48話 探し物
「なんじゃ?ジャノビーを知っておるのか?」
校長が少し驚いたように言った。
「そのポケモン、僕の兄なんです」
ツタージャが答えた。
「おお、ツタージャさん。それにクチートさんも」
「こいつらしってるんですか?校長先生」
「生徒の名前を覚えるのは当たり前じゃが?」
「ええ!?お前ら学校行ってたの!?」
「そうだよ。今年からね」クチートがニコリと笑った。
「ま、お前らと入れ替えで俺達が卒業したんだけどな」
ブースター兄ちゃんが言うとグレイシア姉ちゃん、ゾロアークが頷いた。
「僕、君達が登下校してるの見たことないよ。」
「エル達の後をこっそりついていってるからさ」
「私、今度から後ろに気を付けながら歩くわ…」
「もう遅いよロコン。僕らは、ミミロップの機械で直接学校に行ってるから」
「えー?そうなの?」
ロコンががっかりしたように言った。
「おいミミロップ!なんで俺達には使わせないんだよ!」
「だってぇ、声かける前に行っちゃうんだもん」
「んっんっん」
校長が咳払いをして場の雰囲気は戻った。
「えーと、いつ兄さんに会ったんですか?」
「そうじゃな、確か8年ぐらい前だったかの…」
「僕が4歳の頃だ」
「この大会を開き挑戦者を募集した。すると参加名簿の中に8歳の子が紛れてて危ないから止めろ、と止めたが結局圧しきられてしまい参加を許した。そして、彼は驚くほど強かった。大の大人達を薙ぎ倒して決勝まで勝ち進み…」
全員がゴクリと唾を飲み込んだ。完全に校長の話しに呑まれている。
「そこで負けた。彼が次に目を開けた場所はここじゃ。今君が寝ている場所じゃよ。彼は起き上がった瞬間、『元気の塊!』と叫んだよ。妹にあげたかった、とかなんとか言っておったの」
「兄さん…僕のために」
ツタージャの目には涙が溢れそうなほど溜まっていた。
「それじゃあ、そろそろ出発すっかあ」
よっこらせとベッドから降りると体中に激痛が走った。
「うぎゃああああ!!!」
「ったく…これ飲め」
ソウタに例の薬を渡される。小さくお礼を言い飲む。するとさっきの痛みが嘘のようになくなった。
「わーい!ありがとー!」
「それじゃあ皆さん。また会おうぜ!」
俺達は会場を後にして船に乗り込んだ。
「さて…次はどこに行こうか」
「じゃあ、ここから一番近い海底神殿行こーよ」
ジラーチが地図を見ていた俺に言ってきた。
「無理だよ。海風のフルートが無いとあそこに入れないじゃん」
「そうだったねー」
「なあビクティニ。その、なんとかのフルートってどこにあんの?」
「んー。確か【永遠の岩場】って場所にいるヤドキングが持ってた気がする。ほらここ」
ビクティニが地図を指しながら言った。
「ミミロップー。進路は南南西ねー!」
「はいよー」
ミミロップが返事をして船の行き先を変える。
「おーい。セレビィが目を醒ましたぞー」
ブースター兄ちゃんが二匹を連れて来た。
「やあ、シェイミにセレビィ」
「やあ、じゃないわよ。なんで私達は船の上にいるのよ」
セレビィが兄ちゃんの腕に自分の腕を巻き付けながら言った。
「そ、そうでしゅよ」
シェイミは兄ちゃんの肩越しに言った。
「えっと、気絶してたから連れて来た。嫌なら帰っていいぞ」
「べ、別にいてやってもいいけど…」
「いや、帰れ。食材の減りが早いったらありゃしないぜ」
「やだ!」
「帰れ!」
「やだ!」
「よおし解った。地平線の彼方までぶっ飛ばしてやるよ」
「おいイーブイ。いいだろ二匹増えたところで船が沈む訳じゃねえし」
「そーでしゅ。ブースター君の言う通りでしゅ!」
「…………解った。今回は兄ちゃんに免じて許可しよう」
「やった!」
「ありがと!ブースター君!」
二匹が同時に兄ちゃんに抱きついた。その衝撃で倒れそうになるが俺が兄ちゃんの手を引っ張って立たせる。
「危なかった…リーフィアに見つかるとこだったぜ」
額の冷や汗を拭きながら呟いた。
「そんなマズイの?」
「リーフィアは兄ちゃんが自分以外の雌と一緒にいると手がつけられなくなるんだよ。兄ちゃんといくらくっつこうが別にいいけど!リーフィアにだけは見つかるなよ」
「残念、もう見つけちゃった」
リーフィアが船のマストから俺達を見下ろしていた。
「あ…」
その後、甲板(操縦席付近)は戦場と化した。