ひねくれものとおかしな生きもの








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第二章〜物理の法則を無視した奴ら
中途半端な切り出し
部屋や他諸々の掃除や片付けが終わったので、あの“会議をしている”部屋に渋々戻る事にした。

多分、一切れだと量が足りないだろう、と思い後で再び鮭を焼こうと思った時、箸の存在を忘れていた。再びさっきの部屋戻り、会議室と化した(その時は化していた)部屋に入る時には気づかれたのか、さっきとはまるで水を打ったようになっていた。

どこからともなく流れてくる重苦しい空気の中、意を決して中に入った。

廊下から入って、視界に入ると直ぐに一匹を除き全員こっちに向けてきた。警戒していたのか、まだベッドから移動していた事も、した形跡も無かった。

やはり、小柄な動物でも何匹もいる(そもそも画がシュール)と少し威圧感がある。でも一匹一匹は痩せてて毛並も荒れ、所々に古傷が目立つなど、とても弱々しく痛ましいものであった。

しかし、そう思っていることをよそに、何かひっきりなしに仲間内で目配せをしていた。

その時、そのポケモン達は、

『やっぱあんたが行きなよ』

『いやいや、俺、無理。ここは気が強いグレイシアがやってくれないと、なあ』

『それだったらこの中で一番あいつに面識があるエーフィが行くのが道理なんじゃ・・・』

『私、会話口調で話すの苦手なの。それだったら翻訳さんに行ってくれれば?お話、上手なんでしょ』

『えっ、私?それだったら・・・』

そう、エーフィを介したテレパシーの心の中の声で、誰が出るかの話をしていた。その様子はまるで責任をなすり付け合ってるような様子で、内容はわからずとも、恵の目にはその様子が滑稽に見えた。

何やってんだ?と思うとピタリと動きが止まったように思えた。その時、エーフィ達はこの事を勘付かれてしまったので、表には出さなかったものの、内心焦っていた。更に安全策として急に動きを止めたのもまずかったらしく、余計に怪しまれてしまった。

その行動にどんなやりとりがあったかはさておき、皿をまた使うということで片付けようとした時、一つだけ、まだ食いかけのものがあった。その主は、秋なのに緑色の葉っぱ(常緑?)をたくさん付いていて、動物なのか植物なのかはっきりしないよくわからない生き物、命名は“キャベツ”、そいつの物だった。近づいて見てみたが、その葉は作り物やまがい物では無く、葉脈がちゃんと有り、見た感じ普通のどこにでもあるような本物の葉っぱだった。

詳しい観察は後にして、その皿を見ると明らかに嫌がって残した形跡が見られた。本当に軽くかじっただけ、それぐらいだった。腹が減っているのに食べれないのは単純に嫌いではなく、そもそも食べ物が体を受け付けないという現れも、食べようとしたが無理だったという様に、吐き出した残骸も残っていた。

肉類が駄目なら草食動物だな、と思考の方程式を一瞬で立たせた。

また鮭を焼く事は取りやめ、庭の畑に趣味で生やしているアスパラガスを収穫することにした。昨日たけ爺からもらった椎茸も視野に入れたが、植物とは違い菌類なので、これも無理だと思った。後は火を通したものが嫌かそうでないかぐらいだろう。そう思いながら、きつきつのサンダルに履き替え、竹林のようになっているアスパラガスの畑に向かうのであった。


















それを見届けたエーフィ達はあの人間にあまり深追いされなくて良かったと、まずは一安心をした。さっきの心情をみんなに伝えてから、脇でサンダースが、

『なぜ、さっきは“私が行く”とか言ってたのにさ、いきなり気が変わって』

『仕方が無かったのよ。なんかいきなり頭の中が真っ白になったんだから』

あまりにエーフィらしくない答えだったので、声は出なくてもみんなが驚いてしまった。それらを代表するように、

『何それ、どういう言い訳?』

実際に耳が痛くなるじゃないかと思う位、強い思念がグレイシアとシャワーズから同時に飛んできた。少し顔をしかめながらも、それに答えた。

『私だって、焦ることぐらいあるわよ。さっき心を読んだら、さっきも、今の時も私達が会話しているのがバレてたのよ。まさかの予想外の事が起きたんだからら、普通に腰を抜かす位になるんじゃないのかしら?』

さらにとんでもないことを言いながら、開き直ったので、完全に空気が凍りついた。

『えっ?』

『は?』

『ちょっと待てーい!』

ヤバイと感じながらも、状況飲み込めずにいた中でブースターが一声(もちろん心の中で)を挙げた。

『バレたって、本当?どうやって分かった?』

そう言われたエーフィは無言で、視線の先をシャワーズに変えた。頭の整理がついていない中、突然話題を振られてきたので、先ほどの勢いとは違い、

『な、何?私に何か用?』

と、動揺が満ちていた。そのまま、

『まだ自覚していないの?さっきの大声』

『えっ・・・、ってまさか、あんたを叱っただけで、とか』

『“だけ”で、片付けられるレベルじゃないでしょ。あの人間が出したガタッって音の原因も関節的にはシャワーズの大声でビビったせいだから。それだけ声が大きかったの。ちなみにさっきの心の会話も、元からバレてたわ』

と、耳が痛いことを返され、さっきまでの立場が無くなってしまった。みんなが睨まずとも、その事が一番良く分かるのは自分なので、すっかりしょげてしまった。そんな事を心配して、

『大丈夫だって、過ぎた事なんだし。あいつ、全然気にしてない様だから』

これ以上この事を(とが)めず、サンダースはシャワーズを励まして再び元の話題に戻ろうとする。

その時だった。

あいつが戻ってきた。手には植物らしきものを持っている。

『やっぱり私が話してくる。だって次にあいつと接触するのは私だから』

そう言ってきたのはリーフィアだった。

















手頃な茎を刈り終え、部屋に入るといきなりさっきのキャベツが、

「あ、あの、みんなに変な、ええと、ニックネームを付けるのを、や、やめてくれませんか」

と、ところどころ早口で、緊張してますアピールが鼻につく話し方で話し掛けてきた。その時、

「何言ってんだこいつ」

と不意に、心の中の声を外に出してしまった。その声に反応して、

「ええっ、あっ、ちょっと、その・・・」

と隣の“ヒモ”と呼ぶ事にしてあるやつに、何か助けを求める様に、目線を少しずらした。恵はつい、せめて分かりにくくしろよと、あまりの初々しさで思ってしまった。

その時、実際に心の中で、助けを求めていた。

『どうすればいいの?』

『ゴメン、いきなり言われたって、私にはわからないよ』

『じゃあエーフィは?』

『すまないけど、私もよ。てか何であのタイミングなの?』

『ちょっと・・・』

その分かり易い様子を見て、一体何がしたい?の思いを込めたため息をついてから、

「なんかよくわかんねえけど、とにかく腹減ってんだろ。なんかしら作ってくるからちょっと待ってろ」

と今までの流れを軽く無視したが、一応台所に向かう事にした。やる事は、数本のアスパラガスを洗って小さい輪切りにして並べる、それだけである。小さく切ったのは、弱って噛む力が弱くなっていた事を考慮して、食べやすくするためである。

少々雑になって、最後の方が乱切り状態になったが、大きさは問題ないので、別に気にしなかった。火を通すことはまた後で出来るので、まずは生で食べてくれるか、それだけであった。

皿に盛られたアスパラガスと言う物の変わり果てた姿を見て、匂いを嗅ぐなり、色々警戒していたが、特に感じ取れる危険な物は無かったので、一つだけ食べることにした。一欠片食べる久しぶりに食べる懐かしいあの味が。そのまま、無我夢中で口の中に次々と放り込んだ。

やっぱり食欲には皆逆らえないんだな、と思いながら勢い良くがっつく様子を見ていた。その後、

「まあ、まだまだ物足りない様子だけど、もう一個食うか?」

とポケモン達に聞いてみた。すると、首を縦に振る姿があった。言葉(日本語)が通じるのはいいんだか悪いんだか、やはり微妙な気持ちになる。恵は軽く首を捻りながらも、三度(みたび)台所に行こうとした時、かすかに咳き込む音がした。あの野郎か、と思いすぐに戻った。

その頃、突然、何かが詰まり、息が出来なくなった。勢い良く食べ過ぎたのか、時々余り噛まずに飲み込む事も少なくなかった。その内一つが誤って気道に入ったのだと思っていた。吐き出そうとしても空気が足りない。背中をさする感覚と、大丈夫?という声があったが何も変化が無く、そのまま視界が白みながら、苦しみの中、意識が遠のいて行くのを感じていた。

そんな時だった。少しな抱きかかえられる感覚の後、意識を呼び戻すように、背中に大きめの衝撃が走った。何度も叩かれている内に、喉の奥にあった栓の様な物が、徐々にせり上がってきた。やがて、吐き出す頃には、涙目になりながらもゼエゼエと息を吹き返していた。

やっぱりやりやがった。もし、窒息した時の対応を知らなかったらどうすんだよと、そのキャベツの背中をさすっていた。

弱った身体の背中を叩きつける事に少し抵抗があったものの、自分に出来る事はこれぐらいなので、やる時はためらいなく、実行さらざる得なかった。たとえ、軽く気管に物が詰まっても、元気な人ならむせるだけで、特に問題は無いのだが、人間の幼児や老人、今回は弱った動物だったが、吐き出す力が弱いので、それで窒息死に至る事も珍しくない。そのため昨日といい、久しぶりに寿命が短くなる様な思いをしたと思っている。結局、助ける事がで出来たので少し安心した。

なんとなく原因を考えて、やっぱり小さく切ったのがいけなかったのか?と思っていると、

「あの、・・・さっきはありがとうございました」

と咳を交えて声が返ってきた。潤んでいた目は人の瞳の色を明るくしたような茶色で、周りの葉っぱや薄い黄色の体毛の中で、少し目立っていた。

「別に礼なんて必要ないし、まあ、次から気をつけろよ」

これだけを言い、今度こそ、台所に向うことにした。その言葉を聞きながら、

『どうしよう、いきなりずっこけちゃったから、変な目で見られて無いかな』

と、遠ざかる背中を見ながら心ので心配していた。

レンジで温めただけの焼鮭の切身は意外と好評で、何匹かのポケモンは皮どころか、骨まで綺麗さっぱり食べてしまった。この朝飯で使った量の合計は、一メートル弱の鮭丸々一匹と、アスパラガス始めのが六本、その後のお代わりで四本という、とんでもない量だった。そもそも相手が九匹もいるのでかなうはずもなかった。

今日だけで鮭丸々二匹食うのか、と落胆しながらも、まるで元から何も乗せていなかったと思うほど綺麗になった皿を集めるのであった。

そして、その時の食事の会話で、お代わりの件でブースターはこっぴどくエーフィに叱られた。

■筆者メッセージ
お久しぶりですね。ちょっと色々ありまして、かなり更新が遅れました。すいません。
こんな感じですが、これからも宜しくお願いします
からげんき ( 2014/08/05(火) 09:25 )