38話 着いてきた
「はあ…はあ…お、終わった…」
息を切らしてその場に座り込む俺達。
え?どうしてこうなったかって?
遡ること十数分前にブースターとかいう馬鹿兄がポケモン寄せの罠を踏みやがって、モンスターハウス+罠で異常な量のポケモンが俺達のいる一部屋に集まってきた。それからというもの、自信の持つ最高火力の技をフルに使ってギリギリ勝った。
そして、地下2階へ降りた。
「はあ…」
ブースター兄ちゃんはリーフィアに馬鹿呼ばわりされてから元気がない。
「リーフィア…ブースターに謝りなよ」
ゾロアークがこそっと耳打ちする。
「なんで?アホなのはお兄ちゃんでしょ?」
「そうだけど、一応だよ」
「おい、聞こえてるぞ」
兄ちゃんが二匹の肩をポン、と叩く。ビクンと体を硬直させ、ゆっくりと振り向く。
「お兄ちゃん…聞いてた?」
「ああ」
「ど、どこから?」
「最初からだ」
『ごめんなさいー!!』
リーフィアとゾロアークは上目遣いで兄ちゃんを誘惑して乗りきろうとしている。
だが、全くの無駄なのだ。兄ちゃんはイラつくとあまり物事に興味を無くす。たとえ、愛する妹リーフィアであっても、だ。
「やれやれ、ブースターは器が小せえなあ」
「あんたが言うか」
師匠がサンダース兄ちゃんにツッコミを入れる。
「なんだと!」
「事実じゃない」
「んだとお…」
「なら、ここで戦う?」
「上等じゃん」
「み、皆やめてよ」
ニンフィアがおろおろしながら言った。しかし、一向に収まる気配がない。
「やめてよ…やめてー!!」
ニンフィアのハイパーボイスが俺達の鼓膜を貫く。ついでに特性がフェアリースキンのため、フェアリータイプの技になり威力も上昇する。
「あううう…なんで、僕、まで?」
悪タイプで効果抜群の三匹は目を回して倒れた。俺もまだ耳がキーンと鳴っている。取り敢えずさっきの声で師匠と兄ちゃんの喧嘩は止まった。
「もう!皆仲良くしてよね!」
「はい、さーせんした」
18歳が11歳に起こられのは見てて結構面白い。
「ん!」
ルカリオが後ろを振り向いた。
「どうしたルカリオ?」
「何か…いる」
草むらをじーっと見つめながら言った。
「え?」
試しに落ちている木の枝を投げる。しかし特に何も起こらない。
「さっきの声で感覚狂ったんじゃないの?」
「んー…そうなのかなあ…?」
ルカリオは頭を掻きながら残念そうに言った。
「あれ?ツタージャ達何してるの?」
エーフィ姉ちゃんが木の上を見ながら言う。俺達は姉ちゃんがぶっ壊れたと思い俯いた。
誰よりも冷静で賢かったエーフィ姉ちゃんが…嗚呼、なんということだろう…
「いや、私壊れてないから」
姉ちゃんはそう言うとサイコキネシスで木の上を探りだした。数秒後緑色のポケモンが姿を現した。続いてクチート、ミュウにビクティニとお留守番メンバーが降りてきた。
「や、やあ、皆」
ぎこちなく微笑むツタージャを俺は睨んだ。
「お前らは留守番って言ったろ!」
「僕だって広い世界を見たいんだ!」
「アイドルはツアーでいろんな所見てきたろ」
「忙しくてそんなの見る余裕無かった!」
負けじと言い返してくるツタージャの目は真剣だった。ついに根気負けした俺は深いため息と共に探索に着いてくることを許可した。
「ねえ、イーブイ。大丈夫なの?あの4匹連れてって」
「まあ、ミュウとビクティニは平気だろうけどやっぱりあいつらは心配だなあ」
エルと二匹で話し合いある取り決めをした。
「コイツらが着いてくるにあたっていくつかお願いがある。ブースター兄ちゃんにだ」
「お、俺!?」
「内容はツタージャとクチートの保護をヨロシク」
「なんで俺なんだよ!」
「罠踏んで皆に迷惑をかけたから」
「ちくしょー!!」
兄ちゃんの叫び声は森に木霊した。嫌々引き受けた仕事だったが案外楽しそうだった。その理由がリーフィアについて色々聞けたからだ。
それから歩くこと約15分。地下5階に差し掛かったところで巨大な湖があった。しかも向こう岸に階段が見える。
「これを渡るのかしら?」
ミミロップが呟いた。するとサンダース兄ちゃんが反応した。
「えー!?俺泳げないんだけどー!」
「大丈夫みたいよ船があるから」
グレイシア姉ちゃんの指差す方向には俺達全員が(数名は誰かの膝の上となるが)乗れるサイズの小舟が浮かんでいた。
「絶対水の中から敵が出てくるよ」
不安な気持ちを胸に抱え、俺らは湖を渡り始めた。