55話 脱出せよ!
「これで、最後だ!」
最後の一本を嵌め、一息つく俺達。急いで嵌めたため呼吸は荒くなっている。
「ありがとう…ございました。これで、崩壊しないはずです」
「これ、フラグにならないよな?」
俺はエルと視線を交わしてニヤッと笑った。
「だといい━━」
エルが呟いた瞬間、神殿が大きく揺れた。
「な!?」
「一歩、遅かったようです…まもなく神殿は崩壊を始めます。ですが、クリスタルを全て嵌め込めたので時間と共に復活するはずです」
「それはよかったね!だけど今は僕逹がどうなるかの心配しようよ!!」
エルが怒鳴った。
「ならば美しく散りましょう」
マナフィは静かに言った。
「うわああああ!おしまいだああああ!」
「エル!落ち着け!」
「死ぬ前にエーフィと●●●●しとけばよかった…」
「●●●●って何言ってんだお前!」
「冗談ですよ!この部屋の奥に脱出装置があります!」
俺はエルの腕を引っ張りながら走った。(亀共は甲羅を蹴って部屋に入れた)部屋の入口が見えてきた。俺は先を行くマナフィを追い越さんばかりの勢いで走った。
「うおっ!」
「きゃあ!」
突如、クリスタルルームの天井のガラスが砕け、大量の海水が降り注いでくる。
「嘘だろ…」
「こんな海水…私でも耐えられませんよ!」
「俺達は…ここで…終わるのか?」
自問自答のように俺は呟きながらうずくまって死の恐怖に脅える二匹を見る。
「嫌だ!こんなところで死んでたまるか!!はああああ!!!」
両手を掲げリミッターを解除し、《ストップ》を発動させる。
「あ…れ?」
「はあ…はあ…マナフィ…今のうちに…行くぞ」
キョロキョロと周りを見るマナフィを呼びエルを引っ張りながら脱出装置がある部屋に入った。
「おーい!エル!大丈夫か?」
肩を揺すり気をしっかり保たせる。
「ん…?あれ…僕は生きてる…」
エルは目をパチパチさせて俺の顔を見た。
「まあな…で?マナフィどうやって脱出するんだ?」
「上を見てください。そこに穴があります」
俺らは上を見上げる。そこにはどこまで続くかもわからない穴が開いていた。
「あの穴から飛び出せば外に出られます…が通常は空を飛べる方がいれば全員を連れてってもらえるのですが今回は誰かが来た道を戻らなければなりません…」
マナフィは深刻な表情で告げた。
「俺が残る」
「ダメだよイーブイ…君はあの水を止めるのに力を使いすぎた。だから僕が残る」
「エル…わかった、今回はお前に任せる。俺もできる限り水を抑えとくから」
「頼んだよ」
エルは微笑んだ。
「じゃあ…穴めがけてぶん投げるか」
俺はゼニガメを掴み投げた。エルはカメールを投げ、カメックスは一緒に投げた。
「最後は君達だ」
「エル、次は地上で会おうぜ」
「もちろん」
エルはマナフィを抱えた俺を掴み穴に投げた。穴は真っ暗でいつまで続くかもわからないほど長かった。
「いつ出れるんだ?」
「多分、もうすぐです…」
いよいよ光が見え始め、目の前に扉が開いた。そこに入った瞬間俺らは海に浮かんでいた。
「で、出れた!」
近くに俺の船を見つけて助けてもらった。
「エルは?」
エーフィ姉ちゃんが問い詰めてきた。
「エルはあっちに残って走って帰ってくるつもりだ」
「嘘…」
エーフィ姉ちゃんはその場にへたりこんだ。
(語り手:エル)
「さて…行くか」
僕はストレッチして脱出部屋から出た。クリスタルルームはイーブイの力によってなんとか水が落ちてこないよいになっているがいつ元に戻るかわからないから急ぐ。
ここに来る前に通った螺旋階段を2、3段飛ばしながら駆け上がった。
「まじか…床が崩落してるよ…」
仕方なく飛び越えることを試みた。
「それっ!」
助走をつけ勢いよくジャンプしたがあと少し飛距離が足りなかった。
「《空間回廊》!」
咄嗟に技を出し向こう側に着地する。
「あ!出口だ!」
目の前に入口が見え、扉を押し開ける。脱出しようとしたがイーブイの力が切れたのか上から落石が降ってきて僕の頭に当たった。そして、神殿の崩壊が始まった。
「どうしよう!どうしよう!」
僕はわたわたわた慌てる。
「こんな所で死ぬなんて嫌だーー!!」
「エルの声が聞こえた…
「え?イーブイ何を言ってるの?」
エーフィ姉ちゃんが肩を掴んできた。
「エルが危ないんだ!ルギア!カイオーガ!エルを助けに行ってくれ!神殿にいるから!」
二匹はこくりと頷くと水飛沫をあげて海に潜っていた。
「水が!」
僕の前に大量の水が押し寄せてきた。
「大丈夫!?」
ルギアが僕の尻尾を掴み、海上に引き上げっていった。息が続かないと思ったが普通に息ができる。横を見るとカイオーガがウインクした。そして、海上に出た。
「やった!出られたんだ!」
「しかしよく生きてたな」
ルギアが驚いたように言った。
「イーブイのおかげさ」
僕は船に乗りながら答えた。
「流石ね…」
二匹はふふ、と笑った。