31話 二つ目の宝玉
(語り手:ブースター)
「ロコン、ちょっとこい」
「何よ?」
「いいか、宝玉だけ狙うぞ。ボルケニオンは無視だ」
「なんで?」
「さっき、エーフィからテレパシーがきた。宝玉とったら穴が開くから、そこに飛び込むんだ」
ロコンは俺の説明を聞いてコクリと頷いた。
「呑気に話してる暇はないぞ!」
ボルケニオンがハイドロポンプで会話を邪魔してくる。俺達は横に飛んで回避した。
「火炎放射!」
特大の炎を吐き出しボルケニオンの視界を奪う。
今だ!
俺は駆け出しボルケニオンの背後にある箱を盗りにかかる。
「いただきい!」
手を伸ばす。あと、ちょっとだ。
「あまい!」
ボルケニオンのタックルで弾き飛ばされる。
「くあっ…」
肩から落ち、脱臼したかもしれないほどの痛みが体を走った。
「ブースター!」
ロコンが駆け寄ってくる。
「俺は、いいから…宝玉を…ッ」
「わかった…」
ロコンは俺の側から離れボルケニオンに向き直った。そして、敵に向かって走り出した。
「気でも狂ったか?」
ボルケニオンは迎撃体制をとった。それでもロコンは突っ込むのをやめない。
「ガアッ!」
スチームバーストが発射され、ロコンに襲いかかる。その瞬間ロコンは飛び上がりボルケニオンの頭を踏み台にして背後に回った。
「ヤアッ!!」
ロコンは宝玉を取った。姉貴の言っていた穴は俺の真後ろに開いた。エルとルカリオが俺を船に引っ張ってくれた。
「ロコン!早くしろ!」
イーブイが叫ぶ。こっちに走ってくるロコンの後ろにはその巨体からは想像もつかないような速度で迫るボルケニオンがいた。
「飛べ!」
手を差し出してイーブイが呼ぶ。それに従いロコンが飛ぶ。それをイーブイが抱えゴロゴロと甲板を転がり、止まった。
「逃がさん!!」
ボルケニオンがスチームバーストを放った。このままでは技が穴を閉じきる前に通過してしまう。
「《雷槍》!」
兄貴が槍を突き出すと大放電が起こり技とボルケニオン包んだ。ボルケニオンが倒れると同時に穴が閉じきった。
「はあー、危なかったなー…」
兄貴が槍を杖代わりに立っている。
「サンダース兄ちゃん大活躍だったな。最後だけ」
「おいこらイーブイ。最後は余計だ最後!」
「ブースター、あんた肩外れてるじゃない」
サーナイトが俺の肩を見ながら言った。
「あ…うん。脱臼…かな?」
「見せてみな。治したげるから」
俺がふらふらサーナイトに近づき体を預ける。サーナイトは俺の肩を掴みグイッと戻す。そして、激痛の末元通りに動くようになった。
「わあ、ありがと!」
「どういたしまして」
「さて、お宝が手に入ったから、いただこうか」
ブニャットが手を出した。
「は、やだね。 あ!そういえばお前らラティアス達に心の雫返したのかよ!」
「ああ、あれね。返したって言うより持ってかれた。」
「え?」
「夜中にラティアスが来て『返してもらうから!』って一言いって帰ったよ」
「怪盗が物を盗まれちゃあ話にならねえぜ」
「ふん…真っ先にこの島に降りて火傷した馬鹿リーダーに言われたくないね」
「む、今ここであの時の続き戦ってもいいんだぜ?」
「後悔するよ」
イーブイとブニャットの二匹が殺気だった雰囲気を作り出す。
「お、落ち着け!」
ペルシアンとレパルダスが彼らを止める。
「止めんなよ!」
「落ち着けって言ってんだよ!お前は火傷してマトモに戦えないだろうが!団長も、こんぐらいで熱くなるなよ!」
ペルシアンが二匹のリーダー格を叱りつける。
「ち、わかったよ」
渋々従い、元の雰囲気に戻る。
「ところで君達は大悪党アブソルって知ってる?」
レパルダスが話題を変える。俺達は一斉にアブソルを見た。
「わ、私じゃないよ!」
「知ってる。ただ見ただけ」
ゾロアークが微笑む。
「どんなやつなの?」
ブラッキーが尋ねる。
「詳しくは知らないけど稲妻の如く現れて幽霊のように消えるらしいよ。そいつは有名な探検隊又は海賊を狙ってるんだって。それに滅茶苦茶強いとか」
「ふーん…情報サンキュー。俺達も気を付けるよ」
「うん。そうしたほうがいいよ」
「さてと…俺達は行くよ。じゃーなー」
イーブイはブニャット達に手を振り、ミミロップに指示をだした。
「ねえ、何色の宝玉なの?」
リーフィアが俺に聞く。
「さあな? ロコン、開けてくれ」
「はいよ」
箱を開けると燃えるように赤い玉が入っていた。
「赤…ね。これで二つ目か…後、五つ頑張ろー!」
『おー!』
グレイシアに続き皆が声を揃えて言った。