06 用事
コンコン!
ドアがノックされる音が廊下に響き渡る。
「どうぞー」
「失礼します...」
ここはこちら側の世界で言う警視庁の警視総監の部屋の前。
ヨウガとユウは用事があってここに来たのである。
ちなみにレイアは頭痛がすると言い、リラはこれまた別の用があると言ってくることはなかった。
さて、ここで警視総監たるガイに会うはずなのだが....
「よく来たねェ」
「ってあれ?ガルザ....さん?」
ガイのいるはずの席になぜかガルザが君臨していた。
あろうことか棒アイスを食べて座っている。
「あ...あのー....親父は...?」
「君たちの親父...あぁ...ガイさんのことかい?彼ならアイドルグループのサイン会
行ってるけど?」
なんとサイン会に言っているらしい。
「えぇー...」
「あー...割と近くだから今すぐ行けばもしかしたら...」
「マジすか、すぐ行けば間に合うんですね?!」
「多分」
「おっしゃ、ユウ、走っていくぞ」
「体力が尽きないのか?お前は...」
そう言って直ぐに部屋から飛び出していった。
「あ、でももう終わってるかも」
「ただいま」
「うわぁ!!警視総監...びっくりさせないでください...ってあんたの息子たちがあんたを追いかけていきましたよ今!」
「ふぁっ」
「マジで」
「マジか」
ガイはすぐさま身支度を整えてドアから出て....
「ちょっくら行ってくる」
「いやそっち窓です」
バリリンガッシャーーン!
あろうことか、窓を割って出て行ってしまったのである。
「はぁ...親子そろって元気だねェ...てか修理大変なんだけど...
今度から窓も上下に自動で開くようにしようかなぁ?」
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「ハァッ...ハァッ...ま、間に合うのかよこれ」
「知らんよバーカ」
ヨウガ、ユウの二人とも肩で息をしながら走っていた。
どうやらSKRHNアリーナでそのサイン会とやらは行われているらしい。
割と近く...ではなく結構遠くであった。
「ってあ...み、見えた...!」
「あ、あれか..!?」
そのSKRHNアリーナが近づいたらしい。
残りの体力を振り絞って、沈む太陽の十倍ぐらい早く走った。
間に合ったか、とそう思った矢先、上から何かが...?
「ようお前たち」ドッスーン
「お..親父...?!」
「もうちと早く来いよ...!」
「ごめんごめん、パパにも用事があってだな..まぁとにかく、路地裏に移動しよう」
「ええ?なんでまた変なことを...」
「いーからいーから」
そのままつれられるように裏路地に行った。すると...
「そーれ、つかまってろよ...?」
「な、何を....うわぁ!!」
次の瞬間、彼らは宙に浮きあがっていた。
「ははっ、『超神速』だ」
「たたた、高っ!」
「聞いてねえぞ親父!」
しかしガイはそんなんお構いなしと言わんばかりに
グインと前進していく。
「とま、止まってええええ!」
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と、ついたのは警視庁の屋上。
「そら、ついたぜ」
「うう...」
「俺ら高さに体制なんてあんま無いんだしさぁ..?」
「はは、わりーわりー..」
で、すこし落ち着いた後、ヨウガは本題に切り出す。
「なぁ親父」
「ん」
「俺の本当の親父ってどんな奴だったんだ...?」
「....後で話す」
そういってそそくさと去っていこうとするが...
「おいおい、逃げんのは無しだぜ?」
「うは...ユウ、早くなったな」
ガイは去ることは出来なかった。ユウがサイン会でもらっていたサイン入りの色紙を
とって立ち憚ったからである。
「わかったよ話すよ....ただし、歩きながらな? 」
「「ニタニタ」」
「まず、だ。お前の親の名前はショウヤ。炎咲ショウヤだ」
「知ってる」
「ザックリいうと、あいつは変態だ。」
「知ってる...はぁ?」
「別の意味でな...何も考えなしにやってるくせに何かと運が良くてな..
割と成功することが多い。」
「はぁ...」
「....幼馴染」
「...今何て!?」
「幼馴染、ってことは初めて聞いたか...?」
なんと幼馴染らしい。なるほど、俺がガイこと義理の親父に
引き取られたのも合点がいく。
「強さもまぁまぁって言ったとこかな...?」
そういいつつも、何故か冷や汗をかいていた。
「...親父、汗」
「....お、おう」
汗ダラダラだった。と、いうことは...
「俺の本当の親父はあんたより強かった...って解釈でいいんだな?」
「っ....互角にしてくれ..せめて...」
いつも先回りしたり不死身だったりわりとつおいガイよりも強いショウヤ...
ちょっと興味が沸いてきた。しかし...
「ショウヤは今事実上の行方不明っつーことになっている」
「「?!」」
ヨウガは特に驚いた。彼の母(故)しがた かぐら ことカグラは
いつも出張だとヨウガに言い聞かせていたからである。
気付けば、すでに警視総監の部屋にいた。
「えーと...お、あったあった」
「「?」」
「これが写真だ」ぴら
そこには左からそれぞれレントラー、サンダース、ウインディ、バクフーン、グレイシア、リザードンが写っていた。
丁度真ん中のバクフーンとウインディが喧嘩?をしていて、それをよそに
レントラーとサンダースが苦笑いしながらカメラを見て、グレイシアは
喧嘩を見ながら微笑んでいた。
「えーと...どれが俺の親父なんだ?」
「真ん中で俺と戯れてるバクフーンだ」
「これか...」
「お前の親父か...案外、似てるかもな」
「そうか?」
「もっというと、右のグレイシアがお前の母さんで、一番左のレントラーが
ガルザだ」
「...皆若い」
「せやな」
「じゃあ、このサンダースは?」
「..そいつか、そいつは天才だ」
「いや名前」
「ああ..ライジっつー奴だ」
「なんで天才っつったんだ?父さん」
「いや...けた違いに頭が良くてな...?俺らの世直しの旅に勝手についてきた...ちょいと言い過ぎた」
「世直し?」
「忘れろ」
「世直しってなんだよ親父」
「俺も気になr」
そこまで言った瞬間、ヨウガ、ユウはヘッドロックをかまされていた。
「忘れろと言ってるんださっさと忘れろ」ぐりぐり
「.....とにかく、ウン百万年に一人ぐらいの天才だった、ということしか言えない。」
「...だった?」
「逝ったぜ、何年か前に。...ここで俺も気になってきたんだが、ショウヤはそれぐらい危険なことをやっているのか?」
「?」
「『まだ足りない』とか言って行方不明になったショウヤの後について行ったんだ。
触れてなかったが、そこのリザードンもついて行ったぜ」
「名前は?」
「聞いて何の得になる」
「こいつ、この前にあったやつかもしれない...!」
「...お前もそう思ったか?俺もだ」
「ユウ..ヨウガ...ま、ホントに知ってるかな?外れたら赤っ恥だぜ?」
「「賭けよう」」
いったい何を賭けているのか。
「GOOD。コイツの名前は....えと....そうだ、レイ、だったかな?」
「.....しらね」
なんとなく、既にあってる気がしたのだが...?
気のせい、であった。
「まぁ近いうちに会えるかもな...で、まだ話すことは?」
「ああそうだ!スミレさん!スミレさんの事件についてだ!」
「あー...悪い、その頃はまだ勤務してなかったんだ。探せばデータぐらいは
あるかもしれないがな?暇があれば探しておくよ」
ヨウガ、ユウはそのまま部屋から出て行った。
「....惜しいなぁ、会ってんだよ、お前ら。」
ガイはそのまま写真を額縁の中に入れなおして....今度は机の上に飾った。