12話 引きニートとの決闘
「宝玉の事について教えてくれ」
サンダース兄ちゃんが聞いた。
「この島には銀の宝玉が存在すると言われています。しかし、この島の住民達はもちろん、島の外部の方も見たことがないのです。ですが、宝玉を見つける力のある一族がありましてその末裔がこの島に住んでいます」
「へえ…そいつは強いのかい?」
俺の質問はおかしかったようで村長に笑われた。
「いえいえ、強い弱いでわなく、トレジャーハントが得意なんじゃよ。まあ、今回の奴は困ったもんで…部屋に引き込もってゲームばかりしているんじゃ…」
「引きこもりのニートか」
「そうなんじゃよ…多分ゲームで負かせる事が出来れば…しかしそんな奴は聞いたこともない」
なんか村長の態度が俺と兄ちゃんの時とで大違いだ。
「おっと!ゲームなら俺に任せろよ!」
「ブースター!」
振り返ると兄ちゃんがニヤリと笑っていた。
「ゲームときたら俺しかいねえだろ。村長、ゲームジャンルは?」
「格ゲーですぞ。たしか…大乱闘スマッシュブラザーズだったかの?」
「いける気がするわ」
兄ちゃんは首をパキパキ鳴らした。準備オッケーだとでも言うかのように。
「そいつん家に連れてってくれ」
「落ち着けよ兄ちゃん。今はもう夜だし明日の朝にしようぜ」
「ん…そうだな」
兄ちゃんのギラリとした眼光は一瞬にして消えいつものおっとり(?)した目に変わった。
その晩、宴は早朝近くまで行われ今朝の8時に起きているものはいなかった。
ただ一匹を除いて…
―高級宿屋―
(語り手:ブースター)
「うしっ、こんなもんか」
俺は朝5時半に起床し、戦いの準備をしていた。
「動作確認オッケー」
現在の時刻は午前10時。全員を叩き起こして村長の家の前に集まる。
「来たようですな。さて、儂に着いてきてくだされ」
村長についていくと中々豪華だった。ドアをノックすると「どーぞ」と気のない返事が返ってきた。
「パチリス…今日はお前の対戦相手を連れてきたぞ」
「へえ…どいつだい?ま、アタイに勝てるわけが…」
パチリスの言葉はそこで途切れ、ぷるぷる震えている。それは俺も同じだった。
「お、お前は…パチリス!」
「あ、あんたは…ブースター!」
お互いに指を差しあって驚いている。
「知り合い?」
エルが俺に尋ねてくる。
「ああ、知り合いってレベルじゃねえよこいつは…」
「彼女?」
ルカリオは冗談のつもりで言ったのだろうがリーフィアの目がうるうるし始めた。
「ちげーよ。こいつは世界ゲームランキング1位の奴だ。と言っても俺と代わる代わるだけどな」
「今回の相手はあんたかい…いいね!本気でかかってきたな!」
「よし。早速やろうぜ」
「兄ちゃんの顔つきがいつもと違う…」
イーブイが感心したような声をだす。なんか照れる。いい弟を持ったな…と俺は思った。
「あの間抜け面じゃない」
やっぱ前言撤回あいつは俺のことを嘗めている。
「アタイ早くやりたいんだけど」
「おお、悪いな」
そして、俺達のスマブラが始まった。
俺はアイク、パチリスはロゼッタ&チコを使用する。この緊張感は世界大会の決勝を思い出す。
「なあ、パチリス!俺が勝ったら頼み事聞いてもらうからな!」
「んなこと言ってる余裕はあるのかい!?」
「ない!」
「なら集中しろ!」
激しい攻防の末辛くも勝ちをもぎ取った俺だった。
「負けたよ…で?頼み事って?」
「あ、ああ。銀の宝玉を探すのを手伝ってほしい」
「んー?ああ!あれかあ。全然いーよー。アタイ道とか知ってるし」
「は?誰も見つけたこと無いんじゃないのかよ?」
「そのはずじゃが…」
「あれ?じいちゃんに話さなかったっけ?アタイが銀の宝玉の場所見つけたって」
「初耳じゃ!」
「ふーん…まあ、いいや!皆行こーよ!」
俺達はパチリスに連れられ銀の宝玉を探しにいくのだった。