15 精神の・・
・・・・なんだろう、次第に身体中が痛んでくる。っていうかメッチャ痛い。
そして体も動かず、身体中の見回す限りに包帯が巻かれていたり。
なんか知らないけど足が天井に釣り下げられている。
「・・・・うぅ・・」
「あ、ヨウガさん起きました?」
そうメガネをかけたキュウコンが言ってくる。えっと・・名前は確か・・・
「アリサ・・・さん?」
「あ、覚えていらしたんですね。よかった〜!記憶喪失なんかに
なられたら大変でしたし〜・・」
へぇ〜、俺、そんなに危険な状態だったんだ。
ってあれ?ユウがいない・・・?
「かくいう私も貴方がどれだけ生き長らえるかの観察気分でいたんですけd」
「・・・ユウはどこに・・?」
「え?ああ、あの方なら比較的軽傷だったから病院搬送はしなくても良いかと」
「ふぇ〜・・・」
まぁ軽傷なら・・・ってことは俺重傷?!
「お、俺が気を失ってから・・」
「えー4日ぐらいですNE」
「マジかよ」
そう俺が驚いたのをよそにアリサさんが笑っていた。
そして「ICHIGO大福・・」といいかけた瞬間、ガラッと病室のドアが
勢いよく開いた。で、そこにいたのは・・・
「ヨウガ〜・・・元気してた〜・・?」
「・・・義父(オヤジ)?」
「あっ、ガイさん・・・ですよね、ご無沙汰してますん」
「あぁ、この度はうちのヨウガを見ていてくれてどうも。」
「いえいえ、それでは役目も終えたし帰らせてイタダキマス・・・あ、気が向いたら
また会いに来ますね」スタコラ
「いつでもどぞー」
パタン、とユクーリドアが閉まった。
で、今は義父と二人きりだけど・・
「・・・どした?こんな忙しいとk」
バシィン!!
その音が静かな病室になり響く。ほっぺがじぃんじぃんと痛くなってきた。
「な、なにすんd」
「バカ野郎!!!」
ちょっとビックリした。あの温厚なオヤジがここまで『こわいかお』で
怒ってきたのなんて何年ぶりだろう。
「オマエ、無茶はするなってあれほど言っただろう?!数年前!!」
(数年前て・・・)
「分かったか?!ゼエエエエエェェッタイ!二度と!!こんな真似はすんなよ?!」
「・・・・」
説教されるのも久々かもしれない。
再びオヤジが手をあげてきた。
またイタイのが来るのか?!
そう思って精神的に身構えていた。
フサッ「・・・・?」
イタイのは来なかった。かわりにフサッとモフモフなのがきた。
数秒後にそれは胸のフサフサだったとわかるのだが・・
「よかった・・・・!!よく生きて帰ったな・・!!」
「ぇ・・・ぁ・・・」
あったかい胸毛が顔に当たって少し心地よい。少し汗っぽいが、
もしかしたらそれは・・・・とにかく、言葉なんて出なかった。
「あ、ありがと・・・」
「・・・・・」ギュッ
もっときつくハグってきた。あったかぁいなぁ・・
「じゃ、用も済んだし帰るね」シラァ
「・・・ファ?!」
野郎。
「また何か用があったら電話で連絡してね・・ってどったのそんな怖い顔しちゃって」
「・・野郎・・野郎・・・」イラァ
「あっはっはもしかしておこなの?ちょっとやめてくれないかなぁ、
これから仕事もあるし今日は色々用事があるしじゃれるならまた今度で
あ〜いや〜こんなところにICHIGO大福が〜
あっはっはあああうおおおおおお神速うううぅぅぅう!!!」
「扉にロック掛けといた」
「な、なぬっ?!・・・よ、用意周到ジャマイカ、ヨウガくん」
「なぁに、帰るにゃ早い、もうちょっとゆっくりしてけよ」ボキボキ
「や、やめっ、わああああぁぁあ!!」
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「ハッ?!」ガバッ
「わわ、ユウ!!」
「なんか知らんが今なんとなくスッキリした」
うん、何て言うか今まで溜め込んでたストレスがパァーってなくなった感じ。
ってここ和室?レイアちゃんとアイちゃんとジンさん・・・
・・・だいたい俺がどんな状態だったかは予想がついてしまった。
「ユウ!・・・よかった・・・」
「お、おぅ」
何て言うか、今思ったことであるが昔と比べてだいぶ女子に耐性がついたのではないか。
昔はもっとこう、女ったらしっていうかなんというか・・・
「その様子だと明日明後日には直ぐに動けそうじゃな」
「あ、あぁ・・・もしかして今まで看病とか?」
「しょーゆーことじゃな」
一体何日間寝ていたんだろう。っていうかヨウガがいない。
・・・・まぁあいつのことだし無事っちゃあ無事だろう。
この際気にはしないことにした。
あっ、だんだんこの前(ボッコボコにされたとき)のことを思い出して・・・
ん?・・・・いや、だとしたらおかしいなぁ
「なぁレイアちゃん」
「何?不自由なことがあれば何でも・・」
「いや、そんなんじゃない。・・俺の記憶が合ってれば・・・あっ」
そうそう忘れてた。ここ、ジンさんやアイさんだのいろんな奴がいたんだった。
「・・・とりあえずレイアと二人きりで話がしたい」
「そうかのぅ」
「あ〜・・わかりました、いきましょジンさん」
いやじゃぁーいきたくないんじゃぁーって聞こえたけど
あの様子だと引きずっていってるな。
と、居なくなったんだし早速話をしようか・・。
「何?ユウ・・」
「・・・実はな」
俺は洗いざらい洞窟で起こったことを話した。
レグやラルゴのことやそいつらがクソ強かったこと。
・・・あのリーフィアのことも。いえ・・なんというかその・・・・
不覚にも・・・惚れちゃいましてね・・・フフ・・・
「・・・・・今の話、本当?」
そう、レイアちゃんがいってきた。あぁ。
今まで嘘ついたことがあるか?と、定番の返し方をした。
「ずっと嘘ついてきたでしょう」
「・・・・で、でも今のは本当だ!ヨウガに言ったら多分・・あれ?」
レイアちゃんはなぜか震えていた。
グレイシア特有の青い顔が赤くなってたような気がした。
にしても何故今のタイミングで?
「ヨウガね・・・意識不明の重症だって」
「・・・・・はぁ?」
マジで?アイツが?俺よりも多分丈夫なアイツが意識不明の重症?
・・・・ちょっと信じられないが、今この場にヨウガが居ないことを思いだし、
その話は本当だったのか、・・・そう確信した。
「いや・・・マジかよ」
「ええ・・・・足りないんだって」
「・・・・・いや」
「・・・??」
意識のうんたんかんたんでも生きるのに必要なエトセトラでも、多分生きてるだろう。
・・・だってそういう奴だもん。
「多分大丈夫だ、きっと」
「・・・・・うぅ・・」
「・・・馬鹿だから」
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「っへっくしょーい!!」
俺は静かな病室で大きくくゃみをした。なんだか噂された気分だ。
なんだかんだあのあと義父はなんとか半ば乱心状態だった俺からなんとか許されたらしく
(というのもその間のことを俺は覚えていなかった)
・・・後々の話で看護婦さんがそそくさと帰っていくぼろぼろなウインディを
見たとか見なかったとか。
・・まぁ、あんなクソオヤジだけどすっごくいいオヤジだったっては知ってるけどね。
昔の話にはなるけど・・・
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「だからスミマセンって」
「あぁ?!こっちは訳のわからん餓鬼にネックレスを奪われたんだよ!!」
「いえ、こいつらもまだ子供だし・・」
「知らねぇよんなこたぁ!!」
その時のオヤジの回りにはすごくコワイお兄ちゃんたちがいっぱいいたことは
今でも鮮明に覚えている。というかボコられる。
「でも・・・それ俺のネックレスですよね?」
「ッ!・・・・・まぁあんたが土へ座するなら許してやっても・・・」
ドヘザツ「・・・・・」
「ははっ、コイツ本当にしやがったぜ!」
ハハハハッ、と周囲にいたコワイ(以下略)が笑いだした。
「おらあっ!!」ドゴッ
「恥を知りやがれ!!」バキッ
「んぐふっ!がぁっ!」
ムテキのオヤジが体をはっていた。
まだまだ子供だった俺とレイアとユウは
どうすることもできなかった。でも当時の俺の堪忍袋の尾が切れたらしい。
無謀にも俺は・・・
「やめろっ!やめろぉっ!!」
「くるな・・・ヨウガぁ!」
「あぁ?・・とんだドラ息子だなぁあんたの息子は!!」バシィ
思いっきり蹴りを喰らったのは今でも思い出せる。
「ヨウガ!大丈夫?!」
「しっかりしてよ、ヨウガ!!」
また周囲に笑い声が響く。・・・・ここでようやく、動き出した。
「黙っていれば・・・・野郎・・・」
「んだよ?やる気か?!」
今思えばこの人たち、大丈夫だったのだろうか・・・。
つまり、そういうこと。
・・・『ムテキのオヤジ』が動き出した。
「野郎オブクラッシャアアアアアア!!!!」
・・・・あれから数分もかからないうちにコワイ人達は
全滅、半殺しの状態だった。『ムテキのオヤジ』はほとんど無傷で
身体中についてる紅いものは全て彼らのもの・・・だったのかも。
「「「パパ!!」」」
そういうなり俺たちはオヤジに駆け寄っていった。しかし・・・
「・・・・オマエらぁ!!!」
「?!」 「ひう?!」 「わわっ!!」
滅多に聞かない怒号が来た。
「いいか?!こんな無茶な事、誰がしろと言った?!」
「ごめんなさい・・・」
「でも、パパのネックレス・・・」
「・・・だめだった?」
「・・・俺はなぁ、こんな思い出よりも今はオマエラが大事なんだよッ!!」
「うう・・・」
「ごめんなさぁい・・・」
「・・・・わかればいいんだ」
そういった次の瞬間。
「『マジカルリーフ』!!」
「パパ後ろ!!!」
「?!・・伏せろ!!」
オヤジは俺たちを庇った。
オヤジ独特、いやウインディ独特のモッフモッフはこの頃から御健在であった。
「まだ意識があったか・・・」
「ヒィッ?!」
みなぎるほどの殺気だった。
で、そのうちパトカーやら救急車やらが来て・・・
「じゃ、お父さんちょっと事情聴取受けてくるから」
「パパ、頬の傷・・・」
「だいじょーぶ?」
「ん?ああ」
今のオヤジには『メ』のような傷がある。
縦の傷は昔から、横の傷はまさにこの時。
「大丈夫。隣のおばちゃんちに行ってな。」
「・・・じゃあね、パパ。」
レイアとユウは先にいっていたが・・。
ちなみに、隣のおばちゃんとはガルーラのおばちゃんであった。
オヤジはパトカーに乗り込んで、忙しそうに電話をしていた。
と、いうのもこのころからオヤジは謎の出世を果たし、
まさに警視総官になる直前の状態であった。
今思えば、そういう大人の事情で電話をしていたのかも知れない。
この時の空は夕焼けで紅く光っているように見えた。
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・・・・・やっぱりオヤジはいいクソオヤジだった。
「・・・・あんがとな、オヤジ。」
そう俺は呟いた。
あのときと同じ空だった。
・・・ん?あそこにいるのは・・・アリサさんじゃないか。
どったのそんなとこで。
「うう・・・腹へった・・・」
そう思って私はすぐ近くのマクタードーナツに行くことにした。