77話 兄vs妹&その他
「な、なんでルギアが来たんだ……?」
俺は困惑しながらも助けに来てくれた、と頭の片隅で考え、ほっとする。
「戦えるでしょ!?」
ルギアが俺達に聞いた。しかし、誰からも返事が返ってこないのでルギアは溜め息をついた。
「癒しの波導」
緑色の光が俺らを包み込んだ。光が消えると元気になり、傷も痛みも消えていた。
「これで、戦えるぜ!」
再び活力を取り戻した俺はルギアの背中に飛び乗り、ダークルギアに波導弾を撃つ。頭部を狙われると思ったのか奴は頭を守っていたのだが読みは外れてカーブを描きながら脇腹に当たった。
「ぐふ……仲間の力、か。流石にこれでは分が悪いな。ついてこい!」
言うと同時にダークルギアは上空へ飛び去った。
「行くわよ!イーブイ!」ルギアも飛び立とうとするが制止をかける。
「ま、待てよ!他の皆は連れてけないのか!?」
「フィールドは私の背中か、兄さんの背中だけよ!」
「それもそうだな……じゃあ、エルは連れてっていいだろ?」
「……いいでしょう。早く乗って!とっとと追いかけないと上から攻撃してくるかもしれないよ!」
「わ、わかった!」
エルは急いで跳び、伸ばし俺の腕にしがみついた。
「絶対に甲板に落とすから待ってろよ」
俺がびしっ、とブニャット達を指差した。
「ああ、待ってるぜ」
ジャックが腕を組んでにやっと笑った。
「さあ、行こうぜ」
ルギアの頭をぽんぽんと叩き、促した。
「落ちないようにちゃんと掴まっててよ!」
俺とエルは強風に煽られながら空へ向かった。
―天空―
「来たな」
ダークルギアは着いたと同時にハイドロポンプを放ってきた。ルギアは身を捩って回避した。
「うわッ!?」
振り落とされないように俺はルギアに抱きついた。
「ふん……これくらいは避けられるようになったか。妹の成長は嬉しいな……」
「本当にそう思ってるのかしら?」
ルギアは冷ややかに聞き返した。
「本当だともッ!」
ダークルギアは音速を越えるエアスラッシュを繰り出した。
「きゃあ!!」
彼女はぎりぎりのところで躱した。
「うおッ!?……ぎゃあああああああ!!!」
しかし俺はその衝撃で落とされてしまった。
「イーブイ!」
エルが絶叫した。
「エル!空間回廊だ!奴の頭上に飛ばせ!」
「《空間回廊》!」
俺は瞬時にダークルギアの頭の天辺に出現した。
「喰らえ!」
ギガトンパンチを脳天に叩き込んだ。ダークルギアは一瞬ぐらつき、だんだんと浮力を失い、落下していった。
「って、俺はあああああああ!?」
「あ、やべ」
エルが舌を出して笑った。
「まったく……」
ルギアは溜め息をつくと同時に俺の足を掴み、自分の背中に乗せた。
「さっさと戻って後始末だ」
びゅん、と風を切って船に戻った。思ったより早く、ダークルギアは縛り上げられていた。
「ふ、俺達にかかればこんなもんだぜ」
ジャノビーが気取った笑いをした。
「まだ、まだ終わらん!!」
ダークルギアが縄を引き千切って再び飛び立った。
「な!もっとちゃんと縛っとけよ!」
「うるせえ!」
俺が叫ぶとソウタが叫び返した。
「チクショー!」
俺はルギアの背中を伝い、ダークルギアの背後に跳んだ。
「あ!待て!お前だけに良い格好はさせないぜ!」
ジャックもルギアの背中を使って跳んだ。それに習いジャノビー、ブニャット、ソウタもついてきた。
「これで最後だッ!」
俺達は自信が持つ最高の力を背骨めがけて放った。が、ダークルギアの反応は早く、奴は瞬時に振り返り、迎撃体制をとった。
「4匹でどうにかなると思うなよ!」
この言葉がエルとルカリオの怒りに火を着けたのだろう。
「僕達を忘れるなあああああああ!」
彼らの技がダークルギアの腹に直撃した。それに怯んだダークルギアは迎撃に失敗し、俺らの攻撃を顔面に喰らった。
「が……は!」
ダークルギアは大きく目を見開いて海面に派手な飛沫を上げて沈んでいった。すると、嵐だった天気も清々しい程の晴れとなった。
「か……勝った!」
俺はガッツポーズをとって喜んだ。しかし、ソウタだけは浮かない顔をしている。
「どうした?こんな良い天気なのに」
俺はソウタに聞いた。
「俺は……もう消えるんだ」
「え?」
衝撃的な一言に俺は一瞬頭がフリーズした。
「ダークルギアを倒す、という役目を終えた俺は人間界に帰るんだ」
「そ、そんなの!ずるいよ……後始末しないで帰るなんて。お疲れパーティーやんないで帰るなんて!」
「悪いな……でも、どうしょうもない事なんだ……」
ソウタの両頬を大粒の涙が流れ落ちた。