7話 厨二病発動!
「さあ、始めようぜ」
俺は睨み付けた。
「ふん、お前みたいなガキに負けるわけがない」
ブニャットもこっちを睨んでくる。
「威勢がいいけど負けた時恥ずかしーぜ」
「イーブイ…大丈夫なの?君だけで」
エルが耳打ちしてくる。
「任せろって。あの婆さんちゃちゃっと倒してくるからよ」
「ちゃちゃっと?これを見てもそんな口が聞けるかのかい?《ワンダーステップ》!」
その巨体からは考えられない速度で宙を舞った。
「何がしたかったんだ?」
「これは、あたしの欠点である素早さを極限まであげる技だ。見切るのはそう簡単じゃないよ!」
ブニャットの姿が消えた。いや、そう錯覚しただけだった。正確にはブニャットが驚くべきスピードで突進してきたのだった。
反応が間に合わず巨大な腹で突き飛ばされる。
「うおっ!?」
ペルシアンのビームを喰らったときよりもかなりの速さで壁に激突した。
「ゴホッ!ゴホッ!うっ!」
咳き込むと同時に少量の血を吐き出した。内臓が殺られたな。
腹を押さえながらフラフラと立ち上がる。
「オラッ!」
近くにあった鉄パイプを手に取り相手目掛けて投げつける。ブニャットは避けるそぶりを見せなかった。
ラッキー!
と、思ったがそんなに甘くないのがこの現実。
ブニャットの腹に入ったパイプは肉にめり込んで俺の方へと帰ってきた。そして頬の横を掠める。頬が切れ、鮮血が流れ出す。
「ちっくしょおおおお!!!!!」
やけくそになって側に落ちていたパイプを全部投げた。
相変わらずブニャットの腹にめり込んでは跳ね返ってくるを繰り返していた。
「くそ…まじか…」
「おやあ?もう終わりかい?もっとあたしを楽しませてくれよ」
ブニャットが俺を押し倒し足を乗せてくる。
ここで俺の怒りゲージがマックスになった。
「オラアッ!」
ブニャットの顎にはっけいを当て無理矢理どかす。
「くあっ!」
「そらっ!」
続けてアイアンテールで横っ面を叩く。
「なんだい…まだ、力を隠してたんじゃないか…」
「うるせっ!あんたが強いから本気出してんだ!」
「そいつは嬉しいね!」
ブニャットがのしかかりで俺を殺そうとする。
「遅いわ!」
飛び上がりブニャットの背中を鉄パイプでぶん殴る。
「なぜ…見切られた?」
ブニャットが困惑する。
「悪いけど俺、時間の使い手なんでね。多少なら時間を操れるのさ」
「ズルいじゃない…そんなの。最初から出してなさいよ!」
「へ? うわっ!?」
足をを払われて仰向けに落ちる。からのグーパンで後ろに尻もちをつく。
「あ〜あ…俺、怒っちゃった…出来るかわかんないけどやーろうっと」
そう言って俺はサンダース兄ちゃんの《雷槍》とグレイシア姉ちゃんの《氷雪剣》を造り出す。
「あ!あれ俺のだぞ!」
気絶から復活した兄ちゃんが言う。
「剣は私のよ!」
姉ちゃんが喚く。
「なんで造れるんだよ」
ブースター兄ちゃんが珍しく冷静に聞く。
「俺にはねミュウの細胞が混じっててさ、自分で使いたい技を頑張れば出せるんだよ」
「あー、あれか」
リーフィアが思い出したように頷く。
「どういうことだ?」
「えっとね、お父さんは昔大怪我を負って癒しの波動でも治らないからミュウの細胞を分けてもらったの」
アホなブースター兄ちゃんにもわかるように優しく解説する。
「んな説明はどうでもいいからさっさとやろうぜ!」
ブニャットに向き直り槍を投げる。
当たるとヤバいと思ったのか横に回避した。
「それっ!」
続いて回避地点に剣を投げる。だがこれも紙一重でかわされた。
「チェッ……!」
武器を再び造り出した瞬間、謎の文章が頭の中に流れ込んできた。
これをやれば勝てる!
そう確信した。
「いくぜブニャット!」
剣と槍を構え脳内の文章を唱える。
「魔界の冷気よ地獄の雷を凍らせろ…そして、愚者を裁け!《フリーズサンダー》!!」
厨二病としか思えない言葉で顔が真っ赤になる。
「なんだい?その呪文は」
『わぁお…』
「? っしゃあ!」
皆の声を聞き、後ろを見ると氷が稲妻型になっており、中には紫色の雷が閉じ込められている。
「終わりにしようか!」
腕を前に出すと氷がブニャットに飛んでいく。どこかに触れる度に氷が砕け雷が炸裂した。雷がブニャットに当たり焦げ臭い香りが漂う。
「勝っ…た?」
一気に疲労感が襲いその場にドサッと倒れた。
「もー、無理だわ…」
「おめでとう…あたしの完敗よ…モーターは持ってくといいわ…」
ブニャットが立ち上がりヨロヨロと立ち去った。
「嘘だろ?あれ喰らってまだ、生きてるなんてな」
はは、と力なく笑った。
「あった!私の大事なモーター!」
ミミロップがモーターを抱えて跳び跳ねている。
「な、俺もう疲れて立てないわ…誰か連れて帰ってくれ」
「仕方ないなあー」
アブソルが背中に乗せてくれた。
「なあ、ミミロップ?後どん位で船出来る?」
「後、1、2日で出来るはずよ」
「頼んだよ」