40話 ようやく最下層
「ぶえっきしょい!」
俺は大きなくしゃみをする。つい先程、身も凍るような湖に飛び込んできたところだ。
「うぅ〜…寒い〜…」
ロコンが体を震わせながら呟いた。
「へきしっ!み、皆同じだよ」
エルは鼻水を啜りながら言った。
「しょーがねえ…日照り玉を使うか」
ブースター兄ちゃんが鞄を探りながら水色の玉を取り出した。
これは、不思議玉といってダンジョン内の使用者のいるフロアだけに効果がある。
「で、でかしたわブースター」
エーフィ姉ちゃんがか細い声で褒める。
「ほんとはバトルの時に使おうと思ってたんだけど…凍え死ぬよりゃましだ!」
兄ちゃんが日照り玉を地面に叩きつけると眩い光が発生しフロア内を覆う。光が消えると真夏を思わせる(今は夏だが)程の暑さが俺達を包み込んだ。
「あったかーい!!」
リーフィアが近くを駆け回り喜びを体全体で表す。
「ははは、よかったよかった」
「この暑さならすぐに乾くよね」
ビクティニがにこりと笑った。
「さあ、張り切って階段探すぞ!」
と、活気づいた矢先にこの暑さがまるで幻だったかのように消えた。その代わりに霰が降ってきた。
「ユキー!ユキー!」
曲がり角からユキノオーが現れた。
「この…デカブツがぁああああ!!!」
怒りに身を任せ電光石火で突撃する。そして、体を反転させアイアンテールでユキノオーの柔らかい腹を殴り飛ばした。
速度×技の威力で凄まじい効果を発揮しユキノオーを壁にめり込ませた。
「フーッフーッ…」
「落ち着いて!」
ミュウとジラーチに肩を掴まれ、はっ、と我にかえる。
「運がよかったな。次はない」
気絶したユキノオーを一睨みしてから先に進んだ。
進みながら考えるとさっきの電光石火+アイアンテールも一つの技にできそうな気がする。
「名付けて、《クイックインパクト》!」
「何が!?」
隣にいたアブソルが一歩ひいた。
「ああ、さっきの技だよ」
「さっきの技?…ああ!あれか!」
「でもさあ、外した時の反動がヤバイ気がするんだよね」
「どうして?」
「勢いあまって地面にドーンとか」
「じゃあ、ここぞ!ってところで使えば?」
「そうだな」
「早く来ーい。おいてくぞー」
階段を発見したようでルカリオが手招きしている。
―中間地点―
「あ、ガルーラ像だ」
「ってことは中間地点だ」
「ならボスとかいるのかな?」
「今までの経験上いるね」
「エルはどんなボスだと思う?」
「んー…森だからドラピオンとか?」
「ありうるな」
「でも、こんなところで話しててもわかんないし行こうよ」
「だな」
よっこらせ、と立ち上がり奥地へと進む。
―巨木の森 深層―
「うわー。一層と緑が濃くなったねー」
リーフィアが嬉しそうに言う。中間地点の時よりも木が多くなり雑草や花も増えた。
それと、敵の配色も黄緑っぽかったのが深い緑に変わった。
「お、キノガッサだ」
いりきたって走ってくる敵を見たルカリオがキノガッサの顔面に拳を叩きつけた。
「キノー…」
苦しそうな声を上げ雑草の間に消えていった。
「やりい!」
ルカリオはガッツポーズして笑った。
「最下層はまだかねえ」
ため息混じりにグレイシア姉ちゃんが呟いた。
「なら走って行くか」
俺達の【走る】はとんでもなく速い。細い路地で敵に遭遇したらハードルのように飛び越した。
「はあ、はあ、結構、進んだよね?」
多少の息切れをしながらブラッキーが聞いた。
「多分な…」
丁度10個目の階段を降りきったところで今までのフロアとあ違う雰囲気の部屋に出た。
ここは…ボス部屋だ。
「ふふふ…いらっしゃい…」
「ほーぎょくドロボーさん♪」
どこからか声が聞こえる。しかし、姿が見えない。
「誰だ!隠れてないで出てこい!」
俺が大声で叫ぶと目の前に緑の玉ねぎ頭の奴が出現した。
「おわっ!?」
吃驚して尻餅をつく。するとジラーチがふよふよと前にでてきて玉ねぎ頭と喋りだした。
「やあセレビィ久しぶりだね」
「あんたちっとも変わってないじゃない」
「シェイミは?」
「ここでしゅ!」
今度は小さい(俺もだけど)ポケモンが俺の頭の上に乗ってきた。
「無視するな!」
セレビィが怒る。
「ジラーチ、久しぶりでしゅね」
「君は一体いつになったらそのでしゅマシュ口調は直るんだい?」
「わかんないでしゅ…」
シェイミは一瞬俯いたがすぐに顔を上げ俺達の顔を見た。
「あんたらがここに来た理由はわかってるでしゅよ。宝玉でしょ?」
「ああ、うん」
「欲しければ私達に勝ってみなさい!」
セレビィが軽くカッコつけて言った。
さて、どんな勝負になるのか楽しみだ。