32話 白い悪魔
二つ宝玉をゲットした俺達は今日ものんびりと海を旅していた。
「おーい、パチリス!」
「何よ?」
「ここから一番近い宝玉の場所は?」
「んー…」
パチリスは眉間に手を添えて考える。
「ここから南東ら辺に【巨木の森】って所に緑の宝玉があると思う」
「サンキュー。おーい!ミミロップー!進路は南東へー!森を探してー!」
「りょうかーい!」
ミミロップは元気に返事をした。船の進行方向は変わり南東を目指し始めた。
「それっ!」「わっ!?」
「ん?」
どこからか声がする。見上げると船のマストの上でエルとブラッキーが押し相撲をしていた。俺も混ぜてもらおうと思いマストをよじ登る。
「おーい、俺もいれてくれー」
「もちろんいいよ。じゃあブラッキーとやってみ。滅茶強いから」
「いくよ…」
俺達は互いに構える。エルの掛け声と共に試合が始まる。
俺はわざと手を前に出し攻撃を誘った。案の定ブラッキーは手を突き出してきた。俺は腕を引き攻撃をかわし、ブラッキーを突き飛ばした。
「うわあああああ!!!」
ブラッキーは悲鳴をあげながら落ちていった。甲板にぶつかりそうなところでニンフィアのリボンに救われた。
「あ、ありがとう…」
「どういたしまして」
「なあ…妹に抱えられる兄ってどう思う?」
俺はお姫様抱っこされているブラッキーを見ながらエルに尋ねた。
「すごーくダサいね…」
「だよなー」
「ご飯だよー!!!」
厨房からリーフィアが叫んだ。かなりの大音量に驚き俺達はブラッキーと同じように落ちた。
「ああああああああ!!!!」
頭から真っ逆さまに落ちていく。固く目を瞑り助かるように祈った。すると、ふわっと何かの上に乗った。
「いやあ、危なかったねえ」
グレイシア姉ちゃんが腰の辺りを掴んでくれていた。エルはエーフィ姉ちゃんに念力で受け止められていた。
『た、助かった〜』
俺達は同時に安堵の息を漏らした。
「ほら、ご飯だよ」
俺は姉ちゃん達と一緒に厨房まで降りていった。
「ぷはあ…美味かったわ」
シャワーズ姉ちゃんが少し出た腹を擦りながら言った。
「お前は太りすぎた」
サンダース兄ちゃんがツッコミを入れる。姉ちゃんはムチムチの尻尾で兄ちゃんの顔面を叩いた。
バッチーン! 凄まじい音と共に兄ちゃんは床に叩きつけられた。
「うぐぅ…俺はホントの事を言…」
床に突っ伏している兄ちゃんに再び尻尾が振り下ろされた。
━━女って怖いわぁ…
俺は姉ちゃんの逆鱗に触れぬようこっそりと甲板に出た。船の舳先には一匹のアブソルが座っていた。
「お前誰?」
真っ先に思ったことを聞く。
「俺かい?俺は…ソウタ。元人間さ」
「人…間?」
「そう人間。お前らがツヨイネであってるよな」
「それがどうした?」
「ただの確認だ」
突如、ソウタが視界から消え一瞬で俺の前に現れる。
「お前は…宝玉を2つ、集めたんだろ?俺にくれよ」
「やだね、7つ宝玉を集めてお宝をゲットするんだ」
「しょうがない…お前は他の奴等とは違うと思ってたんだけどな」
「どういう意味だよ」
「他の海賊やら探検家達は俺を見るなり盗人だと勘違いして攻撃してくる」
「そりゃあ…運が悪かったな」
「宝玉を渡すつもりがないなら、無理矢理にでも奪うからな」
「は、やってみろよ」
急にソウタが角で切り裂こうとしてくる。身を捩ってかわし、アイアンテールで首を狙う。
「は!?」
目にも止まらぬ速度で俺の攻撃を回避し背後に降り立った。
「…ッ!」
「終わりだ」
「いんや、まだだ!」
俺の後ろに皆が厨房から上がってきた。
「ち!」
ソウタは俺の頭を飛び越え最初にいた舳先に移った。
「誰なのアイツは?」
ルカリオが呟く。するとソウタが笑った。
「また、振り出し…か。いいよ。もう一回自己紹介してあげるよ。俺はソウタ。元人間だ」