章間〜ある取調室、四人の男
二人の検察官がテーブルに向かい合って、片方は頬杖をついて、もう片方は腕組みをして立ち、ある事件について悩んでいた。
「まあ、よくあんなに大胆に所持できましたね。一端のヤクザでもあんなに綺麗に取り揃えられませんよ」
腕組みをした検察官が話した。
「そしておまけに、意味不明な供述。支給されたのは分かる、上の顔も知らないのも下っ端だからまあ妥当、でもポケモン捕獲命令だと?そんなガキのお遊びめいたことを嘘っぱちで言うか?」
もう一人の検察官が頬杖をつきながらそれに答えた。
「上からそう言っとけって言われているってのもって、なんか変ですし、しかも、本当だ、ってまだ言い張っていますし」
「一度は捕まえたんだってよ。捕まえていない言い訳に追い剥ぎに合った、だって。あんな武装して、更に三人もいてどうすれば身ぐるみ剥がれるんだ?そんでもって抗争で、なのか?って聞けば二人のガキに奪われた?ふざけてんのか!ってひっさびさにぶちギレたわ」
「ブツの出本を探っていたらこんな事に、って取調は激昂厳禁ですよ」
「すまんすまん。まあ、この話はもうちょっと人が集まってからだな。俺達凡人二人が世間話しても意味ねえし」
「確かに、ってそれじゃダメじゃないですか。まあ上に話しを告げる為に、一旦まとめて置きました」
おう、言ってみ、の一言で立っている方はポケットからメモ帳も取り出し、書いてある事を読み上げた。
「まず容疑者は、サンタス・クローネ容疑者、ゴートン・マウエル容疑者、ナナンド・コンジヤック・ピニャタ以下略容疑者、十郎・縁(じゅうろう・えん)容疑者の四人。因みにそれぞれの名前の頭文字から取ったコードネームで呼びあっていた為、容疑者達も初めて本名を知った模様。容疑内容は四人とも上層部から支給されたと見られる拳銃及び銃弾、スタンガンなどの所持による銃刀法違反の疑い、更にコンビニエンスストアの出入り口で寝るなどの営業妨害の件も挙がっています。所有目的はポケモンの捕獲と供述していて、依然として変わらないままです。念の為、捕獲したポケモンの種類も聞いてみたら、イーブイ、シャワーズ、サンダース、以下略の九匹。俗にイーブイズと呼ばれる
括りの全種類の捕獲だったそうです。そのポケモンの行方は全員捕獲後、二人の若者と思われる男女に暴行されて気を失い、その間に強奪され、その後の行方は不明。その現場は容疑者曰く遠くの森林からかなり歩いてきた為、詳しい場所は不明。ただ、専門用語でギャップ、意味は森が開けた場所だった事が唯一の手がかり。あとはこれといった進展は無し」
三分ほどで全て読み上げると、頬杖から腕組みに変えて、口を開いた。
「名前からして国際組織って所だな。成田の検問をくぐり抜けられたんだからまあ大したもんだ。思う事は、引っ掛かる点がが多過ぎるんだよな。人間何人
殺めるか知れない人間がなんでコンビニに寝っ転がっていて呆気なく御用なんだ?ブツが人間に向けて使わないって言い訳もあるが、それでも変だよな」
「確かに。でも、そんなぐらいの点なんていくつもあって切りがないですよ」
「でも、そん中でとびきり引っ掛かってんのがあるんだ」
え、と声を出して、さっきしまったメモ帳を引っ張り出した。
「何故、わざわざポケモンという誰も信じないネタを口実にしたのか。あんたには分かるか?」
「確かに、それだったらデジモンにしても構いませんし・・・」
「違えよ、俺が言いたいのは本来いないバーチャル的なことを何故現実に混ぜたのか、そこを言っているんだ」
「あ、すいません」
「まあ、俺たちはここで一旦引き揚げだ。明日の鑑定を待つ以外、なにも出来やしないよ」
そうですね、とへつらうように言うと、後ろの扉のドアノブに手を掛けた。
なにも出来ないか、と心で呟きながら。