第5話 電磁波の洞窟
嬉しい事に救助隊を結成してすぐの二人に依頼が来た。意見が一致したので早速向かう二人だがー
<電磁波の洞窟>
カイト達の前にぽっかりと口を開けてるのは、奥にコイル達が居る電磁波の洞窟と言う所だ。
「なるほど、ここがそうか」
なんとなく感心したっぽくカイトが呟いた。
「ビビビ!我々ノ仲間ハ地下5階ニイル!早ク助ケテヤッテクレ」
洞窟の入り口には2匹のコイルが居た。多分手紙にあった4人の内2人だろう。因みにカイトはただ暗く見えない洞窟をひたすら見て、ティーエはそのコイル達と何やら話しあっている。
「なるほど、わかった!ありがとうね」
どうやら話が終わったようだ。ティーエはカイトに近寄り、何かを告げた。そして二人はまた[不思議のダンジョン]へと足を踏み入れるのだった。
<電磁波の洞窟B1F>
入った直後から敵に襲われたり、それにビビってティーエが腰を抜かしたり、げんこつでもして歩かせようとしたらまた電気が出たりと、いろいろと大変な事になったため、順調とは言えないがそれでも極力早く進むようにした。途中少し無理をしたので、無傷とまではいかなかった。戦闘はなるべく避けて、更に奥に進む。
<電磁波の洞窟B3F>
「……ハァ……ハァ……ハァッ、…ハァ……ハァ……」
声も出さずに走っているのはある一匹のポケモンだ。大量のポケモンに追いかけられているようで先ほどから走り続けている。
「あうっ」
派手な音をたて躓き、転ぶ。それを待ってましたと言わんばかりの表情で敵のポケモン達が寄って来る。
「……誰か、助け、て…」
息も切れ切れに助けを求めるが、辺りは敵しかいない。もうだめだ。そう考えた時、
目の前が急に紫色の爆発に包まれたか思うと、自分のことを追いかけていたポケモン達が空を舞った。そして声が聞こえて来る。
「大丈夫かーー!?」
遠くには黄色いポケモンと茶色の四足歩行のポケモンが走って来るのが見えた。
〜Side カイト〜
「ふう、まだあるのか?」
そろそろ疲れてきた。なんか名前通りっつうか、場所通りっつうか、電気タイプのポケモンばっかり出るから倒すのに時間かかるんだよな。
「えっと、今三階だからもう少しだよ」
「わかった、そんじゃもうひと踏ん張りしますか……!!」
緩んでいた表情は一瞬にして引き締まり、目の前の現状を冷静に見据える。
誰かが倒れている。そして、後ろには数多くのポケモン達がいる。
「ティーエッ!」
「うん!」
俺達は倒れているポケモンを助ける為に走った。
「シュギギギギギギギ!!!」
群れの中からビリリダマが飛び出し、俺の行く手を遮る。
「カイト!?」
「先に行け!早くあいつを助けるんだ!」
立ち止まりかけたティーエに先に行くよう指示し俺はビリリダマと向き合う。
「テメェなんかに構ってる暇はねぇ!"でんきショック"!」
俺の体から電気が放出され、ビリリダマに当たる。
「けっ、てんで相手にならないじゃん」
一発でビリリダマを沈め、更にそのポケモンに近寄る。
ティーエの方を見たら集団に向かってシャドーボールを撃っていた。地面かポケモンかに当たり、紫色の爆発が砂煙と共に起こる。
「おい、大丈夫か!?」
未だに倒れてるポケモンに駆け寄る。
「は、はい。大丈夫、です。」
そのポケモン、ワニノコは立ち上がり、自分の体に怪我が無いことを確かめる。その時だった。
「きゃあああ!!」
突然ティーエの悲鳴が聞こえた。
「ティーエ!?」
ワニノコをほっといて、ティーエに駆け寄る。
「どうした?」
「静電気…痺れて…動けな…」
目の前にはエレキッドとビリリダマが居る。状況から察するに攻撃をした時、特性の静電気をもらってしまったらしい。
「ちっ…ティーエ、下がってろ。つっても、動けないと思うけど」
エレキッド達に向かってゆっくりと一歩、また一歩と踏み出す。
「さて…覚悟は出来てるよな?」
俺は手を組み合わせ、指を鳴らす。辺りにはパキポキという軽快な音が響く。するとエレキッド達は一歩退った。しかし、後退りした分前に出て、明らかな敵意を見せる。
首を左右に曲げ、またも派手な音を響かせた。そして大きく息を吐き出し、構える。
「かかってこい。全員吹っ飛ばしてやる!」
刹那、全ての敵ポケモンが襲い掛かって来た。
「くらえ!
掌雷!」
飛びかかって来ていたコラッタを遠くまでぶっ飛ばす。ぶっ飛ばした先で壁に直撃したらしく、ドゴーンという音が聞こえて来た。掌雷は、電気を纏った手を思い切り突き出す技だ。雷パンチより必要な電気の量が少なくてすむ。つーか、俺が雷パンチやろうとしたら手が焦げるんじゃね?
「やれば出来るもんだな…」
いきなり出来た事に驚きを隠せなかった。しかし、今はそんな事を考えられる状況ではない。コラッタを倒す為に敵集団の真ん中に突っ込んでしまった。
あれだけカッコつけたにも関わらず冷や汗が流れる。
「(やべーな、どうする?)」
今の所攻撃してくる奴はいない。さっきの一撃で警戒してるのか?
そんな事を考えてたら一斉に飛びかかって来た。
「なんてな!電光石火!」
技の名前を叫ぶと同時に飛び上がり、文字通り電光石火の素早さで空中にいる敵を踏みつけることで叩き落とす。
「遅いぜ!拡散電気ショック!」
空中から広範囲に電気を放ち、落とした奴らに容赦なく電撃を浴びせる。威力は普通より下がっていると思う。
すると突然体が痺れて動けなくなった。浮いていた体が真っ逆さまに地に落ちる。地上には何体かビリリダマがいた。多分、そいつらの静電気にやられたんだと思う。
(電気タイプ同士でも静電気って効くのな…)
浮いていた体は力無く落下し、地面に叩き付けられる。てか、顔打った。泣きたいくらい痛い。
地上にいた敵ポケモン達がじりじりと近づいて来る。体は痺れて動けない。端から見れば絶望的な状態だろう。しかし、カイトは[笑っている]
そして待ちわびた声でカイトを笑わせた者に対して話す。
「遅ぇよ、ティーエ」
紫色の球体が目の前に居るポチエナを吹き飛ばす。そして先程のワニノコと共にティーエが走って来るのが見えた。
「大丈夫!?怪我とかない?」
なんて言いながらもうオレンの実を取り出している。
「大丈夫だ。痺れはまだ取れないけど、怪我は無い」
顔は痛いけど傷は無い。痛みだけだから対した事ない…はず。
「とりあえず、どうする?」
敵ポケモン達は色々あったので相当ご立腹の様子。
「「ここは…」」
「強行突破!」
「全力逃亡!」
意見はしっかり食い違い、結局、階段見つけるまで逃げる事にした。
<電磁波の洞窟 最奥部>
電磁波の洞窟の一番奥に二匹のコイルが退屈そうに浮いていた。
「我等ハ何時マデコウシテイレバイイト思ウ?」
「…救助ガ来ルマデジャナイカ」
「何時来ル?」
「ワカラン…ソシテヤメロ。気ガ滅入ル。仲間達ガ頼ンダ救助隊ガ来ルマデ黙ッテ待トウ」
「…ソレモソウダナ」
そんなコイル達に後ろから近づく影が3つ。そう、救助隊レオパルドの面々だ。
「助けに来ました!二人共、怪我はないですか?」
その後、彼らが居た場所は黄色い光に包まれ、光が消えた時には彼らはいなくなっていた。