ものひろい隊
少年は手持ち最後のモンスターボールを投げた。ボールはポチエナに命中したが、すぐに飛び出してきてしまった。
「うーん、うまくいかないなー」
仕方なくポチエナを倒してからポツリ呟いた。すると、彼の手持ちのジグザグマがズボンの裾を引っ張ってきた。見てみると、口には傷薬が咥えられていた。
「おっ、ありがとなー! ん? もしかして……」
少年はショップへ駆けだした。
有り金を全てモンスターボールに費やし、少年は4匹のジグザグマを捕まえた。元から持っていたのも含めて5匹となったジグザグマ達を全員手持ちに加えて、また道路へと戻ってきた。
「よーしおまえ達、行くぞー! ものひろい隊、出動だ!」
草むらのポケモン達と戦いながら、ジグザグマ達はあちこちに走り回っては道具を拾ってきた。
「おっ、早速傷薬発見か! と思ったら空の容器じゃないかこれは!」
容器を捨てようとしたが、また拾ってこられても困ると少年は思いとどまった。
「おぉ、こっちはふしぎなアメかな? ってこれはただのキャンディだ! こら、そのまま食べるんじゃない!」
少年は急いで包みを剥いて、あめ玉をジグザグマに食べさせた。
その後もいくつものアイテムが手元に来たが、そのほとんどは空の容器や壊れたボールばかり。結局、少年のカバンの中に貯まったのは大量のゴミばかりであった。パンパンのカバンを背負ってポケモンセンターに戻った少年は、ゴミの分別に更に時間を取られてイライラすることとなった。使えるものは1割にも満たない。それでも、旅を始めたばかりの少年にとっては貴重なものであった。
次の日も、少年はジグザグマ達と共にものひろいに出かけていた。相変わらずゴミばかりだが、道具不足が解消されるまでは続けるつもりである。夕暮れを待たずしてカバンがいっぱいになったため、一度ポケモンセンターに戻ることにした。ゴミ箱の前で分別に精を出していると、誰かに声をかけられた。
「ずいぶんゴミがたくさん入ってるのね」
振り返ると、そこにいたのはジュンサーさんだった。
「ジグザグマ達がたくさん拾ってくるものですから」
「もしかすると、昨日101番道路でゴミ拾いしてたのってあなた?」
見られていたのかと驚くと同時に、ゴミ拾いにしか見えなかったのかと少年は少し恥ずかしくなっていた。
「せっかく道路をきれいにしてもらったんだから、せめて粗品くらいは渡したいと思って探していたの」
そういうつもりでは無かったが、もらえる物はもらっておきたい。その一心で少年は交番へ同行することにした。そこでもらったのは、傷薬とモンスターボールを10個ずつ。あまり高価な物じゃ無いけれど、と言われたが、少年にとっては十分な量であった。
道具がそろって少年はまた旅を続けた。そして行く先々でジグザグマ達とものひろいをしては、ゴミ拾いをしたお礼をもらってまた道具を充実させていくのであった。