49話 到着!永遠の岩場
「いてててて…」
夕飯を食べながら右目にできた青色のたんこぶを擦った。
「どうしたの?」
エーフィ姉ちゃんが心配そうに聞いてくる。
「リーフィアにぶん殴られた」
全員がリーフィアを見るとセレビィ、シェイミと睨み合っている。その間にいるブースター兄ちゃんは気分の悪そうな顔をしている。
「癒しの波導」
エーフィ姉ちゃんが俺の右目に手を翳し念を込めた。すると、殴られてからずっとズキズキしていた痛みが消えたんこぶも消えた。
「サンキュー♪」
「どういたしまして」
ふふ、と姉ちゃんが目を細めて笑った。
そして、夕飯の後ミミロップが気だるそうに操縦席につきながら呟いた。
「操縦めんどくさーい」
「自動操縦機能とかないの?」
「あるにはあるけど、万能じゃないんだよ。夜中だって時々私が起きて調整してるんだから」
「ふーん。じゃあ俺がやろうか?どうせ夜中暇だし」
「いいの!?わーっ!ありがとー!」
ギューっと抱き締められ背骨が嫌な音をたてはじめた。
「背骨折れる!折れる!」
「ありゃごめん。いやー、でもこれで溜めてたドラマの一気見ができるよー」
「何時ぐらいに何をすりゃいいんだ?」
「2時半になったら南南西の方に向けて舵をとってね。それを20分ぐらいやってればいいから。じゃ、よろしくぅ〜♪」
「二時半ね…」
それまで何してようか悩む。
「ちょっと!お兄ちゃんを放してよ!」
ブースター兄ちゃんの部屋からリーフィアの怒声が響く。もしや、と思い急いで駆けつける。
「な、何やってんだ!」
案の定セレビィ、シェイミとブースター兄ちゃんの取り合いをしていた。三匹の蔓の鞭によって引っ張られているため手足が千切れそうになっている。
「ちょっと聞いてよ!」
セレビィが兄ちゃんを放して俺に寄ってくる。
「この子、私よりも年下なのに歯向かうのよ!」
「そうでしゅよ!」
シェイミが付け加える。
「てかお前ら何歳だよ」
「私は2700歳」
「私は2400歳でしゅ」
「なんだ27と24か。確かに随分年上だな」
「でしょー?それにあんたの妹でしょ?どうにかしてよ」
「んー。残念だけど無理」
「なんででしゅか!」
シェイミが怒ったように言った。
「だって…兄ちゃんシスコンだもん」
俺が言った瞬間、リーフィアと兄ちゃんの顔が真っ赤になった。
「ふん!まあいいわ、いつかきっと大人の雌の魅力に気づかせるから!」
「でしゅ!」
そういい残すと彼女らは部屋から退散した。
「100歳越えてる時点でババアだと思うけど…まあいいや!ありがとうお兄ちゃん!」
リーフィアが笑って俺にお礼をしてくれた。
「どういたしまして」
俺は彼らの邪魔をしないようにその場から立ち去った。
「さて…またやることが無くなった。仕方がないこういう時は時間操作だ!」
俺は時を操作して午前二時半にタイムワープした。
―午前二時半―
「俺には数秒間しか過ぎてないけど、皆からすれば6時間経ったわけだ」
俺は独り言を呟き舵をとる。
「南南西はこっちだな」
面舵だか取り舵だか知らんがぐいっと動かす。
「あははー。楽チン楽チン♪」
まあ、始めの5分は楽しかったけどだんだん飽きてきた。やはりここでもタイムワープを使用し、20分先送りにした。
「はー、終わった終わった。寝よ寝よ」
自分の部屋の布団ベッドに潜り込み目を瞑った。
―翌朝 永遠の岩場―
「おー!着いたぜー!」
目の前に広がる断崖絶壁を見上げて俺は叫ぶ。
「嘘でしょ?こんなの登れないわよ」
シャワーズ姉ちゃんが絶望したように呟いた。
「何言ってんだよシャワーズ。こっちから行くんだぜ」
サンダース兄ちゃんが断崖の裂け目を指して言った。
「中はダンジョンになってるから気を付けてーって言わなくとも君達ならダイジョブだよね」
ビクティニがにへへと笑った。
「さて、では今回の留守番メンバーを発表する!ジラーチ、ビクティニ、セレビィ、シェイミ、ツタージャ、クチート…以上!絶対に着いてくるなよ!」
「それは着いてこいってふりかい?」
「違うから!いいか!ホントに来るなよ!」
留守番メンバー全員が頷くのを確認してから俺達はダンジョンに足を踏み入れた。