47話 武道大会最終戦
現在の状況は俺、ジャック、ブニャットが残る。ソウタは地面に倒れて気絶している。
俺は地面を強く蹴りジャックに突進する。
「ムーンフォース!」
ジャックの放った淡いピンク色の弾が迫ってくる。それをアイアンテールで弾き返しジャックの視界を奪う。
「喰らえ!龍の波導!」
「バカめ!俺はフェアリータイプだ!」
「うおおおお!」
ジャックは龍の波導が飛んでくると思って完璧に油断しているはずだ。
「なーんて、実はアイアンテールだったんだなあ!」
「な!?」
咄嗟のことに防御が間に合わなかったジャックを鋼鉄の尻尾で彼の肩を叩いた。
「うがあああ!!」
肩を押さえて呻くジャックの腹にギガトンパンチを当てる。一気に壁際まで吹っ飛びその場に崩れ落ちた。
「っしゃあ!」
ガッツポーズをとりながらクルリとブニャットの方を向く。
「さて…1対1だな」
「あの時の決着をここでつけようか」
ブニャットがキッと睨んできた。俺も睨み返す。
「《ワンダーステップ》!」
前回のバトル同様、信じ難い華麗な舞を踊った。元から油断はできないが更にできなくなった。
「《水弓》、《雷槍》!」
シャワーズ姉ちゃんの弓とサンダース兄ちゃんの槍を造りだし、構える。
「いくぜ!」
弦を引き絞り雷槍を放つ。さっ、と避けられたが気にせずに次の槍を造り発射する。
「どうした!当たんないぞ!」
「うるせえ!なら、これならどうだ!」
槍を一気に5本同時に撃った。それぞれ別々の場所に着弾するように。後、数回繰り返さなければ当たらないかと思っていたが最後の一本がブニャットの肩を掠めた。
「ぎゃ!」
掠めただけでもかなりの電流が彼女の体を駆け巡ったようで、その場にガックリ膝をついた。
「さらば!」
ブニャットの脇腹に最高火力の波導弾を撃ち込み、気絶させる。
「優勝だぁーー!!!」
跳び跳ねて喜び回るが観客はしん…としている。しかも、その表情は恐怖に震えている。
まさかと思い振り返るとボロボロのジャックが荒い呼吸をして立っていた。
「まだ…優勝じゃないぜ」
「ほっほー。死に損ないがどーやって俺に勝つつもりかな?」
「こうすんだよ!」
ジャックが倒れたブニャットの額に触れると彼女は起き上がった。
「!? ブニャットはさっき倒したはずだぞ!?」
「これが俺の技。《マインドコントロール》だ。操りたい相手の体に触れて念を送り込めば俺の思い通りに動くんだぜ!」
「そんなのずりーぞ!」
「バトルにズルいもくそもあるか!」
ジャッがマジカルシャインで攻撃してくる。更にブニャットが背後に迫ってきているため後ろにはかわせない。
「くっ!」
上に跳んでかわす。が、そこを狙われたようでジャックも飛び上がりサイコキネシスで、俺を地面まで叩き落とす。
ぐしゃあ!と地面に亀裂ができめり込む。その直後、地面にめり込んだ俺は煙となって消え、替わりにジャックの後ろに俺が出現した。
「身代わり!?」
「終わりだぜ、アイアンテール!」
尻尾をジャックめがけて振り抜こうとしたが足を掴まれて不発に終わった。
「終わるのはお前だ!」
凄まじい速度で垂直に投げられブニャットの腹に突き飛ばされ、最後は壁に突き刺さった。
「く…そ…」
そして俺は気絶した。
「━━━宝玉!」
ばっ、と起き上がり周りを見ると医務室のような場所にいた。
「おお、起きたようじゃの。残念ながら黒の宝玉はジャックという青年が手に入れたよ」
「校長先生!」
校長先生ことジーランスが俺の前にいた。
「あんなに激しく壁にぶつかったのに元気がいいのお…ほれ、寝てなさい」
校長に促され布団に横になる。
「さて、君の家族を呼んでもいいじゃろ。皆さーん、どうぞ入ってきてくださーい」
校長が呼ぶとメンバー+ジャック+ブニャット+ソウタが来た。
「わりい、やり過ぎたわ」
「本当よ。うちのリーダーになんかあったらどうしてくれんのよ!」
師匠がジャックの両頬を引っ張る。
「いたたたたた!!」
「ふむ…毎年開催してるが…イーブイ君の勝利への執着心は誰かに似ておったの…」
校長がふーむ、と考え込むこと数分。何かを思い出したかのように顔を上げて言った。
「そうじゃ!ジャノビーじゃ!」
「ジャノビー!?」
「兄さん!?」
俺達は心の底から驚いた。