35話 休養
(語り手:三人称ver)
「ッ…痛いー」
リーフィアが肩を抑えて呻く。
「皆、同じよ…」
シャワーズは足に湿布を張りながら呟いた。
「イーブイお兄ちゃんは?」
「イーブイならアブソルの隣にいるわよ。『俺の…せいだ』とかなんとかぶつぶつ言ってさ」
「ただの気絶なのに大袈裟だねぇ?」
「うーん…確かにそうだね。もしかして…」
『アブソルが好き?』
二匹は同時に言った。そして、ニヤニヤしながらイーブイとアブソルのいる部屋を覗いてみる。
(語り手:イーブイ)
「ごめんな…アブソル。俺が不甲斐ないせいで…」
背後でガチャリとドアを開ける音がする。誰かと思い振り向くとシャワーズ姉ちゃんとリーフィアがいた。
「用は?」
「え?んーっと、大丈夫かなーって」
「あぁ…うん。俺は大丈夫だけどアブソルが気絶したまんまなんだ」
「誰かに診てもらったら?」
リーフィアが言った。
「例えば?」
「キュウコンとかどうかしら?」
「氷雪の霊峰まで近いの?」
「ミミちゃんに聞けば?」
リーフィアはミミロップをミミちゃんと呼ぶ。
あれ?こんな説明前にした気が…
「わかった、聞いてくるよ」
操縦席でポケーッと海を眺めているミミロップを呼び氷雪の霊峰は近いか尋ねた。
「氷雪の霊峰? 一時間位で着くけど━━なんで?」
「皆の休養のため」
「じゃあ出発しましょうか」
ミミロップが舵をとり船は氷雪の霊峰へと進みだした。
―氷雪の霊峰―
「着いたな。おーい!キュウコーン!」
「出掛けてるのかな?」
エルと俺は目を合わせて言った。すると、奥から眠そうな顔のキュウコンがやって来た。自慢の九つの尻尾はだらしなく下に垂れ、引きずっている。
「用は何?」
「俺達の治療してくれない?特にアブソルを」
「アブソルに何があった?」
「敵の攻撃を喰らって気絶しっぱなしなんだ」
「ふむ、診せてみな」
俺はアブソルを部屋から連れてきてキュウコンの前に置いた。
「うん、ただの疲労だよ。心配ない明日の朝になれば起きるから」
「よかった」
俺はホッと胸を撫で下ろす。
「お前らの休養のためってのはどういうことだ?」
キュウコンに洞窟内に案内され中に入る。
「ソウタって言う化け物じみた強さのアブソルが宝玉を寄越せって言うから戦ったらボロ負けだ」
「一匹だけか?」
「ああ。しかも人間」
「人間!?ああ…また何か大厄災が来るのか…」
「また…ってことは俺達が戦うのか?」
「お前の血筋を考えるとそうなるな」
「ちっくしょー!また俺達かよ!で? 今回のラスボスわ?」
「わかんないわよ。でも、二つ確実に言えることがあるわ」
「何?」
「一つは宝玉が関係すること。二つ目は人間と協力して戦うこと」
「えー。あいつとは仲良くなれる気がしないよー」
「まあ、頑張るしかないわよ」
はあ、と大きくため息をつき床に座り込む。キュウコンが肩を叩くが無反応。するとキュウコンが俺を抱き抱えベッドに投げた。
「何すんだよ!///」
「寝てろ。お前以外のメンバーは皆寝てるぞ。ん、どうした?顔を紅くして」
「う、うるさい!」
枕に顔を埋め布団を被って寝ようとする。
「お休み。明日になったら起こしてやるよ」
「頼むぜ」
そうして、俺はふかふかのベッドで眠りについた。