第6話 メンバー加入
見事くっついてしまったコイル達の救助に成功したレオパルド。しかし途中で助けたワニノコは一体何者なのかー
<電磁波の洞窟>
「ヨカッタ!体ガ離レタ!」
「コレデ自由ダ!」
「ヨカッタナ。オ前達」
「チッ…アノママデイレバイイノニ…」
二人の前にいるコイル達は思い思いに喜び合っている。
途中変な言葉が聞こえたのは全力で無視する事にした。
「君達ガイテクレテ本当ニ助カッタ。心カラ感謝シテイル」
コイルの中の一人が一歩前に出てお礼を言う。
「少ナイケド、モラッテクレ」
コイルはポケと何かの種を手に持っている。
「ありがとう。大事に使わせてもらいます」
ティーエはお礼の品を受け取った。
「ソレジャ、ミンナ。帰ルゾ」
「サヨナラー」
「ジャーネー」
「マタ合オウ!ハッハッハッハッ!」
「「「ナニヤッテンダ」」」
「…ゴメンチャイ…」
コイル達は、馬鹿な事を言い合いながら自分達の住み処に帰って行った。
「初救助成功だな、ティーエ」
「そうだね」
ティーエは大きく息を吐き出し、安堵の表情を浮かべる。
「ドキドキした。救助、上手くいって良かった…」
「大丈夫だ。諦めないなら失敗にはならない。救助に上手も下手もないだろ」
「…うん、そうだね!」
ティーエは満面の笑みをカイトに見せた。その顔を見てカイトは照れくさくなったのか外方を向いてしまった。平和な時間が流れていた。
「あの〜」
「「え?」」
カイトとティーエの声がハモる。
「僕、どうしたらいいですか?」
そこには、さっきまで追いかけられていたワニノコがいた。
<救助隊基地前>
〜side カイト〜
「ここが、ですか…」
ワニノコは俺達の救助隊基地を見て目を輝かせている。どうやらこいつもこの場所が気に入ったらしい。
「気に入ったか?」
「…とっても」
「ねぇ、とりあえず中に入ろう?」
ティーエに促されて俺は基地の中に入った。ティーエもすぐに来たが、ワニノコは躊躇してなかなか入ろとしない。
「早く来い」と言ったらテクテク歩いて来た。
<救助隊基地内>
「ここが基地の中だよ!」
ティーエが嬉しそうにワニノコに話し掛ける。ワニノコは苦笑いをしていたが。
「(ま、見ればわかる事を言われてもな)」
当然だ。基地内に入ったのに「ここどこ」って聞くアホはいないだろう。
「あのさ、色々聞きたい事があるけど、いいか?」
ワニノコはどこかぎこちない表情で「どうぞ」と言った。
「一つはあんたの名前を教えてほしい」
ワニノコは少し間を置いて、黙って頷いた。
「僕は、影虎 甲賀です」
「カゲトラコウガ?なんかカイトみたいだね!」
ティーエはあの時のように笑い出した。俺は弱い電撃を当てて黙らせる。
「人の名前を笑うな」
「…ふぁい」
電気で毛が可笑しな事になっているのを横目に見ながら、甲賀にまた質問をする。
「アイツは気にしないでくれ」
「扱いが酷い!」
「そんな事より…」
「無視された!」
なんかもう効果音でガーンって聞こえそうなくらいティーエがショックを受けている。
「聞きたい事はまだあるけど、いいか?」
「結局無視するんですね…別にいいですけど」
「どうしてあんな所にいたんだ?」
「言えません」
あまりの即答っぷりにズッコけてしまう。
すぐに体制を立て直してツッコむ。
「何でだよ!!」
「その理由も言えません」
またズッコけた。
「そこら辺は詮索しないでもらえると助かります」
「…わかった」
これ以上は頭が痛いのでもう聞かない事にする。
その後も質問を続け、わかった事をメモしていく。
名前:影虎甲賀 かげとらこうがと読むらしい。
性別:男 だそうだ。見ればわかるな。
歳:19 意外と俺といっしょ。俺も19なのだ。
好きな物:野菜 全般好きらしい。聞いといてなんだが必要か?
嫌いな物:特に無し 好き嫌いが無いのはいいけど、必要か?
特技:気配を消せる 忍者かよ。いつの間にか出来るようになったらしい。
「これくらいか。最後は…」
最後に甲賀が手に持っている物を見る。
「その剣はなんだ」
彼の手には、白く輝く謎の剣があった。
「拾い物です」
「勝手に持って来たら駄目じゃないか」
「だって、落ちてたんですよ」
「…………………」
確かにポケモンニュースに「ダンジョンで拾った物は好きにしていい」って書いてあったけど、これはアリでいいのか。実際なら銃刀法違反で即刻逮捕だぞ。
「どういう感じに落ちていた?」
「岩に刺さってました。で、なんとなく気になったので引っこ抜いたら襲われたんです」
「……………………」
あれ?そういう物って大体引っこ抜いたら駄目な物だと思うよ?
「はぁ…もういい。質問は以上だ。そっちから聞きたい事はあるか?」
「はい、とりあえず二人の名前を教えてほしいです」
「ありゃ、言ってなかったっけ」
「聞いてません」
「すまん。俺、小鳥遊海斗」
「私、ティーエ・クリスタ!」
ティーエ復活。
「小鳥遊海斗さんと、ティーエ・クリスタさん。わかりました」
「よろしくな」
俺は握手をしようと、手を前に出す。すると何かとぶつかった。手元を見ると、甲賀の手があった。どうやら、同じ事を考えていたらしい。
とにかく、挨拶代わりに軽く握手を交わし、仕切り直した。
「後、何か聞きたい事はあるか?」
甲賀は考える素振りを見せ、思いついたように質問した。
「あなた達は何者ですか?」
質問の意味が分からなかった。「何者ですか」って、俺今、ピカチュウじゃん。
さーて、どうするか…
なんて、思ってるとティーエが先に答えた。
「私達は、救助隊をやってるの」
「救助隊?…なんとなくわかりました」
わかったの!?凄ぇ!…つっても言葉通りの事しかやってないけど。
「今のでわかったのか?」
「ええ、大体は」
コイツのスペック、ハンパねぇ…
「質問はまだあるのかな?」
救助隊に関する質問はもう終わったと判断したのか、ティーエは質問はまだあるのかと訊ねる。
「後は…海斗さんが身に付けているそのマントですかね」
「ん?これか…」
実はすっっかり忘れてた。小さな[つ]が2つになるくらい忘れてた。作者の文章ミスじゃねぇぞ?今気づいたけどこれって結構特別な物だと思うんだよな。身に付けてる事を忘れるくらい違和感ないし、軽いから行動が制限される事もない。丈夫そうだし、色もなかなかカッコ良い。マントとしての機能を全部備えてると思う。
「カッコいいだろ?」
「そうではなくて、ピカチュウがマントを着けてたら変じゃないですか?」
サラッと酷い事を言われたのだが、当人は気付いて無いようで、「そうか?」と言いながらマントの裾を掴んで広げたりしてる。
「質問はそれくらいですね」
「なぁ、あんまり気にしなかったけどよ、敬語止めてくれないか?」
急に自分の喋り方を指摘され甲賀はキョトンとする。
「何故ですか?」
「俺と歳が一緒なら敬語止めろって言ってんの」
「…わかりました。ですがもう少し慣れるまでこのままでいいですか?」
甲賀の話し方は敬語が普通なようで、簡単には変えることが出来ないからもう少しだけ待ってほしいとのことだった
「そうか。じゃあ早めに慣れてくれよな」
少し残念そうに海斗は口を尖らせた。しかし、そこで妙な違和感を感じた。なにかが引っかかっている。
「カイト、どうしたの?」
ティーエが不思議そうに聞いてくる。俺は「なんでもない」と言っておいた。そして甲賀の方に向き直る。
「甲賀はこれからどうするんだ?」
「これからですか?うーん…」
考え始めた甲賀にまたも違和感を感じた。勘だけどコイツは何か隠している…気がする。
「ねぇ、行く所無いなら私達の救助隊に入らない?」
そこでティーエが提案した。
「ね、いいよね?カイト」
「俺は別にいいけどさ、甲賀は…」
「宜しくお願いします」
「早ッ!!って、ええ!?」
即答だった。
「やった!コウガ、これから宜しくね!!」
満面の笑みを見せ、喜ぶティーエ。それを見てカイトは呆れ、コウガはその笑顔に見とれていた。
「とりあえずもう寝ようぜ。時間はわからんがもう夜だ」
外は既に暗く、出歩くと少々危険そうだ。生憎月明かりも無く、道が殆ど見えてない。
「本当だ。じゃあ私、藁でも持ってくるね」
ティーエはそう言って、外に走っていった。暗闇の中に茶色い背中が消え、また元の黒に戻る。
「どこに行ったんですか?」
甲賀は心配そうにティーエが出て行った出入り口を見続ける。
「そこに藁で作られたベットがあるだろ?あれの材料を取りに行ったんだろ」
だって前もどっかに行って持って来てたし。
「きゃああああ!!」
突然ティーエの悲鳴が聞こえた!
「ティーエ!!」
休もうとしてベットに座りかけた体を動かし、俺はすぐさま基地を飛び出した。そして、ティーエの声が聞こえた方向に走る。しかし辺りは暗く、一寸先も闇と言った所だ。
「ティーエ何処だ!」
「ここだよぉ〜」
すぐ隣からティーエの声が聞こえた。しかし、自分の目には輪郭しか捉えられなかった。
「くそっ、見えねぇ…」
暗闇に悪戦苦闘していると、またティーエの声が聞こえた。
「電気で周りを照らせないの?」
そういう方法があったか。
「ちょっと待ってろ…ふっ!」
体に力を入れ抑えるように放電する。すると多少周りが明るくなった。足下にティーエの顔が見えた。
「大丈夫か?何があったんだ?」
「藁を持ったのは良かったんだけど、暗いから転んじゃって…」
何だ、そんな事か。と安堵し、一息ついた。
「立てそうか?」
「痛っ…大丈夫だよ」
痛みに一瞬顔を歪めたが、すぐにいつも通りの笑顔に戻った。しかし、左後足は不自然に浮かせている。
「(強がり…か)」
それに気づいた俺は素早くティーエを背負った。
「きゃっ」
短い悲鳴をもらし、顔が赤くなる。
「人に頼れって言ったろ?それとも、俺ってそんなに頼りないか?」
歩きながら背中にいるティーエに話し掛けた。
「そうじゃないよ!その…迷惑かなって…」
それを聞いて、なんとなくがっかりした。
「迷惑とかそんなの気にしなくていい。迷惑なんて誰だって掛けるし、迷惑を掛けずに生きて来た奴なんていない」
そこで一回言葉を切って溜める。そして言う。
「俺達、仲間だろ」
そう言って俺は黙った。背中に当たる手はぷるぷると震えている。
俺はこいつの事を余りにも知らなさすぎる。だからこれから知って行きたい。こいつの事を。こいつが感じるマイナスの何かを少しでも俺が引き受けてやりたい。だからー
「(もう少しだけ、信じてくれねぇかな…)」
吹いた夜風はマントを揺らし、俺の隣を抜けて行った。