恵が倒れて
先に出てきたのはサンダースだった。
早く顔合わせをしようと先に向かったら、自分を刺す視線が全て変なものを見るように迎えていて、シャワーズに関しては笑い出す始末。訳が分からず似たような表情でしばらく見ていた。
やがて、恵の奴がなんか仕掛けていったに違いないと後ろを見ても、廊下の暗闇が続いているだけ。自身だけで解決できないのに不安を覚えて焦りまくり、
「な、何だよ、俺が何をしたっていうんだよ」
最初の方に覚束なさが出たまま聞いていた。困惑まみれのサンダースとは対照的に、シャワーズはゴメンと言いつつも笑いっぱなしで、治ったと思いきや姿を目にするとまた吹き出ししまう。それが三、四回続いてからやっと本題が始まった。
「いや、サンダースがしたとかじゃなくて姿が変わり過ぎて、本物なの?って思えるぐらいになっていたから、ついおかしくて笑っちゃったんだ」
姿がおかしい?
シャワーズに言われて、返事も忘れて速攻でブラッキーの向こう側にあるガラスに寄って姿を見ると、サンダースらしき自身であっても違う何かが写っていた。
「だ、誰だよこれ」
洗う前に見た時とは全く正反対に可愛さ強調された、顔の輪郭は二周りほどスタイリッシュに目はパッチリと、いかにも小動物が持っているような顔立ちにしばらく棒立ちになっていて、一度瞬きしたら相手も同時にしてきたのを目にしてやっと自覚したかどうかの程度の変貌っぷりに、
「・・・痩せたな」
詰まらせた果てに、こうとしか声にでなかった。自分の容姿に自覚を持つ以前の環境で育ってきたサンダースですら気が動転するのに、残りのみんながどう見ているのかは簡単に分かった。かわいいのが厳つくなったり不細工になるのはまだポケモン達の許容範囲だが、こうとなるといつも通りに接するのはまず不可能。みんなは笑うような対象として見えてしまうが、サンダースには恥ずかしい以上に憂う気持ちだった。
「なあ、どうしたんだ、ってかサンダースもスゲーな。そんなに変身出来る隠し玉みたいなものあったんだ、ちょっと見直したぜ」
斜め後ろからのブラッキーのからかいも思うように反論出来ない。その代わりに弾けたような音が一回鳴った。いきなりでその場がビクついて静かになった。
ちょっと前の恵のイライラの上に積み重なり、とてつもなく思いっきり怒りに任せて電撃を浴びせたい気持ちが現れていた。もしこの場が二匹っきりだったら、もれなくブラッキーはチリジリにされていただろう。
なんとか気持ちを押し込め、
「ああ、そうか良かったな」
いつもより暗い感じの声でブラッキーの横を通り過ぎた。単純に怒りだけでなく、今の姿があれなのかと思うと悲しみも紙が水に濡れるように広がっていた。
そしてふと気付いたことがもう一つ。足元がいつもより感覚が強いというか、平らな床なのに滑りにくくなって、気をつけなくても体が安定している。いつもは危なっかしくてゆっくりと歩かないといけないのに、今なら軽く走っても平気なぐらい、足元が止まるようになった。
走れるなら、試しに一回ぐらいは足を動かしたい。昔の頃からのものなのか、心の底のそんな野性が騒がしい。サンダースはじっと見ていた足元から顔を上げ、
「なあ、ちょっと試しに軽く走ってみてもいいか?」
聞いてみたものの、
「ダメ、これから晩御飯だから」
即答だった。しゃあないと、不満に口カフミの作業を見ようとした、その時だった。
振り向く途中、地響きと鈍い音がした。その元に丁度恵が横になった姿があった。
シャワーズは心配そうに恵に駆け寄って、カフミの表情から別にいつものことだろうとサンダースはそのまま寝そべって事の成り行きを見ていた。だが、異変はすぐに起きた。
あの腕っ節から、いくら体を潰されるように体を揺すられても、何一つ反応が無い。おい、起きろと、全体が見れるところにいても良く届くぐらい、大きい呼びかけにも耳を塞ぐ仕草すらしない。
何をされても恵が微動だにしない。カフミの表情も見たことが無いほど曇っている。シャワーズもその場でグルグル回っていて落ち着きがない。
さすがにおかしいとサンダースが近くに行こうとした瞬間、
「起きろおおおお!」
弾き返されるのかと思うほどの怒鳴り声が突然起きた。反射的に飛び退こうとするも胴体の慣性が働き、脚だけが滑ってその場で綺麗に一回転してしまった。
本当に恵が気を失っていると聞いたのは、そんな悲鳴に起こされたエーフィからの心の声が初めてだった。
黙らせたいのに騒ぎが一層強くなって入る隙が無い。
事態が深刻なのは知っている。でも、シャワーズは周りをせわしなく走り回っているわ、フミちゃんがドゴームと良い勝負が出来そうなほど大声で恵をもみくちゃにしているわで、むしろ恵が折檻を受けているんじゃないかと錯覚も起きる気がした。
騒ぎの大きさもここまでくるとわざとらしくてかえって緊張感が失せる。恵に対する思い入れなんてほとんど無いのに、何故この立ち位置になるんだという不満も相まってやる気が湧かない。
それでも嫌々シャワーズの尻尾を軽く叩いた。
「なあちょっとは落ち着か・・・」
「分かっているよ!でも恵君が、恵君がピクリとも動かないの。何度呼び掛けたってダメだし、何よりも熱があるから心配でどうすれば・・・」
ダメだって自ら認めているのにそれでもひっきりなしに名前を呼んでいるのは、それだけの気持ちの現れなのだろうか、焦りでおぼつかない早口から分かれって感じで目につく。振り向き際に軽く涙目になっているのを見てしまい、その時点でサンダースは言葉をかけにくくなる暗示に捕まり、騒ぎが長引くと予想できた。
クソ!とひっきりなしに喚き立てているフミちゃんなんて、触れただけで地の果て彼方まで飛ばされそうで素直に怖い。別の意味で恵は無事なのか心配になってきた。全く聞く耳を持たない二匹の相手をしているうちに、段々と呆れの感情の方が強くなり、
「でも落ち着かないと話になんねえっつうの!」
ついにサンダースまでイライラしだした。元々、仲裁するとかのことが得意では無い。恵が突然倒れてあたふたするはもいいが、これではただ目的を失って“こんらん”しているのと同じ。お祭り騒ぎはもうゴメンだ、これだから嫌なんだよ、と半ば諦めていた。
『ちょっとはあんた達、頭冷やしたらどうなのかしら?』
エーフィから思いっきり飛んできた思念は直接心に響いて、あっという間に静けさが戻った。
その無音に咳のような音が入り混じって、跳ねるみたいに反応したシャワーズがまた動こうとするも、
『止めなさい、無駄よ。この騒ぎのせいで寝ていたグレイシアとかが驚いて飛び起きたのよ。たかが人間一人が気を失っただけで、そこまで賑やかに出来る方が逆に凄いんじゃないのかしら?』
射止めるような強烈な物言いで黙らした。強力な圧がエーフィから来るも、行き過ぎた内容にシャワーズもその場で言い返すが、
『私は冷静になれなかったのかを聞いただけよ。気を失っているのを気付いているのなら、本人に駄々こねるんじゃなくて自分から動こうとかしないの?そんなに甘えたい?だったらいいけど、ベットに寝かせるぐらい出来たはずよ』
「それすらも出来ないのによく人間の仲間になる面をしたわね、失意したわ」
と最後の口だけが音となって響いた。
後で、サンダースにも例外じゃないと伝えられた。カフミも似た説教を受けたようで、急いでドタバタ床を揺らしながら、朝片付けてあったベットの方に向かって行った。
サンダースは似たようなもんだと言われてまたイラついていたが、その
蟠りがスッと引くほど、その隣の無口になったシャワーズが不気味だった。言われたことが相当ショックなのは分かるが、ぬいぐるみみたいに生きている気配がしない。ただ座っていて下を凝視していた。と思うと、
「やっぱり、私はダメなのかな・・・」
ブツブツ何かを言いながらすすり泣きが始まった。なんとなく読めはしたが、サンダースにとってこれもまた厄介で嫌だった。経験上、どう声をかけても考え方の差が強く大抵はダメなのに、そんでもってその判断ミスをしただけで女子勢から最悪集中砲火を食らう。だからと言って、無視も許されない。抜け切ったところで自分に返って来る見返りも乏しく恵まれないイベント続きで、頭が狂いそうになった。
でも、何故恵が突然倒れてしまったのか。疲れが溜まっただけならどっかしらで寝る。それとも、自分でも感じ取れなかった原因があるのだろうか。シャワーズを放って置くこともそう出来ない。何で悩ましいことは一気に増えるのかと、助けを求めるようにふと天井を仰いだ。
「そこの二匹、恵に死なれたくないのなら早く行動でも起こしたらどうなのよ。多分、今の恵は何かの重い病に侵されているようね。熱があるのは分かっているでしょ」
外からまたエーフィの声が聞こえた。モタモタしている様が癪に障るらしい。重い病気という言葉に反応してシャワーズが息を吹き返したみたいに食い付いてきた。
「え、じゃあ何をすれば・・・」
「なんでも言われないと動けないのかしら?まあそうでしょうし、もうその程度だって分かったからもう口にしないわ。試せるか知らないけどシャワーズは“ねがいごと”が使えたでしょ。ダメ元でやってみなさい。サンダースもサンダースで、もっと考えらんないの?フミちゃんがあそこまで働いているっていうのにね」
最後は、口だけって恐ろしいわ、と言ってわかりやすいため息をついた。
追い討ちのような残酷な言葉を浴びせられたシャワーズを、サンダースは直視出来ない。一度は打ち負かした相手に、気持ち的に痛いところを突かれることはただ突かれるよりずっと耐え難いし、そのえぐれた痕からどこまでトドメの域から奥に一撃を受けたのだろうか。
過去の自分の場合も含めてその容姿を見るのが心底恐ろしかった。その横でフミちゃんがせっせと作業をこなしていく。自分はもっと役割を果たせないのかと、そう思わされざるを得ない対象が目の前にいれば、もっともっと暗い喪失した割合も目に見えて増えるだろう。そのうち自分がただいることに対して罪悪感が積もって、イーブイのような事態になることが、どうしても簡単に想像出来てしまう。あっても本気で止める気持ちは出来てるが、それもまた怖い。
ただ、シャワーズを視界に入れないまま思案して、机やらベット三個やらをまとめて突き動かすパワープレーを、避けた先として見とれていただけだった。
これからも、息苦しい距離感が支配すると思っていた。しかし、展開は読んでいた方向に転がることはなかった。
「私も頑張らなくちゃね」
突然、目覚めたみたいに体を起こしてサンダースに向かい合って、
「エーフィは冷静でちゃんと物事が分かっていて凄いって思うんだ。私も見習わないと。それとサンダース、さっきは怒らせちゃってゴメンね」
嫉妬、なのか?サンダースはそう思っていた。でも言ったことはそれだけでスタスタとカフミの元に向かって行く。カフミともさっきのことを話している。微妙な空気の壁があって、気になってもただの邪魔になりそうで入る気にならなかった。
エーフィは澄まし顔で見つめているだけ。チラチラと見える奥の方の他のみんなも色んな会話をしている。でも、直接話してくれる気配が無く、
『シャワーズが一匹でどこまで出来るか試しているだけよ。何か他に質問でも?』
サンダースが思っていることを先取りして答えていた。更に、
『することが見つからないのなら見守るとかにするといいわ。そのつもりなんでしょうけど』
不用意に近寄るな、とのお告げもあり、完全にいるだけの不憫な存在なってしまった。外のみんなにもこの事件のことを言ってあるらしい。不気味な縛りから開放された安心感と仲間外れにあった気分で、ほんの少しの悔しみが後味をより悪くする。
けれど、サンダースは自身の不満の通りに動くことはなかった。
どうして、どうしてなの?
エーフィに二度も喝を入れてもらっても、やっぱり思うように情報を整理できない。色がおかしく変わっている右手、ふっと沸いたような汗、それに乗じた高い体温。そして、まるで体と関係が切り離されたような、深く穏やかな呼吸。これはわかる。けど、何がどうなのか、さっぱりだった。
自分も同じような形容で焦り、集中しようと言い聞かせているのに疑問ばっかりが汗みたく沸々と現れて、頭の中で水溜まりが出来ていて、上手く機能していない。
昔の記憶をはっきりと呼び起こすのと似て違った焦りが駆け回っている感覚が邪魔して、“ねがいごと”に集中しようとしても、根拠が分からない不安に遮られてなかなか進まなかった。
焦りが停滞を呼び、更に焦りが高まる。両手で握っている恵君の右手がかすかに震えていた。
「シャワーズちゃん、上手くいっている?」
フミちゃんがひそひそ話みたく話してきた。多分、集中力を切らせない為にしたんだと思う。けど、悔しいけど、首を振ることしか出来ない。
どうして、どうして、私は助かって欲しい思いより、こうなったのかが気になるなんて。“ねがいごと”ぐらい、簡単なことなのに何故パワーが集まらない。
あんな行動をしていたんだから、恵君に色んな迷惑を掛けすぎたんだから、私がこうなる前に気付けなかったんだから。記憶から色々自分が原因な理由が沸騰してきて、本当に助ける資格なんか無いよう思えて、
「私、やっぱりダメなのかな・・・、色んな気持ちが多すぎて・・・」
踏ん張りが崩れそうになった時、ふとフミちゃんが頭の上に優しく手を置いた。
「一度、深呼吸しよっか。急ぎたいのはとても分かるけど、心が落ち着かないとね」
手は後ろを滑って背中で止まると、ゆっくり撫でる動きをしていた。その手は不思議と暖かかった。
「ほら、手の動きに合わせて・・・」
こう、深くと言うよりは長く空気を吸って、同じぐらい時間をかけて全部を吐き出す。それを二、三回すると、体の芯がつんとするような涼しさがあって、気付けば飛び回っていたことが壁に止まったように治まり、すっきりとした感覚だった。
息なんて意識したことがなかったから少し新鮮に思えた。フミちゃん曰く、呼吸の間隔で自分のペースがガラッと変わるらしい。
「それでね、ウチも手を貸していいかな?」
私が落ち着いたのを見計らって、後ろから宣告するみたいに言ってきた。でも、
「手を貸すって、どういうこと?」
悪いことを言うと、フミちゃんを疑うような気持ちだった。不安はあるし、仮に“てだすけ”をしても効果は無いと、自分では分かっていた。
「“ねがいごと”に関係するか分からないし、ただの中二病の戯れ言だと思うけど、一緒に念じたら何か出来るかなって、そう思っただけです。けど!ウチもただ棒立ちになるのが腑に落ちなくて悔しくて、それといっそのこと間近で体験してみたい欲求も・・・、いえ、シャワーズちゃんの判断に任せます!」
多少言葉を噛んでも押し切って、自分の情熱の勢いに任せたんだろう。使命感、切迫感、恵君への想いを全てぶつけるフミちゃんの思い切りの説得に、自分の常識も全部圧倒されて、口を開けっ放しで呆気にとられていた。
「早く、ご決断を・・・」
「う、うん」
フミちゃんの重い一撃を放ちそうな視線に射竦められてすぐに正気に戻った。冷静になった頭で任せられていることを再確認してから、
「私は恵君の右手にその力を注ぐから、フミちゃんは後ろから念じて」
恵君の腫れ上がった右手に、フミちゃんは背中両手を添えた。相変わらず押す力が強かった。
私だって、フミちゃんに負けてられない。例え地味でも恵君を助けられるなら、その力があるなら、私はなりふり構わず全力を出して行く。そうじゃなかったらフミちゃんやエーフィに、そしてサンダースに任せられた意味が無い。
「じゃあ行くよ!」
遅くなってゴメンね、恵君。
一気に勿体ぶっていたその想いを解放していった。
一心不乱に念じろ、その気持ちで岩を砕け、鉄を溶かせ、天を狂わせろ。
そんな昔の座右の銘みたいな格言が、力を込めている時に横を通り抜けていった感じがした。多分、習い事で先生から一度言われたことだと思う。
「もう、大丈夫」
シャワーズちゃんから終わった告知を承って、その世界から帰ってきた時に、ふとその間だけが蘇った。不思議なことにそれ以外のことが思い出せない。
「それで、めぐは?」
「そのうち、“ねがいごと”がかなって、体力が回復して・・・」
ああそうだ、“ねがいごと”は一ターン経った後だったもんね、すっかり忘れていた。一ターンが三次元の現実でどれぐらいの期間なのか分からないけど、それほど長くないと思う。
じゃあ様子を、じゃなくて、
「どうしたの!シャワーズちゃんこそ大丈夫?」
声が糸のように力強くない。なんか座っていても左右にふらついて危なっかしい。いや、この状態は危ない。
まさか、ヒロインが絡む悲劇でありがちなあの瞬間が頭をよぎる。もしかしたら、シャワーズちゃんは“ねがいごと”で恵の魂と引き換えに体力を使い切って、
『そんなことは無いわ。滅多に使いもしないわざをこの場に限って無理してまで本気を出してしまったのだから、ふらふらになるのは当然よ』
えっ、エーフィ?
『それゆえ、力尽きたって言っても間違いは無いわ』
『えっ、じゃあシャワーズちゃんは結局無事なの?どっちですかセンパイ!』
『あんたなら知っているでしょう?』
『はい?何が?』
『知らないの?意外ね。とりあえず、ポケモンはよほどケガが大きくない限り、一晩寝ればそれで十分に体力は回復するの。今のシャワーズは単純に疲れが今更出てきて眠いだけよ。かなり無理もしたし、体力的なものだから後でゆっくりと寝かせてやりなさい』
あ、確かにありましたね、そんなもの。ゲームの中ではどうぐケチるのに随分お世話になりました。
『逆を言えば、ねがいごとに使ったエネルギーがそれだけ大きかったのよ。シャワーズにご苦労様とか、ねぎらいの言葉を掛けてあげれば?』
そうだった。なんでこんなに一番大切なことを忘れているんだろう。
「シャワーズちゃん、ご苦労様」
「ううん、フミちゃんこそ、手伝ってくれてありがとね」
思いもよらないお礼に、怖がったような反応で返したのは謝りたい。その分驚いたし、それだけ嬉しかった。座り直して、シャワーズちゃんは話を始めた。
「実は、恵君のことが嫌いなんじゃないかって、分かっていても心配だったんだ。でも、恵君が倒れて、そんなものはただの杞憂に過ぎなかったんだって、今更だったけど分かったんだ。それとあの深呼吸がなかったらあのまま動揺し続けてそのままだったかもね。本当に助かったよ」
なんかこういうたどたどしい声も可愛くて、自然と鼻が伸びそう。真面目な話しているのに何様だ、って感じで自分を叩き直し引き締める。
「本来ポケモンは支える側だったのに、“てだすけ”でやっとならまだまだって現実も見せられた。けど、その強い態度から自覚ともまともに向き合える、そんな勇気をもらった気がするんだ」
言葉が途切れたと思ったらシャワーズちゃんがまた倒れそうになってた。慌てて支えに行って、貧血になった?とか勘違いしたけど、眠いんだって話聞いただろうが、と自分に刷り込み直す。シャワーズちゃんもくぐもった声でゴメンと、そこから再開。
「フミちゃんが私に使った力で、見ているよりも、私以上に心配な気持ち、決心の頑なさが言葉になって見えたんだ。思い出せないけど、とても立派な言葉だったよ」
そこは自分が考えた言葉じゃないんだ。けどいっか、もう寝そうだし、休ませないと。
「ありがとう。でも、疲れを取らないと、いつまでも残ったままだから、シャワーズちゃんも休まないとね」
にこやかな表情が本当に眩しいです。後光も一緒に見えてきてずっと拝んでいられる。ご飯三杯はいけます。
「さてと、そろそろかな?」
なんて気分を勝手に上げていたら一ターン分の時間が経ったみたい。酔っぱらいみたいな足取りでめぐの顔の真横に、看とるような形で座った。結構近いし、ちょっと羨ましい。
すると、何が起きるかな、とずっとまじまじと見てたけど、特にこれといった超常現象は起きず。まだかなってそろそろ待つのに違和感を覚える頃、シャワーズちゃんの顔がいびつに歪んだ。
「やっぱり・・・、ダメだったみたい」
怠けムードになったそれを、どこかから構えられていた角度から衝撃で木っ端微塵に吹き飛ばした。