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「食らいやがれこのイカれギザ野郎」
「ぐ・・・っは?!」
やられた・・・と思われていたユウがなんとラルゴの腹に
右ストレート(パンチとは言っていない)を決め込んだ!
さすがのラルゴもこれは予想外のことだったらしく、もろ食らった。
「(やっぱ生きてたか・・・ってかあいつそんな器用なこと出来たっけ?)」
ユウもヨウガ同様ぶきっちょ、不器用なので正直こんなことはできないと思っていた。
しかし『みがわり』と自身の速さを生かしてそれを応用できていたので・・・
まぁなんとなく不思議に思えただけであった。
「・・・っと、ヨウガ、鑑賞は終わったか?」
「・・・・あ、こっちにもいたんだった」
すっかりレグのことを忘れていた。さすがぶきっちょ。
「−−−『一閃』」
「・・・・やべ」
ズバンッ!という音とほぼ同時にまわりの物が切れていた。岩、壁、水晶など・・・
ヨウガはかろうじてそれを避けて岩陰に隠れた。
「・・・一応隠れはしたものの・・・」
そう、隠れた岩も所詮は切られてしまった岩と同じ。
もしレグが手当たり次第に周りの物を切って行って俺TUEEEEEEEE
なんてことされてしまったらみつかる可能性は大きい。
で、なんとしてもそんな事態は避けたいが・・
(何かいい案は・・!!)
こんなときにアホー知恵袋があったら、なんて思っているが・・
(ってあれ?アホー知恵袋に刀特集ってのがあったような・・?)
内容としてはこうだった。
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Q:総合格闘の近距離攻撃で相手との間合いがつかめません。どうすれば良いでしょうか。
ベストアンサー
A:なら逆に相手の懐に回ってみてください。一度はやられるかもしれませんが相手の弱点が分かってしまうかもしれません。
A:ggrks
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(・・・一度懐に回る、か。)チラ
「どうしたぁ〜!出てこぉい!!」
(やってみるっきゃないか・・いや、一度やられるんだろ?!
一か八かのギャンブルはごめん・・・)
「こねぇなら俺からいくぞー!!」
ザシュ!!
「?!」
恐れていた事態が起こってしまった。
ターミネーターよろしく片っ端から岩を斬ってきている。
相当不味い。一か八かでも行くしかない。
(くっそ〜・・もう、どうにでもなれッ!)バッ
覚悟を決めてレグに向かっていった。
斬られる?!斬られるのか?!
「うらぁああああぁぁああ!!」
当然、チャンバラの腕前は玄人以上のレグは確信した。決まった、と。
後は『いつも通り』辻斬りでとどめをさせばいい。
(辻斬り・・・)
だが簡単にはそうさせてくれないのがヨウガ。
なんと・・・
「お土産の水晶だ!超高速で受けとれッ!!」
「・・ふぁ!?」
いきなり握りこぶし大の水晶を投げつけてきたのだ、レグは正直ヨウガを見くびっていた。
まぁ、そんな単細胞野郎がこんなことしてくるはずがないと思っていた
レグもレグではあるが・・・
「あぶねっ」ガキッ
「ーーー今だ!!」
あっててよかったアホー知恵袋。ただ懐に回るのではなく、
あの技を使おう、そうヨウガは思った。
『陽炎爆裂拳』!!
水晶を投げつけ、その隙に技を出す。
・・・この技は元々の攻撃が見えない(まんま陽炎の特性)ので、
これで懐に回るのは容易になった。
「腹パンと顔パン食らえッ!!」
「ぐふぅあ!!」
見事にヒット。
かつる。
かつる。
これで勝つる!!
なーんて思ったヨウガが大間違いであった。
よくよく考えるとレグも武士(笑)。
そう隙は長くは見せない。
(ヨウガ・・・お前のこと、少し見くびっていたかもなぁ・・)
そう思い、レグは目を閉じて・・
「とどめだっ!!」
・・・・集中した。
『閃』
深紅の何かが宙を舞う。
ヨウガは痛みを感じなかった。ただ、どっぷりと疲労感が出た。
ーーーーーー斬られた。
「うぐ・・・!!」
(背中一発・・・)
『閃』
当たったらマズイ、さすがにこれは得意の陽炎を使い、辛うじて避けることができた。
しかし、背中に深い一発を見舞われてしまった。こうなってしまえば意識を失うのも
時間の問題。
(う・・・くっそ・・)
「避けられたか・・・」
レグも肩で息をしている。しかしヨウガはもっと不味い状態だった。
(もう・・アイツは騙せねぇ・・同じ手は二度と通じず・・か・・・こうなりゃ・・)
そうヨウガが思う一方、レグは・・
(もう同じ手で来ることはないだろう・・唯一残った手段は・・)
ここで、二人の理念が一致した。
((ーー神風特攻!!))
「決まれぇぇえっ!!」
ヨウガはただ殴ることのみを意識し、レグに向かっていった。
「あの頃を思い出すな・・」
そうレグは言った。
次の瞬間、ヨウガは地面に突っ伏していた。動くことはできなかった。
体が動かなかった。
「へへ・・二の舞・・・か・・」
「・・・全く、そういうとこもアイツそっくりだぜ」
そんなレグの声も聞くことはなく、ヨウガは意識を失った。
「ふぃ〜・・・どーだ、ラルゴぉー・・・終わった〜?」
「ん、まぁ、なかなか強かったが、な」
ヨウガと同じく、ユウも壁に打ち付けられて気絶していた。
まず一言でユウの状態を表すと、残酷の二文字以外では表現できなかった。
だが、どちらも意識を失いつつも笑顔であった。
「久しぶりにいい相手と戦ったな、レグ」
「・・・そーだな」
「で、どうする、ここで始末するか?」
「仕方ないだろう」
レグはヨウガにとどめを、
ラルゴはユウにとどめをさそうとした。
はずだった。
直後に二人は寸止めし、直ぐに意識を洞窟の向こうにやった。
「・・・・ガイ」
「・・・・」
そこにいたのはガイであった。あの気まぐれ警視総官だ。
「見てたのか、一部始終」
「・・・そういうことになるな」
「とんでもないのが来ちまったなぁ・・・なぁラルゴ、どうする?」
「戦っても無駄だな」
一瞬の静寂が入る。
「ーーーこうしようじゃないか」
「ん」
「俺はお前らと一戦交える気はない、ましてタイホーする気もない。で、
そいつらを見逃してやってはくれねぇか?」
「なるへそ、交換条件か・・」
(ラルゴ、奴は本物か?)
「・・・・・」コクコク
小さく頷くラルゴ。波導をつかっても本物であることは間違い無さそうだ。
「ま、いーだろ、目的はこの刀だし・・ほんじゃま、帰りますかぁ」
「レグ・・・帰り、走りだって」
「・・・ふぁ?!」
「今、セルラから連絡が入った。」
「あいつめ・・・一人で帰りやがったな?!」
ガイが瞬きすると、二人の影は消えていた。
「あ、・・・まぁ、うまく騙せたじゃろ」
ん、騙せた?しかも語尾が『じゃろ』って・・・
あのウインディ、相当歳だったのか?!・・・そう、なんと・・
「波導でも見破れぬじゃろうて」
ジンであった。アイの言う通り、昔は腕利きの忍者だったことはあながち
間違いでは無さそうだ。
「にしても、あやつなかなかやりおるのぅ・・
あの『せいりゅーとー』・・じゃったっけ?
あの刀が珍しくやる気をだしとったわい」
(しかるべき相手が見つかればあの刀を譲ろうとはおもっとったが・・・)
「さて、運ぶかのぅ」
両方とも酷い状態であった。早く運ばないと手遅れかもしれない。
「わしの能力もまだまだ現役じゃな」
ジンの能力は『記憶幻像』またの名を『メモリーテスクチャー』。
相手の記憶から読み取った、あるいは聞いた人物に化けることができる。
しかも、波導も全く同じにできるから見破られることはまずないという、
便利な能力(スキル)だった。まぁ、つまり悪用もできるということ。
え?悪用のしかた?それは・・・
とにかく、そういう能力。
しかし、今は瀕死の重症を負っているヨウガとユウを運ぶことが目的。
そういうことに関しては全く役にはたたなかった・・。