3話 敗北
「楽しみだなぁ…」
怪盗と戦えるだなんて一生にあるかないかだからね。
「何が楽しみなんだよ」
サンダース兄ちゃんがツッコミを入れる。
「怪盗と戦うのがね」
「毎度毎度、お前はホントに戦闘狂だよな。そんなに戦いが楽しいか?」
「もちろん」
「はは、バーカ」
「何がば……!?」
突然電気が消え真っ暗になる。月の光でかろうじてどこに誰がいるか見えるが顔まではわからない。
「あったぜ!」
心の雫が展示してある辺りから声が聞こえる。
「バイバイ!オマヌケ警察さん達!」
着いたときには窓から逃げようとしていた。
「まてコラ!」
俺も窓から出て追いかける。
え?窓までの高さ?
多分…6メートル位かな?そんなことよりも怪盗を追いかけなきゃ!
「おいコラ!待ちやがれー!!」
屋根に上りアクションスター顔負けの空中移動で屋根から屋根へと移動する。
「待てっつってんだこの野郎ー!」
見よう見まねで屋根へと飛びうつる。
━━━うわ、楽しい!
やってるうちに段々楽しくなってきた。スピードをもっと出したくなって、リミッターを解除する。
「ヤッホー!!おらおら!追い付いちまうぞ!」
「げ!何よあのガキ」
「知るか!」
声と喋り方から考えると男女二人組のペアのようだ。
「あーらよっと!マスクいただきい!」
着けていたマスクを奪い顔が確認できるようになる。
「顔を見られちまった!」
「ふーん…坊やできるじゃない。名前は?」
怪盗は止まってこちらを向く。
「イーブイだ。普通はそっちから名乗るもんじゃないのかい?怪盗さんよぉ」
「そうね…私はレパルダス。んで、こっちが相方の」
「ペルシアンだ」
「ふぅん…じゃ、早速!捕まえさせてもらうぜ」
疾風の如く…言い過ぎた、実際には本気より3割程度の力で近づいた。
あまりの速さに二匹は驚き、一瞬硬直する。
「いただき!」
気絶させようと首裏を狙うがどこからか飛んできたにビームより失敗する。
「んだよ、今の…」
「《フォーリットビーム》!」
再び赤いビームが俺めがけて発射される。
「当たるかっ!」
体を捻って回避しペルシアンに一撃を食らわそうとする。
「イーブイ!こっちを見なさい!」
とレパルダスに呼ばれ振り向いてしまった。
「《コントロール・アイ》!」
レパルダスと視線があった瞬間、縛られの種を食べたかのように体が動かなくなった。
「!?」
攻撃モーションのまま止まったため着地できずに屋根に落ちた。そして、そのまま転がって地面へ…
「ああああああ!!!」
「危ねえ!」
誰かが俺の腕を掴んだ。
「ありがと」
「どーいたしまして」
どうやらペルシアンに助けられたようだ。
「なんか…屈辱的だな。敵に助けられるなんて」
「なんだ?じゃ。殺してやろうか?」
「やめろ!」
「嘘だよ」
「なんで、俺を助けた?」
「俺達は怪盗だけど、宝が盗めりゃそれでいい。うちの団のルールで『殺しなんかするな!したら死刑!』ってのがある」
(私、今めっちゃ空気扱いなんですが…byレパルダス)
「へー。かわってんな。普通は殺してでも奪うだろ?」
「昔はね。今は違うんだよあ、…やべっ!サツが来た!逃げるぞレパルダス!」
「はいよ!」
「じゃあな、イーブイ。また会うことがあったらそん時はお互い小細工無しでガチでやろうぜ」
「楽しみにしとくぜ」
その後俺はラティアスによって発見され、美術館へと戻った。その時のラティオスの顔はマジでヤバかった。
「いやはや、我々のせいでこんな目に…申し訳ない」
ウィンディが帽子を取り、頭を下げた。
「いや、俺の方が悪かったよ。犯人と接触して、情報も何もなかったのは」
「いえ。我々は英雄である貴方が無事ならそれでいいのです」
「英雄?誰だそいつ」
「イーブイ。君のことだよ」
ツタージャがボソッと伝えてくれる。
「へー。ダークマターに止め刺したのルカリオなのに」
「君はその後危険を省みずに隕石壊したじゃないか」
「んー。あれは、なんとなくのノリだったんだよ」
「ノリであんなことが…」
「流石英雄だ」
等々、警官の方々が口々に呟く。
「そうだ、これ。報酬を」
ウィンディからサマーランドのチケットを渡されたが返却した。
「いらないよ。貰うのは怪盗を捕まえた後だ」
「そう…ですか。では、これは大切に保管しておきます」
ウィンディはピシッと敬礼した。俺もそれにならって敬礼をした。