ひねくれものとおかしな生きもの








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第三章〜崖の下のひねくれもの
それでも仲間は仲間
ブースターやサンダース二匹の大音声にも負けないぐらいの大声で、不調だったはずの恵が怒鳴り散らした。

少し忘れかけていた存在からの思わぬ不意打ちに、少し動揺していたが、

「恵、もとい人間が何の用?」

すました対応でエーフィは対峙する。だが、

「寝かせろ。そういうのは近所迷惑っていうんだ」

「え?」

「は?」

「それ?」

いきなり返された、寝かせろ、という場違いな返事。斜め上どころか、答えが地中に埋まっていたぐらいの衝撃があって、今度はシャワーズ以外のポケモン達の反応が石化してしまった。更に恵は仰天する答えを不満タラタラに述べていく。

「結構甲高い声って頭の奥まで響くし、やかましい。喧嘩するんだったらもっと離れた場所でやってくれ」

喧嘩はよせと言いたい訳でも、仲間割れは面倒だから止める訳でも、自分のことをいつまでも引きずられて嫌気がした訳でも、診断の邪魔をされて腹が立った訳でもなく、ただ騒音がうるさくて、寝付けないからクレームを吐いただけ。更には、喧嘩を止めてあげたい気持ちそのものも、嫌々な感じの声の出し方から感じられなかった。

「また?さっきも居眠りしていたのに、どんだけ眠いの?」

さっき殴られたというのに、普通な調子と変わらないどころか、何かに便乗する風にシャワーズは慣れた感じで突っ込みを入れる。そして恵も何事もなかったように受け答えをした。

「疲れるんだから眠くなるのは生理現象なんだから仕方ねえだろ。それと、卑しい鈴だっけ?」

「いやしのすず、ね」

「まあ、それがいい感じに催眠効果があるから余計だ。・・・あ、なんか中断しちまったけど、別に続けていてもいいぞ。その代わり、場所は変えてくれ。もう勘弁してくれよ」

結局、恵に仲裁しようとする心構えがないどころか、余計に助長しているので、全くいさかいを止めさせる意思がないことが分かっただけだった。更にその疲れたことを証明するように大きなあくびを一つした。さっきの抗争なんぞ対岸の火事にしかならないと、その緊張感のない行為が言っているようにも見えた。そして、受け答えをしているシャワーズも、どこか晴れ晴れした風に矢継ぎ早に突っ込みを入れていた。まるで付き合いが長いコンビの他愛の無い会話のように。

「んじゃ自分はちょっと寝る。決着が付いて、飯が食いたくなったら起こしてくれな。イタズラすんじゃねえぞ」

そして、厚手の登山服を脱ぐと、敷き布団の代わりにして石ころの上に広げた。しかし、遠目から見てでも分かるぐらいのでこぼこが見られるので、とても寝心地は悪そうだ。それでも、恵は腰から上の体を横たわらせた。

ようやく石化の状態が解けたようで、戦う姿勢のままだったブースターがその場に座り込み、

「なんかやる気失せた・・・」

白けた状態を代表するような言葉を独り言のように、凝り固まった空間に投げ出した。続いてグレイシアも半ば呆れた風に口を開けた。

「シャワーズが言っていた“重要な話は寝て過ごす”みたいのって、こういうの?」

シャワーズはぎこちなく首を縦に振った。

「なんかね、相手の話を聞かないっていうより、聞くことすら面倒らしい。不利益にならなければ、自分の欲求優先するみたいなやつ」

「うわっ、酷すぎ。普通、そんな人間に付いて行くのって正気の沙汰じゃない」

そりゃあ、引くよね、とシャワーズは反射的に返した。普通に考えれば、最低以外のなんでもないのだ。でも、

「それでも、みんなを静かに出来たんだから凄いじゃないの?」

その効果を逆手に取ったのか、高ぶっていた感情を治められたのは紛れも無い事実だ。

「あ、確に。まあ、そうなんだけど・・・」

そこで言葉を止めて、シャワーズと一緒に今の状況を改めて見ると、全員、殆ど二の句が継げないでいた。

グレイシアの視線を感じて、同じくしおらしくなってしまったサンダースも、停止状態がやっと解除されて、

「これじゃあ、分かる奴にしか良さみたいなものが分かんねえよ・・・。本当にどんな人間なんだよ、恵って・・・もう横になってお休みしているし」

危うい空気もけんか腰の熱気も何もかも冷めてしまうどころか、争議が起きる前よりも静かになっているようだった。

「そうなんだよね・・・」

シャワーズは困り様に答えた。そう、本人はちゃんとしているのだ(多分違う)が、少し対処の仕方が偏屈なのだ。正義感をもって真摯に向かうのではなく、ひねくれた態度で困惑させて混乱させて黙らせるのだ。時々真面目になるが、結局曲がった考えを見せて終わる。自分達に懐かれたくないのかという感じな思わせ振りで、“面倒くさい”と度々言っていることから、自分たちがお荷物扱いであるとしか思えなかった。でも、そんなことにわざわざ気に掛ける面をどう説明すればいいのかも、分かっていないのが現実だ。

再び恵に目を向けると、分厚い上着を敷き布団代わりにして、横になって寝息を立てていた。

「本気で寝ちゃった・・・」

「有言実行ってやつ?てか、ここまで即行で寝れるのってもうある意味特技なんじゃない?」

もちろんこういう特技は欲しくないので、その意味も込めて、褒めてないけど、と面倒くさそうに付け加えた。シャワーズは苦笑いでしか返せなかった。

じゃあ本題、とグレイシアはつぶやいて体の向きを変え、エーフィに強い視線を投げて切り出した。

「エーフィは本気でここから離れる気?」

大量の声の掛け合いをしたが、その答えはまだ聞いてはいなかった。また新たにもめ事が起きそうな気配を悟ったシャワーズは、思い切って二匹の間に入ってきた。

「もう止めない?切りがないよ。争いなんかやっちゃダメだって。なんでここまで激しくする必要があるの?・・・元々の責任は私にあるんだけどね」

これが正論なのだ。本来なら問題が合っても、話し合うだけで全ての事は収まったのだ。でも、ここまで激しくなったのはなぜなのだろう。自由の身になったのと同然である現状になって、より考えにゆとりを持てるようになったら、仲間内でも衝突が増えるのだろうか。考えれば考えるほど自由の身を得たことの対価のことが不安になってきた。

吹っかけられたエーフィは、間にいるシャワーズを避けるようにして、グレイシアの前に立って言った。

「ええ、私は宣言通り、あんた達の視線からいなくなるわ」

「ねえ、ちょっと待って。もう少し考えたらどうなの?」

シャワーズは横に向いてエーフィを引き止めようと説得に取り掛かる。グレイシアもさっきのことを謝りつつも、続けて声を掛けるが、

「私も言い過ぎたことは謝る。でもねその行動の意味がどんだけ・・・」

「考えるも何も、もう馬鹿馬鹿しくてやってらんないわ」

相手の自分を惜しむような駄弁を払いのけて、機敏に背中を向けると、みんながいる場所とは反対の方向に歩き始めた。

「でもそんなことをして本当にいいの?・・・行っちゃった・・・」

エーフィはそうシャワーズが声を掛けても無視し、その背中が離れていくことは止まらず、一度も振り向くことすらせずに、本当に岩陰で姿が見えなくなる所まですたすたと歩いて行ってしまった。その跡を見て、グレイシアはため息をつくと、

「どうせ、そのうち頭が冷えてそのうち戻って来るんじゃない?」

そう、シャワーズの罪悪感を紛らせるように言葉は放ったが、

「でも、なんかかなり本気っぽかったから、なんか心配・・・。本当に変な所まで行っちゃったらどうしよう・・・」

エーフィが本気であることを匂わすように、シャワーズに対して手を出したことを照らし合わせると、

「確かに、否定出来ない」

とグレイシアは同感の意を示し、もう一度ため息をついた。そして、その一言がまた、シャワーズに罪深さとして重くのしかかって、気分を悪くする要因にしていった。

が、その煙たい荷物を取り払うように、グレイシアは体の向きを変えて、

「だからってへこたれているのもどうなのかな?」

静かな全体に響かせるように問いかけた。更に、それでは言葉を終わらせずに、みんなにあることを呼びかけた。

「みんなはどうするの?いつまでも固まってないで、私達の力で何としよう」

さすがに二匹目の行動したところで出来ることはかなり狭められている。さっきのことでエーフィに良い印象を持っているのは少ないが、だからといって長い間仲間だったのと、こんないとも簡単に絶交するのも決していい事ではない。更に、エーフィは心を読む能力など、戦略的にも大切な一員でもある為、何としてでも取り戻さなくてはいけないのだ。

でも、現実は甘くはない。呼び戻す以前に考え方によって生まれた溝が存在する。簡単にはいそうですか、と首肯することはなく、その印象も相まって必ず抵抗が生じるのだ。

それだけ、あの時のいがみ合いの影響は酷く残ったのだ。

「うーん・・・離れていくのは良くないけど、俺的には悪いけど嫌なんだよな、一緒にいるのも。って恵は本気で寝たのか」

サンダースは本望なら、あんな奴は放って置いた方がマシだと思っているが、みんなの心境を考えながら、極端なことは言わず、慎重に言葉を選んでいった。ブースターも、サンダースと似た心持ちであったが、同じく中性的な発言だった。

「トラブルメーカーって感じなんだよね。エーフィは。自分もちょっと行き過ぎる行動をしかけているからあまり言える立場じゃないけど、自分の意見に刃向かうことには厳しくなっている。仲間外れとか。・・・でも、エーフィって何かに追い込まれているように見えるんだけど、何があったんだろ。・・・あと、サンダース」

ブースターは喋っている途中、少し間を空けたと思うと、いきなりサンダースに目を合わせて、こう言った。

「ちょっと謝ろっか。みんなに」

罪滅ぼしをするつもりはないが、せめてでも怒鳴り散らして恐怖を与えてしまい、迷惑を掛けた仲間に謝らないと自分の気がすまない。ニンフィアやイーブイなんて、恵の一声で気付いた時にはいかにも泣きそうな顔をしていた。さっきまで周りのことを考えずにムキになっていた自分が、とても周りを思わない馬鹿に見えた。

そんな自分が謝ったところで許してくれるのか。ただ顰蹙(ひんしゅく)を買われるのが落ちだろう。でも、過ちを犯したのに謝らない自分なんて、そんなの自分が絶対に許せない。結果的に自分のプライドを守るだけになってしまっているが、それでも迷惑を掛けた罪の重さの前には、逆らえなかった。

言われてから謝る、もう一方では言わせて謝らせるのはどうなのか、という部分があったが、困らせたまま普通にここにいるのも、更には一度突っ張ってしまっているのも追い風になって、謝ざるを得ない身分となっていた。

「俺が怒りまくったせいで、みんなに変に迷惑を掛けちまった」

「変に、じゃなくてめっちゃ掛けさせたんでしょうに。ニンフィアとかが目を潤わせて泣きそうになるぐらいなんだから、普通に怖い思いをさせたのに、変に、で終わると思うの?」

「まあまあ、別にいいって。二匹とも、元々は私が一番悪いの。サンダースもブースターも、巻き添えを受けている身なんだからそこまで責め立てなくてもいいのに・・・私が一番悪いの」

落ち込む様子から、自分自身を責めたり、かばったりするほど、シャワーズに困惑を掛けさせてしまうのに気付くと、問題の二匹はどうしようも出来ずにもどかしい思いで、シャワーズの覚えずの暗さが移ってしまった。

その後は長い間、沈黙が続いた。イーブイは恐怖の余韻がまだ残っていて、言葉を発することが出来なかった。サンダースとブースターは何をすれば良いのか分からず、リーフィアは未だ思考が停止したままで、シャワーズは過ちが喉に物体となって詰まっているような感じで、声を出せなかった。グレイシアは、一瞬だけ言おうとする試みをしようとしたが、やはりシャワーズの気持ちを考えると、その勇気ははかなく消えてしまった。

結果、誰も紡げる言葉が見つからず、それが余計に重苦しさを増やしていく。そんな長くない時間でも、一時間ぐらい突っ立ているように感じていた。

その重苦しく長い沈黙を破ったのは、ニンフィアだった。

「ねえ、思い切りなんだけど・・・」

あまりに突然だったので、近くにいたサンダースはうわっ、と声を挙げて驚いた。動揺していたが、すぐに冷静さを取り戻して、真剣な眼差しでグレイシアは切り込んだ。

「何?とりあえず、言ってみて」

「シャワーズ一匹だけ行かせてみるってのは?」

二度も驚かされて、寝ている恵と発言しているニンフィア以外の誰しもが驚いた。

「へ?私が?」

言われたシャワーズは驚くのあまり、間抜けな声で返事してしまった。おいおい、とすぐにサンダースは反論に近い疑問を投げかける。

「危な過ぎるだろ。なに考えているんだか知らねえけど、エーフィってさっき手を挙げたんだぜ。そんなの奴に一匹で行かせるってのは正気か?」

が、ついニンフィアに対して、習慣から強く当たってしまった。すぐにごめん、と付け加えて謝った。そんな事は気に止めなかったようで、何の変化も見せずにすらすらと発言した。

「本当にそうなのかもわからないけど、シャワーズはエーフィを圧倒していたように見えたの。あのエーフィをそう出来たのは多分シャワーズだけだと思うし、しかも、実力とかじゃなくて言葉の力だけで。悪く言っているように見えるけど、サンダースやブースターみたいに攻めるような感じでねじ伏せていくこともなくて、相手を自分から認めさせるようなやり方だから、エーフィが傷付くこともないからと思って、言って見たんだけど、どう?」

確かにそうだったと、事情を詳しく知らないリーフィアとイーブイ以外のみんなは、ニンフィアの提案になるほど、といった感嘆の声を漏らした。もちろん良く意味が分かっていないリーフィアは質問する。

「どういうこと?エーフィはそんなに取り乱したり、追い詰められたりしないのに。よっぽど凄いことをしたの?シャワーズが?」

準備も無いままいきなり思考を動かされて、半分錯乱しているリーフィアに、少し困った顔でゆっくり目に答えた。

「よっぽど凄いって言えるのか分からないけど、エーフィはタジタジになっていたよ。なんか恵の真似をしてみたとか言っていたけどね・・・」

ニンフィアの言葉がそこで終わりだとも知らずに、リーフィアはその先の話を待っていた。ずっと無言で見つめられて、

「あの・・・何か意見はないの?」

我慢出来ずに言葉に出てしまった。続きに期待していたリーフィアは、思ってもいない返しに驚かされて、

「え、まさかのそれだけ?」

と、信じられなさ一杯で返した。

「多分、それだけ」

「本当に?」

「え、本当だってば。そもそも、もうそれ以外言えることがないだけなんだけど・・・」

二度聞いても変わらないのだから、事実に間違いはないのだろう。しかし、このことを納得がいかない表情を浮かべながらも、リーフィアは今度は自分で考えてみたが、最近考えることをしなくて慣れていないのもあるのか、幾つか時間が経っても顔の雰囲気は変わらなかった。その曇った顔を見て心配したイーブイは、

「良く分かんないよ。どんな感じだか見せてくれないと分かんない」

実物を見るのが一番だと考え、そうしてみることにした。

「まあ、まあな。そうなんだけど・・・」

「どうしたの?」

かなりぎこちない言い方と、何かを嫌がっているような様子に不安に思って、なんのためらいもなくリーフィアは聞いてしまった。自分に言いにくいものだろうとは予想出来たが、内容はうかがい知れない。ただ、サンダースでも言うことに心配してしまうのは、よほどのことじゃないと引っ込み思案な振る舞いを見せないので、話を聞くのにかなり緊張してしまった。

「いいか、イーブイ、リーフィア。今までのイメージをぶち壊してシャワーズが変態に見えるかもしれねえけど・・・」

何かためらいがちな口の動かし方をしていたサンダースの言葉を遮り、

「変態って失礼ね。別に誰かの真似するんだから違う感じになるのは普通じゃない。もう」

声に明るさを取り戻して、シャワーズ本人がリーフィアとイーブイの手前に出てきた。

サンダースが言う通り、シャワーズは今までとは少し違う感じになっていた。少し敏感な所が出ていたり、ちょっと強気な面があったり、明るくなったり暗くなったりの差が激しくなっていたりと、ここはシャワーズの言う通りだが人格をぶち壊すほどではなかったが、長い付き合いだから分かることなのか、変化があったのは明確にはっきりと分かった。しかし、何をするのかはまだメドが立っていない。なんとなくモデルに出来そうなのは、あのぐうたらなら人間ぐらいだが、もしなんでもふてくされたような反応しか示さないシャワーズが、ここにいるのなら本当に今までのイメージを文字通り粉々に破壊してしまうだろう。

「で、物真似をするようだけど、誰に?」

「恵君だよ。薄々勘付いていたと思うけど、ってか真似出来る人自体、恵君だけなんだけどね」

嫌な方面での予想が当たってしまった。眉間にしわを寄せてから再度聞く。

「それって・・・え?恵?」

恵といえども、何を真似るのかは分かってない。ただの顔真似か?それとも声質か?と、まだ希望があると自身を持ちこたえさせた。そう、とシャワーズは当たり前のように返してみた。

「これがね、意外と面白いの」

そうだ、面白くする物真似なら顔とか声を真似るのが妥当。リーフィアはその時だけ、胸を撫で下ろした。しかし、その次の、シャワーズが放った言葉が裏切られるような、ショックを与えることになるとは、この時までは微塵にも予想してなかった。

「恵君そのものに成り切るって感じかな?」

「そのものって?」

その時はまだ具体的にどんなものなのか、イーブイには分からなかった。その疑問点をシャワーズは気遣って自分なりに出来るだけ詳しく教えた。

「恵君の言葉使いとか、性格とかに・・・」

「ちょっと待って!せ、性格を真似する?」

何を考えているの?頭が狂ったの?失礼だと思われるような、今を疑う言葉が次々と湧き上がり、自分もその言葉通りになってしまいそうだった。一応、その単語が口から出ることは抑えられたが、気分の高揚は止まらなかった。それでも、迷惑だけは掛けたくなかったので、慌てながらもなんとかリーフィアは、

「・・・ごめん、びっくりさせた。私は平気だから心配しなくてもいい」

空元気でもいいから、平穏を装った。

リーフィアが自分の事実を受け止められないのは大体予想出来たが、気を害さない為に気持ちを押し殺している対応が、逆に無理強いさせていると不安に思えた。そして、

「それと、シャワーズは大丈夫?」

更に気にも掛けてくれているのだ。少し涙ぐむ感じがしたが、こちらこそしっかりと対応しようと、

「楽しいって言ってんだから、大丈夫に決まっているよ」

なんでもない様子で、当たり前だというような感じの声の高さで答えた。しかし、曇った顔持ちから、不満を晴らすには至らなかったようだった。

もう良いよね、とつぶやき、

「じゃあ、私、エーフィの所に行ってくる」

いつまでもここにいても切りがないので、切り上げようとしたが、リーフィアが引き留める。

「ちょっと、実践は?」

「気分を害したくないからしないことにする。ちょっと気に食わないと思うけど、無理は禁物」

シャワーズに言われて確かに気に食わなかった部分もあったが、世の中見てはいけないものだってあると思い出すと、その方がもっともらしい正論だと思えた。納得がいったのかいってないのか半々くらいの表情を見てからも、シャワーズは言葉を続けた。

「不安な感じがするのは私はもちろん、みんなだって一杯ある。けど、絶対に取り戻してくる約束する。あと、もし、本当にエーフィと二匹っきりにして欲しいなら、絶対に間に入らないで。何があってでも」

介入していけない。それは、シャワーズ自身が考えた、出来るだけのもう一つの約束でもあった。他の仲間に飛び火をさせないことはもちろん、自分と一対一でけじめを付けたい意味もあった。

「なあ、後ろから見守るってのはありか?シャワーズの支え無しの一騎打ちをする気合いを無駄にするって言うんなら・・・」

「どうせ気になって物影から覗きに来るのが落ちだと思う」

グレイシアの痛い一言にサンダースは、また失態を犯してしまったと、一気に落ち込んでしまった。少し笑えることがあって、気分が楽になった気がした。

サンダースがなんだよ、と声を上げるが相手にはせず、シャワーズが尻尾を挨拶代わりに上げて、エーフィがさっき去って行った方向に向くと、

「行ってらっしゃい」

色々な感情が混じっていて、もっと沢山の言葉を掛けたかったが、どうしてか、全員とも、この言葉しか言わなかった。

シャワーズも、みんなの気遣いを胸に刻んで、砂利の上に足を踏みしめていった。

■筆者メッセージ
季節がそうなのに、クリスマスネタを入れるやる気がない、からげんきです。
最近は、あれよあれよという間にクリスマスになり、もう年越しか!と驚くばかりです(お前がぐうたらだからそうなんじゃねえの?とかはお察しで)。
なお、今年の更新はこれで最後っぽいです。
ここまで読んで下さった御愛読者皆様、誠にありがとうございます。
Merry Christmas!そして、良いお年を、です。
からげんき ( 2014/12/22(月) 22:29 )