11話 女装した兄
「よーし、足抑えろ」
俺らは村長から渡された服をサンダース兄ちゃんに着せようと悪戦苦闘していた。
前回は明かさなかったがその服とは…
【メイド服】だったのだ!しかもご丁寧に、カチューシャ、手袋、靴下、靴までついている。
兄ちゃんが着たがらない理由はわかるけど、宝玉のたためだから仕方ない。
5分かけて着させると中々似合っていた。
「兄ちゃん似合ってるぞ」
「そうね〜兄さん可愛いよー」
俺達はニヤニヤしながら兄ちゃんを見る。
「うるさーい///!!」
兄ちゃんは恥ずかしそうに顔を隠した。
「でも、なんでメイド服なのかね?」
クチートが首を捻る。
「村長に聞いてくる」
サンダース兄ちゃんがフラフラと村長の家に入っていった。俺達も兄ちゃんに続いて入った。
「おい、村長…」
「何かの?」
「着せる服がメイド服ってどういうことだ!」
兄ちゃんがドスのきいた声で詰め寄る。
「毎週毎週、次の娘にはこれを着せろと服を渡すんじゃが今回は当たりみたいじゃの!」
「てめ!ジジイ!ざけんじゃねえぞ!何が当たりだコノヤロー!」
兄ちゃんが村長に掴みかかるがアバゴーラという種族なのでかなりの体格差が生じ倒す前に俺達に取り押さえられた。
「ギャラドスとの約束の時間は午後10時。何卒、よろしくお願い致します」
村長がペコリと頭を下げた。
「あ、はい。任せといてください!」
ニンフィアがニコッと笑った。
「はあ…俺はいつまでもこの格好してりゃいいんだ?」
兄ちゃんはスカートの裾を少し上げて聞く。
「終わるまでずっとよ」
師匠までもが笑っている。
「なんでだよ?」
「今脱いでまた着せるのが面倒だから」
「さいですか」
「兄さんちょっと喜んでるでしょ?」
グレイシア姉ちゃんが言った。
「は?お前何言って…」
たじたじと反論する兄ちゃんに姉ちゃんの一言が突き刺さる。
「嫌なら、ビリビリに引き裂いてでも脱ぐよね?」
「ぐ、まあ、それは、なんだその、あー…」
「やっぱり気に入ってるんでしょ?」
グレイシア姉ちゃんが止めにはいる。流石に可哀想になったから助け船を出す。
「なあ兄ちゃん。二足歩行にしないと手袋が汚れるしなんか変だぜ?
「ん…そうだな」
すっ、と立ち上がった兄ちゃんは四足歩行の時よりも似合っている。
「お兄ちゃん!」
リーフィアの声がする方を向くと、パシャ!と写真をとられた。
「な、何すんだ!」
「写真をとったの!これをネットに上げれば…」
「『ブイズ家長男女装にハマる!』みたいな題名でさあ」
リーフィアに続きニンフィアまでもが馬鹿にする。
そんなこんなで遂に午後10時…
(語り手:サンダース)
―浜辺―
「うう…やだなあ…女装してるのを知らない奴に見られるなんて」
俺はキョロキョロと周りを見ながら呟く。その時だった。海面が盛り上がりギャラドスが姿を表した。
「貴様が今宵の生け贄か…」
「そうなのよ」
「にしては随分男っぽい声をしてるな?」
「か、風邪引いちゃって…」
「うむ…そうかそうか…よし!では早速食ってやろう!」
ギャラドスが口を大きく開け俺に入れと言った。
「死ねえ!!!」
俺はギャラドスの口に《雷槍》を投げた。バリバリと皮膚の焼け焦げる臭いに気分が悪くなった。
ドサッ、と倒れたギャラドスを縛り上げ海に流した。
「はあ、終わった…」
村に戻ろうとした途端、村人達が皆外に出て大歓声をあげた。
「流石兄ちゃん。しっかりと雌になりきれたね」
イーブイがニヤッと笑う。
「ハイハイ」
「サンダースさん!村のためにどうもありがとうございました!」
村長が走ってやってきた。
「いや、別にいいんだけどさ。宝玉について教えてくれねえか?」
「わかりました…」