01 引っ越し
あれから一週間。俺はすっかり元気になっていた(受け身)
しかしいろいろと大変な一週間だった..色々とホモなウインディや妖艶なキュウコン、さらには
弁護士なニャオニクスまで来てくれたりした。
.....まぁマエフリはここまでにしておこう。今、どこにいるかと言うと...
「あーそこ慎重に運んでくださいね」
「・・・はいはい」
アパートの一室(甘い桃の匂い)で引っ越し作業の手伝いをされていた。
アリサさん曰く、『サカイとか業者さんがいればなぁー』とか。
なんだよサカイって。業者なら専用の照明弾(小売価格43000。結構お高い)
を空に向かって打ち上げれば30分程度で来るらしい・・・。
実証はないがそんなかんじだと友人に聞いた。
「・・・・ふう」
「賢者してないで(休まないで)まだまだあるんですから」
「はーい・・・」
次は本の整理。
うっへえ、いろんな本が本棚の中にぎっしり・・・それに収まらなかった本が
脇に山積みになっている。どう言うこっちゃ。
どれどれ・・・『MEWTWO and DNA』...ミュウツーとディーエヌエー...難しいす。『クローン作成及び生成についての批判』...へぇ。『おいしいポフィンの作り方』....あれ?何処かで見たことあるようなないような...?
次々と出てくる難しそうな本。俺も意識せず難しい顔をしてしまう。
しかし、それさえも忘れてしまう本がまた次々と出てきたのであった。
「....『楽になれる本』....??」
「・・・・・」
本を読み上げた瞬間、アリサさんの体が一瞬止まったように見えたのは
錯覚ではないはず。
「ア、アリサ・・さん?」
「・・・・実は・・・私・・」
「・・・・え?」
「・・・・なーんちゃって!ただ興味があったから買ってみただけですー!」
「正直何かシリアスになると思って草」
ただあくまでも読書用としか買ってなかったそうだ。
「さぁ、残りもかだつけちゃいましょー!」
「ういうい・・・ん?」
棚の上を見ると・・空弾薬?
「なんですかこれ」
「・・・あー捨てちゃってください」
「でもとっておいていたということh」
「・・・・捨てなさい」
「・・・・え」
「二度言わせないでください。『捨てろ』」キッ
「わかりましたからにらまないでくださいこわい」
というか自殺がうんたらかんたらの本を読み上げてからアリサさんの様子が変だ。
何もしてないのにいきなりにらまれたりいちいち確認をとっては『おきになさらずー』と。
あげくには何も言わずに足を引っ掻けてくる。
流石の俺もちょっとぷんぷん。
あ、足かけられた。
「あのですね」ゴウッ
「あぇ・・・ひゃっ!」
「俺の堪忍袋の耐久度でも調べる気ですか」ゴゴゴゴ
俺の背の炎がめらめら。
ぷんぷん。
「お、怒るんだ・・・」
「・・・・・」ドドドドドドド
無言で右手を振り上げる。より恐怖感を煽るためゆっくりと。
「わーわーちょっとまってくださ・・・」
「慈悲はない」ブンッ
「!!」
「・・・・捕まえた」
「え?」
「さっきから変なやつが飛んでたんですよ。いらいらしたんで集中力あげてつかみました」
「怒ったわけではなかったんですね・・・」
「いや正直ぷんぷんしてます」
「・・・・てへぺろ」
「 (殴りたい)」
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「ここが新築・・・?」
「といっても巨大な木の中をくりぬいたようなもんですがね」
「ってここ俺の母さんの墓場に近い」
「そうだったんですか・・じゃ後でお参りに行きましょう」
俺の母さんが眠ってる場所だから町の名前は知っている。
町名を確か『新 あらなき町』。この町は変な空襲にあって沢山のポケモンが・・・
でそれで町の中心にはもはや国立といってもおかしくはないほど巨大な
墓地がある。その中心には・・・
一年中、何があっても折れないし枯れずに、
まるでその辺りの時でも止まったかのように
咲き誇り続ける桜、題『不屈の桜』が名物になっている。で、何故かその下に
俺の母さんが眠ってるわけだ、がそんなのお構いなしに
その桜をシャッターするやつが後をたたない。縁起がいいらしい。
「じゃあとっととやることやっちまいましょう」
「あ、はーい」
アリサさんの荷物はバリエーションが様々。途中でいるものなのかどうなのか
分からないものやぬいぐるみ(単価3100円ほど)が何個も運ばれたり・・
パソコンにいたってはデュアルモニターであるからいかに頭がいいかを
かもし出している。
そういえば彼女の職業であるが・・・主に株の買い取りや配当で
色々荒稼ぎしているらしい。親父(義理)曰く、よく都市のマクドや洋菓子屋に出没するとのこと。
いくら使っても底が見えない財布がうらやましい。
ここでそのアリサさんが休憩を入れようと言ってきた。
「ぷぁー・・・お茶おいしー・・・」
「うめこぶ茶もいいもんですね」ズズズ
「ねぇヨウガくん」
「ん?なんでしょ?」
アリサさんが何か言ってきた。地味にヨウガくんって呼ばれるのは
はじめてかもしれないし悪くない。
「私、何に見える?」
「いや、何って言われても・・・俺にはショッキングクリーム色(?)で九尾の甘党キュウコンとしか言いようがないんですがね」
「あはは〜そうかなー?」
「やっぱ普通のキュウコンでいいですか」
「えーなんだかあじけないなあー」
「じゃあ変態」
「ちょっとー・・なんですかそれわー(笑)」
ちょっと頭をペチっと叩かれた。傍らから見れば引っ越したばっかりの
アツアツカップルとか思われそうだ。でも生憎俺には先客がいるみたいだし
なによりこんなところ見られたら呪い殺される。
「でも見た目的には普通にしてりゃ問題ありませんよ」
「・・・・・ふふっ」
「?」
「いやはや、こんなに話が弾んだのはいつ以来でしょうね・・・」
「え?」
「こっちの話ですよ〜!楽しかったな〜・・・あ、きょおはここらへんで
いいでしょう・・・また明日、残りのものの運びだしお願いしますー」
以外と早く切り上げられたので正直驚いている。もっとこう、へんちくりんな
作業でもするのかなと思いきやそうでもなかった。状況的にはあと少し
大きな荷物を運び出して、本棚に本を入れたりそういう細かいことをすれば
完璧に終わる感じだった。
・・・・さっきも言ったけどアリサさんって普通に見れば普通に綺麗で美ポケな
ポケモンなんだよなぁ・・・軽くレイアといい勝負しそう。
レイアはグレイシアだから相性的にはキュウコンのアリサさんが有利・・・?
「おわっと」
「うわっとサーセン・・お?」
考えごとしながら進んでいたらおっきなリザードンとぶつかった。
いや、このリザードン・・・
「レイさん・・でしたっけ?」
「ヨウガ君か!・・・・おっきくなったな〜」
「そんな変わってないと思いますよ・・・で何故あなたはここに?」
見れば、レイさんは花束を持っていた。
花束は綺麗なシルキーローズで統一されたものが一束と
あとはグラデシアの花束と・・青バラ一輪。
一本、二本、たくさん・・・
「あ〜・・・墓参りの代行ってとこかな」
ここが大墓地の入り口だということに今気づいた。
「代行?いったい誰の」
「それは・・・・まぁ、ね」
「俺もここにいくつもりだったんで・・・御一緒しておけですか?」
「・・・ああ、構わないよ・・・その方が早い」
「その方が早い・・・?ま、いいか」
早速墓地の門を潜る。一面ずーっと墓地である。
想像するに、多分洋風の墓地といったら多分分かりやすいだろう。
っと、早速着いたようだ。ってここは・・・
「あれ?『炎咲家ノ墓』・・・じっちゃんとばっちゃんのお墓じゃん」
「そうだね。・・・確か、手向けるのはグラデシアの花束だっけ」
「じっちゃんがシェイミだったから?」ガッショウ
「うん、多分そうだと思う」ガッショウ
「・・・・おりょ?確かれいさんって代行・・デスヨネ」
「そうだけど?何か?」
「俺、頼んでないような気が」
「まだ気づかないか・・・ま、次でわかると思うよ」
お墓参り、といえばおおざっぱにいえば俺ぐらいしかできないはず....
とか思いながらも俺らは
洋風の墓地を進んでいく。美しい並木通り。そこに教会が点在していて、
それ自体も神々しい光を放っている。綺麗だな・・・
「ヨウガ君?」
「・・・・」ボケー
「ヨウガくーん?」
「・・・・あ、ボケってました」
「そりゃそうだよね・・・綺麗な道だ」
「これ、どこまで進むんですか?予想は出来てるけど」
「もう見えるよ、ホラ」
レイさんが指差す先には・・・・
あの『不屈の桜』があった。関係無いが、レイさんは何かいい匂いがする。
あの丘には俺の母さんだけが安らかに眠っている。
「KAGURA ENZAKI R.I.P. 1963〜1987 ・・・短すぎるよ」
「俺の母さんは病弱だったんだ・・・それは知ってた」
俺の母さんは実に24歳という若さで逝ってしまっている。
実質的には23で亡くなっている。皮肉にも誕生日で幕を閉じたらしい。
なので一度は見てほしかった俺の小学生姿はおろか、記憶が定かではないが
幼稚園?に入ったところももしかしたら見ていないのかもしれない。
「レイさん・・今思い出したんだ」
「?」
そう、俺はあることを思い出した。覚えているだろうか?あの写真を。
「あんた、あの写真に写ってたでしょう」
「あの写真・・・・はて、なんのことだろうか」
「集合写真だよ」
「・・・・・・あー」
そう、親父に見せて貰ったあの写真だ。
その中にリザードンが写ってたはずだ。
「その墓参りも代行じゃない。自発的に来たんだ」
「・・・・何が言いたい?」
「・・・・・ひょっとして、『俺の父さんがどこにいるか知っている?』」
「ひゃぁ・・・すごい観察力だなぁ・・・」
感心された。それほどでもないうへへと心の中でニヤケておく。
「・・・まぁ代行っていうのは本当だけどね、確かに君の父さんに頼まれた」
「・・・!!!」
「でもね、俺個人としてはこいつを弔う為に来た。個人の問題ではね」
といいながら先程の青いバラを取り出した。
「青いバラ・・・?」
「ああ。弔い先のやつはね、凄く気高いやつだったんだ・・俺の憧れでもあったよ、
年下だけどね」
「っと忘れてた。」
彼はポンとシルキーローズの花束と・・・純白のハンカチをそこにおいた。
「・・・シルキーローズの花言葉、知ってるかい?」
「・・・全然」
「ふふ・・・一本だけなら『永遠の愛』とかそういう意味だけど
沢山あるとね、不思議に花言葉が変わるんだよね・・・
『もう二度と会えない悲しみ』だっけ?」
「へぇ・・・」
「君の母さんはね、凄く優しい人だったんだよ」
「知ってます。ドがつくほどのお人好しとか」
「できればこの事は君の父さんからいってほしかったな・・・」
「しょうがないです、逆にそのシルキーローズの花束を送ってやりたい」
「ひどいねぇ・・(笑)」
俺はまた合唱したあと、少し言葉をかけた。
「母さん・・あなたを見たい。しょうがないけどね、病弱だったもん。
俺は健康だぞざまあみろ。・・・だから多分当分は見れそうにないや。」
「・・・・・。(幼い頃に母も父も・・・か)」
帰り、俺たちはまたある墓標によっていった。
「おう、ライジ・・・あれから何年がたった?」
「ライジ・・・ねぇ」
恐らく写真のサンダースだろう。
「そうだ。ヨウガ君」
「?」
「墓への報告もかねて言うことになるけど・・」
「??」
「もうすぐで君は父と会えるよ。」
「え・・・?!」
「頭脳明晰なお前ならわかるよな?ライジ...ヨウガ君、君の観察力を持ってしたら
すぐにわかるよ」
「まじかよ・・・・」
「じゃあねん」バサッ
「えっちょ・・・」
レイさんはいつの間にか帰っていってしまった。墓地には俺一人。
ふと前を見ると、不屈の桜が燃えるように紅く光っていた。
レイさんは観察力がうんたらと言っていた。うーん....
さっきから花言葉を頻繁に口にしてたんだからこの青薔薇にも何か意図はあるはず。
いや、そう考えるのが妥当だろう。
「えと...青バラの花言葉は・・・『不可能』?暗示かな?」
不可能?..まず花が手向けられたのはライジとかいうやつで...
レイさんも尊敬するとかいってたしそれほどの
天才...なのかどうなのか...いや、レイさんが頭脳明晰だとか言ったんだから
相当の天才だったんだろう。または『愛されるバカ―』なのかどうなのか。
....まとめていえばそんなライジでも『不可能』だったこと?
それに墓の報告もかねて?
.....ということはライジは生前レイさんと何かをやっていてそれで
夢半ばで散って行った人なのか?
「何がどう父さんとつながってるのか....んーサッパリ...」
やっぱ難しいことは考えない方がいい。
俺はなぜか足早にその場を去っていた。