21話 そっちはだめ!
―筋肉の部屋―
(語り手:サーナイト)
「痛たたた…顎打っちゃったよー」
エーフィが顎を抑えて言った。
「ここから出たらイーブイを叩き潰す…」
エーフィの顔が怒りに燃えている。
「ここから出るには俺達を倒さなきゃだぜぇ…」
部屋に大量のワンリキーが押し寄せてきた。
「はは!丁度いいわ!頭に血が上ってたのよ…全員ぶっ殺してやるわ」
エーフィってキレると見境がなくなることを私は発見した。
「《剛速スピードスター》!!」
エーフィは異常に速いスピードスターを繰り出した。ワンリキー達はボーリングのピンのように吹っ飛んでいく。私はじっと眺めてると後ろから気配を感じた。すぐさま振り返り敵と対峙する。
「ぐへへ…姉ちゃんは俺達と遊ぼうぜー」
私の前にはカイリキー二体とゴーリキーが三体いた。
「悪いけどあんた達みたいなキモい奴等に用はないのよ。もっと可愛くなってから出直してきなさい」
私は腕を一振りしてサイコキネシスを発動させる。
「さよなら…」
そのまま壁に叩きつけ気絶させる。
「あースッキリした!」
エーフィが鬼のように険しい顔から爽やかな顔に変わっていた。
しかし…イーブイの顔を見たらどうなるのか…
私達は扉を開け、皆を部屋の中に呼ぶ。
「や、やあ、師匠…その怒ってる?」
聞くぐらいならやめろってのに…
私は軽く笑ってデコピンをした。
「怒られると思うならやめなさい…エーフィには謝ったの?」
「えー?姉ちゃんはいいよー。たまには戦ってダイエットしなくちゃー。ここだけの話し、姉ちゃん四十イッ!?」
急にイーブイが私の視界から消えた。見上げると宙に浮いている。
「私の体重なんて言わなくていいの!」
エーフィの顔は真っ赤だ。よほど恥ずかしいのだろう。
「や、やめなよエーフィ!」
念力で首を締めるエーフィにエルが抱きついた。
「きゃあ!」
エーフィはしりもちをついて倒れた。見た感じエルがエーフィを襲っているようだ。
「え、エル!?」
「イーブイを虐めるのはよくないよ!」
「エル…重い」
「あ…ごめん…」
「早くしろー!置いてくぞ〜!」
ゾロアークが手を振りながら呼んでいる。
「ほら!さっさと行くよ!」
(語り手:ブラッキー)
「今度はなんの部屋?」
「HとOの部屋だって」
僕が聞くとイーブイが答えた。
「片方の部屋にはHな子が沢山、片方の部屋にはOな子が沢山…片方は死、片方は生がある。蝋燭に火が灯るとき新たな道が見えるだろう…」
さらにルカリオが説明を読み上げる。
「HとO?」
僕は首を傾げる。
「おーい!早く行こーぜ!」
サンダース兄さん達男子陣がHの扉の前で止まっている。
「ま、待ちなよ兄さん!もう少し落ち着いて考…うわ!」
僕はブースター兄さんに手を引っ張られ部屋の中に引き込まれた。
「兄さん!もっとよく考えてよね!」
しばらくすると、イーブイが倒れた。
「息が…出来…ない!?」
「そ…うか…この部屋は水素の部屋だ…」
「どういうこと?」
何故かエルだけ普通に呼吸している。
「エ…ル…空間のち…から…ひ…ろ…」
「そうか!拡張!」
僕らはエルのおかげで普通に呼吸できるようになった。
「はぁ…ブラッキー…?どういうことだ?水素の部屋って?」
「HとOは原子記号なんだHが水素、Oが酸素なんだ」
「ふーん…」
イーブイが感心したように言った。
「で、水素は炎によって爆発を引き起こすんだ。だから蝋燭に火を灯せば新たな道がーってやつは生の道と死の道のことだったんだね」
「へー、頭いいねー」
ルカリオが羨ましそうに言った。
「僕はこれぐらいしか…」
「にしても誰がこんなイカれた部屋作ったんだか…」
サンダース兄さんが溜め息をつく。
きっと、戻ってOの部屋を選択すれば問題はないだろう。