力を使用する事が出来る。その力は必ず、汝の役に立つだろう」
「へぇ……」
悪くない話しだが、向こうにメリットはあんのか?…まぁいいか。コイツがどんな奴かは、声で分かる。コイツは多分いい奴だ。
「わかった。契約ってのは、何か必要なのか」
自分が契約を交わす事に肯定の意を示すと、なんとなく喜んでるような気がした。見えてないから実際はわからないが。
「ならば、今から契約の儀を始める」
「俺はどうすればいい?」
「何もしなくていい。暫く動かないで欲しい」
言われた通り動かないでいると、何やら変な呪文っぽい物が聞こえてきた。
「古代神器が一つ、[深緑の外套]は命ずる。我は今この者を主とし、混沌より這い出て新たなる力を授けん!!」
――刹那、視界に光りが満ちた。
「ふん、やっと倒れたか…みがわりを見抜けなかったお前の負けだ」
相手が倒れた事を確認し、その場から離れようとした。
「おい、どこに行くつもりだ?」
突如として聞こえた声に驚き、振り返ると、
倒した筈のピカチュウが立っていた。ボロボロだったが。ボロボロだったのだが!!
「ナレーション煩いぞ」
おっとと、メタ発言は控えなければ。
「何を言っている。そして何故あれを食らって立てるんだ」
こういう冷静な奴が動揺してる所見るのって楽しいなぁ。
「実際死んだと思ったよ。ま、生きてたけどな」
余裕たっぷりで話す。どうもイラッときたようだ。
「だったら今度こそ息の根を止めてやる!」
グラエナはピカチュウに飛びかかった。が、あっさりとよけられてしまう。
「残念。じゃ、本気でいくぜ!」
俺はアイツに教えてもらった[解放の唄]を唱えた。
「力を使いこなせるかは主次第だ。懐かしい友にも会えた。さぁ、存分にやってみろ!」
「
高く/
飛く/
空を目指し/
早く/
速く/
雲間を駆ける/
我が手に力を/
我が背に翼を/
時代に埋もれた古代の遺産/
封じられたその力を/
暗き闇から解き放て!!発動ッ、古代神器が一つ、
自由の翼!!」
呪文を唱え終えると、何時も着けているあのマントが、
白く輝く翼となった。
変化した反動で体が宙に浮く。
「さぁ、反撃だ!」