29話 地下空間
(語り手:ロコン)
「頂上は…まだかしら?」
飛んでくる火炎放射を吸収し突進してくるブーバーンを巴投げで山から転がす。
「そろそろ頂上つかなきゃヤバイことになりそうだぜ…」
ブースターが苦しそうに呟くから心配して振り向くと体が火に包まれていた。
「うわっ!どうしたのよブースター!?」
「…多分特性の効果で燃えたんだろうな。お前もなってるぞ」
「え…? わっ!」
私は体を確認する。ブースターの指摘通り燃えていた。
「とっとと宝玉見つけねえと体の内側から焼かれそうだな…」
「そうね…ちょっとペースアップしましょうか」
速度を走りと早歩きの中間に変える。
「はあ…はあ…中間地点はまだかしら?」
私達は無言で歩き続けた。聞こえるのは、お互いの荒い息遣いと、敵ポケモンの唸り声だけ。私は息苦しくなった。それはブースターも同じのようだ。
「あ!あったぜ!ガルーラ像だ!」
ブースターが疲れを忘れたように走り出した。
「あ!待ってよ!」
私も後を追う。
「ああ…癒されるわぁ…」
鞄からオレンの実を取りだし食べる。
「後ちょっと休んだら行くわよ」
「なあロコン…なんでそんなに急ぐんだ?」
「早く帰りたいから…かな?」
「イーブイに会いたいからじゃなくてか?」
「……違うわ…」
私は素っ気なく返す。だが、確かに彼に会いたい。あの顔を見てると心が落ち着く。
「ふーん…まあいいや行こうぜ」
ブースターは立ち上がり先へと歩き出した。私も一つため息をつき後に続いた。
―ホカホカ火山 頂上―
「え…?頂上?」
「そう…みたいだな」
休憩地点を出た先は頂上だった。
「あ、石板だぜ」
トコトコ石板に近づき書かれていることを確認する。
「炎の証を持ち機転の利くもののみが宝玉へと導かれる。……どういう意味だ?」
「ダンジョン内のレベルはそんなに高くなかったから皆ここに来て諦めて帰ったのね」
「取り敢えず色々試してみようぜ」
「そうね」
ブースターは穴を掘るで石板の前を掘ろうとしたが地面が固すぎて駄目だった。
続いて石板の破壊を試みたがこれも地面より固く失敗に終わった。
「くっそー!こうなりゃやけくそだ!」
ブースターは火炎放射を石板に放った。すると石板が熔けてなくなり階段が出現した。
「あー、なるほど…」
「おいロコン?何がわかったんだ?」
「炎の証っていうのは炎技の事なんだろうね。それも純粋な炎タイプの使った」
「なんでわかる?」
「石板をよく見ると焦げ後が着いてたのよ。だから副タイプの入った炎を技を撃ったんじゃないかしら?ま、今のはただの推測だけどね」
「なあロコン…お前、学校のテスト何位?」
「なんで急に?」
「え?いや、頭良いなって思って」
「大体…20〜25位かな。アブソルとブラッキーは毎回一桁だし、イーブイだって30位よ」
(ま、負けた…)
ブースターは俯いたまま、固まった。肩を揺すっても効果なし。
「あ、リーフィアだ」
「マジ!?」
急に元気になり振り向いた。が、もちろん今のは嘘。
「なんだよ…嘘か…」
「さっさと行くわよ。私達の体が焼ける前に宝玉をゲットしなくちゃ」
「ああ…」
私はきびきびとブースターはとぼとぼ歩き出した。
―炎獄の間―
「俺の…気のせいか?さっきよりも暑い気がするのは?」
「気のせいじゃないわ…階段を一段降りるごとに暑さが増してるわ…」
もしも、ここに温度計があれば壊れていただろう。炎タイプ以外が到底耐えられる温度ではない。
「あ…着いたぜ」
ブースターが立ち止まる。目の前には神殿にあるような台座があった。そしてその上に最近手に入れた銀の宝玉が入っていたような箱が置いてあった。
「あれか」
「そうみたいね」
早くこの空間空間から出たいがために足早に取りに行った。
その時━━━━
頭上から小石がパラパラと降ってきた。何事かと思い見上げると謎のポケモンが天井に張り付いていた。
「!?」
私は驚いて腰が抜けてしまった。
「危ねえ!」
ブースターが手を引っ張ってくれなかったら私は潰されていただろう。
「あ、ありがとう!」
「油断するなよ!」
「我がなボルケニオン!宝玉を狙う盗人よ!裁きを受けるがいい!」
「だってよ?」
「やるしかないでしょ!」
こうして私の中では二度目の宝玉をかけた戦いが幕を開けた。