30話 卑怯な相手
(語り手:ブースター)
「どうしようかブースター…?」
ロコンが俺に問う。
「この暑さに耐えられるってこたあ、あいつも炎タイプなんだろうな…だから2対1で押しきれれば勝てるはずだ」
「なら、とっとと終わらせましょうか!」
言って、火炎放射を放つ。
「ふん、水の波動!」
火炎放射を水の波動で相殺する。辺り一帯が水蒸気に包まれる。すると、水蒸気の間からボルケニオンが突進してきた。呆気にとられて動けなかったロコンは派手に宙を舞った。
「こいつ…水技も使えんのかよ!」
俺は絶句した。
「どうした? 諦めるのか? 小さき盗賊よ」
「くそ…《火爪》!」
「中々ユニークな技を使うではないか」
「炎のパンチ!」
ボルケニオンの顔面めがけて殴りかかる。
「水の波動!」
再び水技を使ってくるが構わず突っ込む。じゅ…と音がして手に纏った炎が消える。だが、火爪は消えなかった。
「うらあああ!!!」
そして…火の残った爪で奴の顔を切り裂く。
「ぐ…があああああ!」
切れた額から鮮血が吹き出し俺の首回りの毛をを赤く染めた。
「はあ…はあ…」
「くふふ…やるな…小さき盗賊よ…我も本気を出させてもらうぞ!」
「いいぜ!こいよ!」
この時、俺には勝てる自信があった。というのもロコンがボルケニオンの背後に回り込んでいたからだ。そこからジャンプし、後頭部に雷の牙で噛みついた。
「ぎゃあああああ!!」
痛みに叫ぶボルケニオンに隙が生じ《ヘル・フレイム》を撃ち込む。地獄の猛火は特性の効果も上乗せとなり尋常じゃない熱気を放ちながらボルケニオンを包み込んだ。
「や、やったか?」
「スチームバーストォ!!」
直後ボルケニオンが技で相殺…いや、俺の技を消して自分の技を当ててきた。
「ぐあっ!」
どうやら水技だったらしくかなり体力を削られてしまった。
(語り手:三人称ver)
「なあ、ミュウ。ブースター達がどうなってるのか見れないのか?」
サンダースがミュウに聞く。ミュウは少し首を捻った後、「見れるよ」と答えた。
「むむむ…だあ!」
ミュウが手を合わせて念じると丸い穴が開きそこにブースター達が映し出された。
「お兄ちゃん!」
リーフィアが叫んで画面に近づく。
「こりゃ…まずいわね」
ブニャットがイーブイを連れてツヨイネの船に乗り込んだ。
「まずい、ってどういうことだ?」
イーブイが尋ねる。
「ボルケニオンは世界のどこかにあると言われている宝玉の番人だ。やたら好戦的で自分がピンチになると大技をバンバン使いまくるらしいね」
「なんでそんなに知ってんだ?」
エルが驚いた声を出す。
「何年生きてると思ってんだい。ババアの知恵嘗めるんじゃないよ!」
「じゃあ、ロコン達に勝ち目は?」
アブソルが不安そうに聞く。
「無いこともないけど…確率的には3割かな…タイプ相性もあるし…手っ取り早く宝玉だけ回収して帰ってくるとかはできないのか?」
「できないこともないけど…」
エーフィがゴニョゴニョと呟いた。
「じゃあ姉ちゃんに任せる」
イーブイが信じてるからな!という笑顔を送った。
「わかった…先ずはテレパシーで状況を説明するから…エル、空間回廊よろしく」
「ガッテン承知のすけ!」
━━ブースター、ブースター!
「姉貴!?なんで声が?」
━━テレパシーよ。そんなことより早く宝玉を手に入れなさい。取ったらすぐに穴が開くからそこに飛び込んで。船に続いてるから。
「わかった。頑張るから応援よろしく頼むぜ」
━━皆応援してるわ。