50話 危機一髪!
―永遠の岩場 ダンジョン―
「うはー、ひんやりしてるねー」
エルが言うと、洞窟内に声が反響した。
「へーここって声が反ってくるんだー」
ニンフィアがニヤリと笑った。
「まさか…やめろ!やめ━━━」
一歩、いや、数歩間に合わず…!ニンフィアのハイパーボイスが炸裂した。
「ぐわああああ!!!耳がッ!耳があッ!!」
全員が耳を押さえてうずくまる。ようやく終わった頃には、アブソル、ゾロアーク、ブラッキーの悪タイプ三匹組がが白目を向いて気絶していた。
「や、やり過ぎた?」
ニンフィアが舌をちょっと出して笑った。
「やり過ぎってもんじゃないだろうが!」
普段は温厚なブースターグレイシア姉ちゃんが叫んだ。
「世の中にはやってはいけないことがあるのを━━━━」
姉ちゃんが説教を延々とするので俺達が止めに入らなきゃならないほどだった。「うっ、うっ、えぐ…」
ニンフィアは涙と鼻水を垂らしながら道中を進んでいた。
「ぅーん…んあっ!?」
ブラッキーがガバッと起き上がりおぶっていたサンダース兄ちゃんの後頭部に額をぶつけた。
「いでえ!!」
反射的にブラッキーを取り落とし自分の後頭部を押さえる。
「あ、ゾロアーク起きた?」
ルカリオの背中に乗っていたゾロアークが顔を上げた。
「アブソルも起きたか?」俺の背でもアブソルが欠伸と共に目を醒ました。
「うん…」
「なら降りろ」
担いでいた手を放し、アブソルを床に落とす。
「いったぁ〜い!なんで降ろしたのよ!少しはルカリオを見習ったらどうなの!」
そう言って仲睦まじい夫婦のようなオーラを醸し出しているルカリオとゾロアークを指差した。
「あっちはあっちだよ!それに!この体格差はどうしろっていうんだよ!ロコンならまだしも!お前は無理だ!」
「ぐ…イーブイなんか大ッ嫌いだぁ!」
アブソルは捨て台詞を吐くと師匠のところに慰めにもらいに行った。
「ったく…なんで俺が悪いみたいに…━━?」
ゴロゴロと何かが転がってくる音がする。暫く待つと大量のゴローンが迫ってきていた。
「逃げろおおお!」
俺が言う前に皆は走り出していた。
「どこまで追ってくるんだよお!」
走っている最中、何度も角を曲がったがゴローン達は見事なドリフトでカーブしてきた。
「い、行き止まり!?」
キキッ! と急ブレーキをかけて止まる。この部屋は出入口が一つしかない部屋だった。
完全に詰んだ…
出口=入口のため押し寄せるゴローン達を飛び越さない限りは無理だ。絶体絶命、まさにこの言葉が今の俺達に一番似合う。
「み、皆は下がってて!」
ブラッキーが前に出る。
「僕にだってオリジナルの技はあるんだ!《黒ノ渦》!」
ブラッキーが正面に手を向けるとブラックホールのようなものが出現し迫りくるゴローンを呑み込んでいった。
そして、全部のゴローンがブラックホールの中に収まり俺達は助かった。
「ねえ?ゴローンはどうなったの?死んだの?」
シャワーズ姉ちゃんが聞く。
「心配ご無用!頼んだよ姉さん!」
「任せてちょうだい!《光ノ門》!」
姉ちゃんが頭上に手を翳し一回転させるとブラッキーの技に呑まれたゴローンが全員吐き出された。
「これが僕らのコンビネーション技。効果はブラックホールの中に入ると例えどんなに強くとも無力になるんだ」
「で、吐き出された瞬間に無力状態は解ける…けど!けどよ、なんらかの状態異常を残して更に覚えてる全ての技のPPを0にするのよ」
「あと、僕の方だけ相手の体力を吸いとれるんだよね」
「便利だなあ」
俺は感心して言った。
「さて!状態異常が切れると不味いわさっさと行きましょ」
ミミロップに促され俺達は次の階層へ続く階段を探し始めた。